楽屋にて | 櫻葉で相櫻な虹のブログ

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合わせようとしても合わない視線はあの人が不自然なまでにそうしているから。




だけど、それは俺が見ている事をちゃんと分かっている証拠。こっちを見れば間違いなく視線が合うことをあの人が理解している。




他の誰かがいる場所では、どうしたって俺を避ける。視線もそうだけど態度もそう。変に噂される冷戦ってやつは他の人から見ればそうかもしれないと自分の事なのに思ってしまう。本人達にそんなつもりは無くても。





「避けることなくない?」


 


そう言ってみても自覚の少ない返事はいつまでも改善はされない。多少の罪悪感はあるらしく俺がそう言った後の態度は一応変わるけれど。




「避けてねぇよ、別に」




誰もいない楽屋に二人。さっきまでほとんど合わなかった視線は、扉が閉じる瞬間にはもう合っていた。










「みんなの前だと恥ずかしいとか?」



「……別に」



「ふーん」





翔さんが座るソファーのすぐ横に体を密着させて座るのはわざと。二人だけの時は避けられない、多分。そして俺を甘やかせてくれる、はず。肉体的にも精神的にも。





「……アレだよ、アレ。なんつーか、な?分かるだろ?」





急に甘くなる声は態度もそう。避けられないことをいい事に、擦り寄る俺はそんな翔さんの腰を深く抱く。




「アレって何?ちゃんと言ってくんないとわかんねぇ」





要するに照れくさいって事なんだと分かっているけどね。他のメンバーには躊躇う事なく触れる翔さんが俺にだけしてこない理由は間違いなくこれなんだ。





「今は?照れくさくない?」



「……ないよ」



「どーしてだろうね?」



「……知らねぇよ」



「でも、やっぱりみんなの前だと照れくさいんだ?」



「うるさいよ、お前」





言葉は冷たい。だけどその声は甘い。ものすごく。近すぎて合わなかった視線を、急に上目遣いでまっすぐに見てくるからその距離にそのまま吸い込まれそうになる。





「場所、考えろ」





上目遣いに耐えられなくてしたキスにそう言うけれど怒ってはいない。昔の翔さんなら多分切れてたかな。そんなところも好きだったけど。今は大人になったからなのか丸くなった。





「誰もいないからいいじゃん」



「そういう問題じゃない」



「翔さん冷たい」



「はぁ?めちゃくちゃ優しいだろ。普通ならさせねぇよ?楽屋でキスとかありえねぇ。カメラとかあったらどーすんだよ、マジで」





口数が多いのは翔さんの動揺。カメラがあっても俺は別にいい。むしろ見せびらすのに丁度いい。





「その言い方。他の誰かとも経験あるみたいな言い方するじゃん」




「ないない。無いわ!そういう意味じゃなくて一般論。つーか、しないだろ、普通。だってほら、鍵だって掛けてないし、誰だって入ってこれるし」





そう言うくせに、翔さんのこんな言葉を無視してまたキスをする俺の唇をちゃんと受け止めてくれるんだから、ほんとにこの人は。





「可愛いっす。マジで」




こんなだから一度や二度のキスでは止まらなくなってしまうんだと言うことを、この人はいい加減自覚すべきだと思う。














「マジで信じらんねぇ」




乱れた衣装を直しながら翔さんが言う。文句を口にしているのに全然怖くなくて、その姿はむしろ可愛い。





「だってすっげぇ色っぽいんだもん。翔さんのせいじゃない?」




「色っぽいとか、どこがだよ、全く。マジで誰か入ってこないかめちゃくちゃドキドキしてたんだからな」





そう言うくせに嫌がる様子はなかったけど?衣装のボタンを外した時も背中に手を入れ時も、可愛い声が聞こえるだけで翔さんからの抵抗が全く無かった事は俺が一番分かっている。





「つーか、めちゃくちゃ我慢したんだから褒めてください」




「……は?」




「俺、今も相当我慢してるんすよ?」





今誰かに楽屋に入ってこられたら実は非常にまずい。見せびらすとは言ったけどこれは話が別。主張してしまった下半身はこの人を抱きしめている時点で治まるわけが無い。





「……それなら俺の事も褒めろよな。コレ、お前のせいだぞ。つーかいい加減離れろ」





はぁ、と大きなため息をして自分の下半身に目をやる翔さんのは俺と同じ。






「翔さん、今日仕事これで終わり?」



「唐突だな。今日は終わり。お前は?つーか、離れろ」



「俺も」



「……あー、じゃ、……うち、来る?って、だから離れろって言ってんの」



「いいの?」



「仕方ねぇだろ。つか、全然離れねぇじゃん、お前」





やっぱりどうしてもこの人のことが好きだと思う。他のメンバーにはするのに、仕事中にはほとんど合うことのない目も触れることも触れられる事も無い体も。






「今晩はめちゃくちゃ抱いていい?」




「……だからさ、今それ言うなよ。マジでおさまんなくなる」




「マジで言ってんの?超嬉しいんだけど、俺。マジですげえ可愛いって翔さん。マジで、後ですげぇやっちゃいそう、俺」




「だから、やめろって、潤。マジで仕事になんねぇだろ、この後」




「それならそれで可愛いし、俺的にはそんな翔さん大歓迎ですけど?」






二人きりの時の翔さんをみんなに見せてやりたいよ。本当の翔さんはこんな風に俺に激甘なんだよって。言われている冷戦なんて実は今までに一度もなくて、ずっとこうやって俺たちは甘い時間を沢山過ごしてるんだよって。








「隙あり!仕返し!」




直した衣装からギリギリに見えるキスマークに気付く人がいればいいのに。




「んっ……!って、おい、なんでこうなんだよ!こら!潤!お前、やりすぎ!」




仕返しだと言って翔さんがしてきたキスに舌を めちゃくちゃに深く入 れれば真っ赤になって動揺する様子も良い。





「家でも翔さんからしてくださいね」



「……あ?……な、え?……俺から?」



「はい。チューもセックスも翔さんからしてほしいな、今日は」






普段のほとんどは俺から。翔さんからされる事がどれだけに俺を喜ばせているのか、この人には永遠に分からないんだろう。





「……善処します」



「やっべ、素直!超可愛い!翔さん、すっげぇ可愛い!!」



「は?だから可愛くねぇって!」






だけどこの後の収録では、やたらと翔さんと目が合った。




きっと放送後の反響は凄いだろう。




あの二人が目を合わせて笑い合っていたと。



全員で手を繋ぐシーンには、あのふたりがわざわざ隣同士になって手を繋いでいたと。







そして、俺はそんな自分の表情の甘ったるさに自分で驚くんだろう。

 



「お疲れ様でしたぁ」





そう思いながら収録後、熱いままの体をそのままに翔さんの家に向かった。









楽屋にて




終わり