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物語を創る者として

小説を書く方もそうでない方も、創作をする者全てに。物語を創る者として、文章力などのスキルよりも大事なものがある。それを書いていきます

おはようございまーす!
心はいつでもアナタのトモダチ! 沁です!

非常に眠いです。。。(ρω・).。o○

では先日の「□■ ミタサレル □■」の続きです。



本編はこちらから。

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「いらっしゃ……あ、坂木さん。いらっしゃい」

「今日も元気いいですね。城戸さん」

 コンビニに入って来たのが分かると男性店員は気が抜けたように笑って改めて挨拶を言い直した。僕もそれに合わせて片手を挙げて軽く笑い返しておき、他の客がいないのを見て取ってからレジの前を陣取った。

 先日の件から、この店というよりはこの店員個人が気に入ってしまい僕はすっかり常連と化していた。コンビニなら家から近い場所に他にも何箇所かあるのだけれど、少し遠出してもここがいい、なんて思ったのは生まれて初めての事だ。

「今日は風も強いし、外は寒かったでしょう」

 城戸さんは笑いながらレジの横に未だ置かれているホットドリンクを手でぽんぽんと叩いて何気なく催促してくる。

「はい、たまには差し入れ」

 だが僕はパーカーのポケットに突っ込んでいた手を抜いて、そこに持っていた未だ暖かいコーヒー缶を上納金のように厳かにレジ上から城戸さんに差し出した。

「あ! なんで、うちに来る前に買ってるんですか」

「家からここに来る途中のコンビニで、城戸さんもお疲れだろうと思って買って来たんですよ」

「しかも買って来た場所、うちの一番のライバル店だし」

 怒ったように言いながらも「休憩中に頂きますね」と言いながら受け取る城戸さん。

 歳も近いようだったし、趣向も似ていて話が合う。聞いてみればお互いの住んでいる場所も近いようで、常連になればここまで話せるようになるまで、さほど時間も掛からなかった。

 でも普通は店員とそんなに話なんてしない。田舎町の店で中年が店員と仲良くなる例はよくあるが、若い店員と若い客では、買い物の合間に日常会話なんて少ない方で長々と話なんてするわけがないんだけれど、城戸さんは現代の若者とは少し違うようだ。

 彼は正しく老若男女、誰にでも親しげに声を掛けるし、誠意を持って客の話も聞いて、一生懸命に応える。むしろ、たまに常連の客から相談すらされている事があった。

 現代社会に置ける“店員”というイメージよりも、彼には“近所の頼れるお兄さん”といったイメージの方がしっくりと来る。

「客あんまり来ませんね」

「平日の昼間はこんなものですよ」

 ならコーヒー飲んでてもいいのに、なんて思ったけれど黙っておいた。仕事に関しては彼は非常に真面目だ。どうしてそこまで頑張れるのか、僕には理解できない。

「坂木さんはタイミングよく暇な時間に来て下さるので、退屈しないで済みます」

 爽やかに言ってのける城戸さんの手は休まる事を知らず商品の整理やレジ周りの清掃と、忙しなく動き続けている。とても退屈そうには見えないし、僕が来ていたら逆に仕事に集中できないのでは、と思ってしまう。

 それでも遠慮して来る時間を変えようとは思わない。

「城戸さんは、接客が好きなんですか?」

 常に笑顔を浮かべて働く彼は本当に楽しそうに見えて、充実しているように見えて、何か満たされている気がして――もし満たされているのだとしたら、その満たされる方法を知りたいと思うから。

 彼を見ていればもしかして僕も、どうすれば満たされるのか、確かめる事ができるかも知れない。

「別に好きじゃないですね」

 でも、そんな僕の期待はやけにあっさりと、簡単に砕かれてしまった。

「え……」

「むしろ嫌いですね。安い時給で、赤の他人に頭下げて、一回頭下げるだけで1円にも満たないでしょう。本当、辛いですよ」

 城戸さんの言葉が何故か頭からするりと抜けて行く。理解できていないわけじゃない、理解はできている。受け入れるのが辛いんだと、僕はそれにすら気付かなかった。

「でも、まあ、お客様に好かれないと常連さんは逃げちゃいますし。それに自分みたいな学歴も職歴も全然ないフリーターは、これぐらいしか仕事ないですしね」

「き、城戸さん……?」

「え、どうしました?」

 背を向けて煙草の在庫をチェックしていた城戸さんが僕を振り返る。

 ――ミタサレタ笑顔デ。