二人、寄り添いて、静かに目を閉じておりますと、庭より、虫の音のみ聞こえ、随分と夜の更けた気配にございます。


「雅紀…起きておるか…」

「…はい」


静かなる内にも、想いの籠りたるお声に、雅紀も神妙にお答え致します。



「雅紀、わしは妻を娶る」

「…はい」

「わしもよき歳故、子を成し、後のことも考えねばならぬ。縁談も、そろそろ決める潮時だ」

「…はい」

「だが、それだけだ。妻は妻で大切にしようと思うておるが、それより他は持たぬ。だから、一生、わしの傍に仕えてはくれぬか」

「…はい…って、ええ?!俺、一生稚児のまま?!」

「莫迦。そのようなこと、あろう訳がなかろう。和也も元服致した。雅紀も、良き日を見繕いて、早々に元服致し、更衣方か、勝手方で役に就き、働いてもらう」

「はい…喜んで。許より、そのつもりでしたから」

「その上でだ…」

「…はい?」

「夜、わしの許に、草子などを読みに参るのじゃ」

「草子?いいですけど、俺、下手ですよ?」

「下手で良い。それは口実故。こうして、朝まで共に…のう?」

「…えっと…はい」


翔の君は、満足気に笑み、雅紀をお胸に抱(いだ)きて、眠りにお就きになられましてございます。