「僕はお前がうらやましかったんだよね」

 

その意外な言葉に俺は拍子が抜けた。これから目の前に座っている男、すなわち二つ下の弟、が話す内容が全く分からなかったのだ。ここは息をひそめてその言葉の続きを待つとしよう。

 

そう思って目の前の人物をじっと見つめていると、目力が強すぎたのか照れくさそうに口をもごもごしている。意外とかわいいとこもあるんだな、なんてひっそりと思っておく。

多分しゃべりづらそうにしているのはそれだけじゃない。元来この男は話すことを筆頭に自分の内側をさらけ出すような行為がとっても苦手なのだ。ここで俺が誘導すれば話してくれるが、それではこいつが本当に伝えたいことを伝えられないまま終わってしまうかもしれないので、俺は黙って見つめ・・・いや、目をそらした。

 

「高校んときさ、僕たちがどう見分けられてたか知ってる?」

 

ますます俺の疑問はさまよっていくばかりだ。

 

「いや・・・よくわからんがどうせ十四松は野球部のやつとか、そんなもんだろう?」

 

言い忘れていた。いきなりで信じがたいと思うが俺たちは6つ子なのである。コピペでもしたのかというほどそっくりの顔ー一言でいえば一卵性六つ子だ。しかもそろいもそろっておんなじ小学校、中学校、高校へと進学していったので、クラスメイトはさぞかし見分けずらかっただろう。

 

「おそ松兄さんは『フッツーの顔の下ネタ大魔神』」

 

あいつそんな呼ばれ方をしていたのか。初めて聞いた。それにしてもよく聞いているものだなあ。さすがマイブラザーだ。

 

「お前は『眉毛の濃いクソイタい演劇部』」

「俺そんな風に呼ばれていたのか。知らなかった。」

 

そういうと心底信じられないといった体で目の前の弟は俺を半開きの目をみひらいた。

 

「は?こんなん日常的に言われてたじゃん。松野の見分け方って。これ有名なはずなんだけど。・・・・・そっかお前が知るはずないよな、多分俺とトド松くらいしか知らないからほかのやつには言うなよ。」

 

目の前で疑問が解決してしまった弟を見て俺はますます?を思い浮かべた。それほど不思議そうな顔をしていたのだろう、弟は口を開いた。

 

「これがほぼ悪口なのはわかるよね?トド松は良くも悪くも情報屋だったし、俺は教室の隅で一日中寝てるようなゴミだったから分かったの。オッケー?!」

 

なるほど納得だ。

 

「んで、チョロ松は?」

 

「あいつは目つき悪い童貞ドルヲタ」

 

 

 

 

 

力尽きました