窓の外に広がる東京の夜景。不夜城の一角。豪奢なホテルの…もういいよ!バスルームからは…また誰かシャワー浴びてるんだね?!わかったよ!

  俺は窓の外を睨みつけた。相変わらず、腹立たしい程綺麗な夜景が広がってる。そして、窓に映り込む部屋の中にバスローブを纏った男の人。でも今度は…何か小さい。

  俺が背を向けたままでいると、彼はタオルを頭に乗せたまま、バーカウンターの方へ行きトランプを取り出した。

「…ニノ」

  見事な手さばきでトランプを繰り、カウンターの上に扇型に広げた。

「ね、相葉さん、ちょっとこっち来て。新作。覚えたの」

  振り返ると、ニノはいつも通り笑ってた。別に変な雰囲気は出してない。

「ちょっと待って」

  俺はテーブルのグラスの中身を飲み干してからそちらへむかった。

「何だ…水じゃん」

  意外に思いながらニノの所へ行った。

「ごめん、ごめん、あれが何だか気になっちゃってさ」

「ただの水でしょ?」

「うん。水だった」

  それを聞いたニノが上目遣いでニヤッとした様に見えたんだけど、気のせいだよね。

「じゃ、相葉さん、ここから一枚選んで」

「うん。じゃぁねぇ…」

  俺はニノを窺いながら1枚引いた。ニノは他のカードを一気にまとめて手にとった。

「じゃ、それを顔に…えっと、カードで目を塞ぐ様にあてて…」

  カウンター越しに、ニノがカードを俺の 額に当てて軽く押さえた。

「そうだな…5秒数えて」

「わかった。1…2…3…4…5!」

  数え終わると同時にカードから手が離れたかと思ったら、ニノが俺の胸の中に居て、抱きしめられた。

「え?…えぇ?!何で?!」

  俺はホールドアップ状態。

「マジックです」

  ニノがキラーンと微笑む。

「マジ?!」

「しかも相葉さん。あなたの服装…見て下さい」

「え…うわっ!!」

  いつの間にか俺もバスローブ着てる!

  窓ガラスに、バスローブ姿の男が2人、抱き合ってる所が映ってる。

「ちょ…ちょっと、これはいくらなんでも…」

「マジックです」

「いや、そじゃなくて…なんでこんな…ニノまで…」

「え?何でって…あなたそりゃ、決まってるじゃないですか」

「…ん?何?」

「相葉さんが好きだからでしょ?」

  ニノはズルいくらい可愛い目をして見上げながら、しれっと言った。

「相葉さん」

「は…はい」

「あなたこれが夢だって自覚してますよね」

  夢に夢だって言われたのは初めてだけど。

「だから…何してもいいんですよ。夢なんだから」

  ニノの手が俺のほっぺたを挟んだ。それから、右手は首の後ろ側へ回って、左手の親指が唇を撫でてから、スルッと顎と喉を通ってバスローブの中に滑り込んできた。

  胸元が少し肌蹴た。

  俺は目を剥いたまま動けなかった。

「さあ…そのまま目を閉じて」

  俺は言われるままに目を閉じて…

「!!!」

  ばっ!と目を開けた。自分の部屋のベッドの下。

  いつの間に落ちちゃったのかな。もういい加減にしてほしい。これじゃ体がもたないよ。いくらなんでも。

  時計を見る。あと一時間は寝れる。意地でも寝てやる。明日…もう今日か。今日の仕事の為にも。