みんなで覗き込んだ衣装ケースには、5人分の大事な物が詰まっていた。
きっと、母さんが取っておいてくれた物。
図工の時間に描いた絵や、花丸を貰った作文。その時の俺たちの宝物。
それに…。
「これ…」
「5人で描いたね。絵」
「5枚繋がってる?」
「うん。ほら、繋がって出てくる」
「カイト」
言って、潤がキラキラした瞳で見つめた。
「ちゃんと揚がったんだっけ?それ」
「揚げたよ」
和の質問に答える。
「母さんに見せるんだって、5人で空高く…」
「俺、お母ちゃんによく言われたな…泣かないでって…」
「まーくん、泣き虫だから」
「うるさいよっ」
「俺は親父に言われたんだ。逃げてもいいんだぞって」
「翔くんは意地っ張りだからな」
「そうかなぁ」
「けどこれ、こんなに小さかったっけ?俺の記憶じゃ、もっとデカかったような気がするんだけど」
潤がしげしげとカイトを眺める。
「あん時のお前は小さくて可愛いかったからな」
「よせよ」
俺が微笑むと、潤は照れた様にそっぽを向いた。
「そだ。俺、母さんに挨拶してくる」
「ん」
改めて仏壇の前に正座して、優しく笑う母さんの遺影に手を合わせた。
リビングに入ると、もうみんな缶ビールを手にしてた。
「兄さんも飲む?」
「いや。俺は麦茶でいいよ」
気の利く和がグラスに麦茶を注いで渡してくれる。
「そう言えば父さんは?」
「急な仕事だって」
「そうか…」
俺は少し肩を落とした。
「で…でもさっ、今日はさと兄のお陰でこうしてみんな集まれたんだしさっ、ねっ!」
雅紀の優しさに少し気持ちが上がる。
「召集した本人が一番遅く来たけどな」
潤の減らず口に苦笑した。
それから、昔話に花を咲かせ、楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、一頻り喋って、訪れた沈黙。