~糸の繋がった先~


  帰ってきた。

  都会から少し離れた町にある一軒家。
  俺の、俺たち5人の実家。今は別々だけど。でも、玄関の引き戸横に掛けられた表札には、父さんと母さん、そして今でも兄弟5人の名前。

  その引き戸をガラガラと音を立てて開けると、途端に賑やかな声が聞こえた。

「うわっ、懐かしいー!」
「けど…埃まみれ…ゴホッゴホッ!」
「お前、外で払ってこいよ!」
「兄ちゃんに向かってお前って言うなっ!」

  ドタドタと足音がして、俺の前を雅紀が横切った。手に持った透明の衣装ケースからは、煙の様に埃が舞い落ちていた。

その後を和が呼び掛けながら追いかける。
「まーくん、そこ段差!」

「おいおい、大丈夫?」
  なんて笑いながら翔くんが来て、
「あっ、兄さん、お帰り」
  と、言う後ろから、潤が、
「遅い!」
  って、相変わらずの強い目力を覗かせた。

「悪い。バスで寝てたら乗り過ごしちまって…」

  なんて、俺の言い訳を掻き消す様に、裏庭から雅紀の大きな声がした。

「翔ちゃーん!潤ー!お宝!お宝ー!」


  裏庭へ向かうと、衣装ケースの蓋を開けて、楽しそうに物色してた雅紀が、

「ほらっ!!」

  って、手に持っている物を見せたきた。

「あっ!さと兄、お帰り!ねっ、これ、懐かしくない?!」

  それは、スナック菓子のおまけで付いていた、プロ野球選手のカードだった。

「うおー!すげー懐かしい!」
  俺より潤が食い付いた。


「和、何みてんだ?」

  雅紀とは対照的に、体を丸めて一人くすくす笑ってる和に声を掛けた。

「見てこれ」

  それは、チラシの裏に書かれたもので。

「かたたたたたきけん…?」
「まーくんでしょ。こんなの作るの」
「え~?俺~?……俺か」
「何でこんな “た” 多いの」
「それは…沢山叩いてあげようっていう俺の気持ちの現れなの!」

  そのやりとりに翔くんが声を立てて笑う。