「で?」

  投げ掛けられた疑問符にみんなが潤を見る。

「いつ発つの?」
  上目遣いで訊いてくる。

「来週」
  俺は夢の為に旅立つ。

「帰りは?」
  和が目を合わせないようにして言う。
  俺は首を横に振った。

「さと兄…帰って来るよね?」
  うるうるの雅紀の目を見つめながら、俺は力強く頷いた。


「翔くん」
「ん?」
「あと、頼むな」

  翔くんは俺の目をしっかりと見つめて、その目に力を込めた。





「智は昔っからそうだった」
  和が低く呟いた。

「いつも、ずっと一人で我慢して、抱えて、いつも突然、それこそ糸が切れたカイトみたいに…!」
  最後は吐き捨てるみたいに。

「違うよ。和!さと兄は糸の切れたカイトなんかじゃないよっ!だって、いつだって帰って来てくれただろ?」

  俯く和に雅紀が続ける。

「俺たちが信じて、その糸の先をぎゅっと握ってれば、さと兄は帰って来てくれるんだよ!」

  そうでしょ?って、縋る様な眼差しを俺に向けた。俺は、

「うん」
  とだけ、言った。

  潤が和の肩にポンと手を置く。

  わかってる。和の淋しさも。けど、俺は行く。もう決めたんだ。


  でも、どんなに遠くに行っても、何をしても、俺の帰って来る場所は、この「嵐」って、家だけだから。

  俺の糸が繋がった場所。

  今、帰る為に玄関を出る。

「行ってきます」

  声に出した。

  この言葉の先の “お帰り” を聞く為に。



終り



    ※※※※※



ご来訪、ありがとうございます。
たえぴーーと申します。

フォローさせていただいてるna-ju。さんの素敵な企画…“お祭り”に私も参加したくて、押し掛けちゃいました。爆笑

「カイト」素敵な歌ですね。
歌詞を読み込んで、「マイガール」のMV風なお話にしようって決めて…

“帰ってきた”って、最初の一文が出てきたら、もう、一気でした。

久し振りの円盤、手に取ることのできる幸せ。

デジタルについていけてない私には、本当に嬉しいことです。

では、お祭り楽しんで!!