「ね、ね、ニノ。どうゆうこと?」
「どうもこうも相葉さん。そうゆうことですよ。リーダーは、全部に触ったんだよ」
「そんなのズルい!」
壁際に立つニセ者が叫ぶ。
「だって、どれに触ったかって言っただけで、どれか1冊だなんて、一言も言ってませんからね」
人を食った様な二宮の物言いに、ニセ者が歯ぎしりした。
「さぁ、もう、諦めろ!」
「お前はどこから、何の目的でこの船に乗り込んできたんだ?!」
松本と櫻井の2人がニセ者と対峙する。あとの3人は2人の後ろでまとまって立っている。
ニセ者は、壁に凭れ、投げやりな表情を浮かべて目を逸らした。
「ただの偶然だよ」
「偶然?」
「そう。僕は、隕石にくっついてこの宇宙空間を漂ってた。そしたら、たまたまその人にぶつかって、その人と一緒に船の中に入ってきちゃっただけ」
そう言う横顔は、とても孤独だった。
「あの…子ども産んでくれって…あれ、本気?」
松本が、少し頬を染めて言った。
ニセ者が頷く。
「え?!松潤そんなこと言われたの?」
「う…うん。俺、翔さんに言われた」
「マジ?!嘘でしょ?!」
「俺はJに言われましたよ」
「え?!ホントに?!」
「俺、リーダーに言われた」
「マジか…」
「で?あなたは?大野さん」
「俺…言われてない。何か嫌だったから、近づいてないし」
二宮、大野の2人が、ほっこり、微笑んだ。
「何でこの船には “オス” だけしか乗ってないんだよ?!これじゃ、生殖できないじゃないか!」
ニセ者が、悔しそうに唇を噛んだ。
「いや…こんな狭い船の中で子どもなんか産んだら、俺らみんな生きてけないでしょ」
戸惑いながら櫻井が答える。
「やっと…雌雄で生殖する生命体に出逢えたのに…もう、諦めかけてたのに、やっと…僕がどれ程この時を待ち望んでいたことか!」
5人に向けられたニセ者の目が燃えていた。
「何で、そんなに子ども欲しいんだ?」
「は?!この宇宙に生命を得た以上、その存在を後世に残すことこそが、為すべきことだろう?」
ニセ者の言葉に、5人は顔を見合せる。
それぞれに、戸惑いの表情が浮かんでいた。
「まぁ…それも1つの考え方、ではあるけど…」
「いずれは…って気持ちはあるよ」
「子どもは嫌いじゃないけど…」
「今は…ってか、ここでは無理、無理」
「うん」
「もういいよ。もう、こんなトコに用はない。僕をまた、宇宙空間へ還してよ」
「いいけど…どうやって?」
「何でもいいから、僕をひっつけてそのまま放出してくれたらいい」
「…分かった。善処しよう」
櫻井が頷いた。
「ちょっと待って」
「何?松潤」
「君が採った俺らのDNAって、どうなるの?」
いつまでも櫻井の形を崩さないニセ者に、松本は不安を感じていた。それもそうだろう。宇宙のどこかで、自分の知らない内に、自分の遺伝情報を持つ子どもが産まれていたら、エライ事だ。
「あんた達、宇宙空間に生身で出て大丈夫なの?」
この問に、5人全員が首を横に振る。
「じゃぁ、宇宙に放出された時点でダメになるんじゃない?きっと」
全員、安堵の溜め息を漏らした。
宇宙船J―Storm 号は、急遽、近くにあった、直径2㎞程の小惑星に着陸した。
そのハッチから出てきたのは、宇宙服に身を包み、50cm四方のケースをもった大野だった。
地表に降り立った大野は、ケースを開け、逆さまにした。
すると、中から、半透明の不定形なものが出て、小惑星の地面に落ちた。そして、フニャフニャと形を変えながら移動し、J―Storm 号から離れて行った。
大野は、それに向かって手を振った。
漆黒の大海原へ飛び出したJ―Storm 号に、再び、平穏な時間が戻った。
「なんか、大変だったけど…面白かったよね?!」
相葉が言った。
「ま…まぁね」
二宮が小さな溜め息を漏らした。
「どうする?また、ババ抜きでもする?」
冷めた目をして松本が言う。
「えっ?また?」
大野が項垂れた。
「じゃぁさ…」
「何?翔ちゃん」
櫻井は悪戯っぽい目をして4人を見渡した。そして、なぜかドヤ顔で言い放つ。
「子どもでも作る?」
「ええっ?!」
「相葉くん…ひでーよ…イテテ…」
頬を摩る櫻井。
「いや、ごめん、ごめん。イタかったぁ?本物じゃないのかと思って…」
心配そうに覗きこむ相葉。
「そうですよ。いくらなんでも、翔ちゃんはドロドロにはなれないんだから、間違える訳ないんだから」
「あまりのタイクツさに、翔くんが壊れた」
大野は緩く笑ってる。
「そうだよねぇ…地球まで…まだまだ遠いもんね」
松本が窓の外を見つめた。
船の外は無限に広がる宇宙空間。
彼らの旅は、まだ終わらない。
おわり