「これはこれは。どこぞの名の有るお方と拝しますが、この様な田舎まで、我らを楽しませる為にわざわざご足労頂くとは、まっこと、ありがたきこと!身ぐるみ脱いで置いてきな!」

「無礼な!!」

「やかましい!むさくるしい武士(もののふ)なんぞに用はねえ!命が惜しくば、寄越すもん寄越して、とっとと失せろ!」


数人の山賊は、都人らの周囲を取り囲み、ゆっくり間合いを詰めて参ります。


武士らは、中に、二人の稚児と主(あるじ)を守りて刀を構え、山賊と向き合いつつ、何とかこの場から逃げる手立てを探っておりました。

山賊は、鉈や鎌を手に手に、今にも躍り掛かろうと致しております。



潤士郎は、息を詰めてそれを見守っておりました。

張り詰めた気が辺りを満たし、痺れる様でございました。


潤士郎が、思わず身を乗り出した折でございます。足元の小枝を踏み折ってしまったのでございます。
それは、静まり返り、硬直していた辺りに乾いた音を響かせ、気を乱しました。


「誰ぞ!!」