[相川side]
「やめたって…、なんで…」
俺は何の事情も知らない大田に苛立ちを覚え、足を軽くパタつかせた。
こんな何も考えてないような奴に金を騙し取られたかと思うと、余計に腹がたつ。
「逃げたんだよ」
「…へ??」
全員に行き渡るには難しいというほどの声量で呟けば、大田はキョトンとした顔を見せる。
どうやら隣にいた松田以外には聞こえなかったらしい。
「ううん、なんでもない」
笑ってごまかし、サンドイッチを口に入れた。
そうだ。あいつは…、二宮は俺から逃げた。株で俺に借金を背負わせようとしたまま…。
調査を終えて、久々にカフェに足を運んだ俺たちだったけれど、既に二宮の姿はなかった。
マスターに聞いてみたところ、昨日で辞めたらしいじゃないか。
この時、どれだけ巨大な憎悪の火玉が俺に宿ったか分からない。
ストームのリーダーとしてのプライドが無惨に踏みにじられ、復讐心を煽るには十分の理由だった。
「うん、んま~い♪」
やがて運ばれてきたカレーを、幸せそうな顔で頬張る大田。
「あっ、そうだ。大田さん」
「んぅ?」
「ライブ…、見に行きますね」
「あっ、ほんとに!?」
「はい、楽しみにしてますよ」
大田が“最後”のステージを楽しもうが、もうこいつにどのみち未来は待っていない。
計画は順調に進んでいるんだ。
Tpocの場所は今日にでも松田に調べてもらう予定。
いくらファンの間だけで内密にされてても、情報が漏れればこっちのものだ。
松田のことだから、Tpocなんてきっとすぐ分かる。
…大田、笑ってられるのは今のうちだけだからな…。
それよりも俺が気にしてることは…、
「ねぇ、翔ちゃんはもちろんTpoc知ってるでしょ??
行かないの?」
大田の隣に座っている、新聞を読む桜へとチラッと目を移す。
「…正直、まだ考え中。
仕事もあるし。…あ、ごめんなさい、本人前にして」
「いや、気にすんなよ」
問題はこいつ。桜翔太のほうだ。
昨日、松田が調査を終えたプリントに目を通して発覚した事実。
それは、大田が所属していた芸能事務所と桜の会社が“契約”していたということだった。
あの芸能事務所は所謂、よくある1つの詐欺グループ。
もし表向きではなく、裏向きで契約を結んでいたと考えればどうだろう?
今度は桜の会社を疑うのも自然の道理なのだ。
何らかの繋がりで、理由で、契約を結ぶ2つの会社。
一見、何の関係なく見えるけどよくよく考えれば怪しいと感じてくる。
現にお互いの会社が契約したところで、何の利益もメリットももたらさないと分かったからだ。
じゃあ……
裏向きで契約をしていたとして、2つの会社は何の繋がりなんだ…??
To be continued…
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