聖母(マドンナ)たちのララバイ
結婚して二年目ぐらいだったと思う。
その日、私は仕事で疲れて帰ってきて食事を済ませ
お風呂に入った。
う~ん、気持ちいい!
やっぱりお風呂はいいな!
湯船に浸かると、その心地よさに
思わず私の口から♪♪♪…とメロディが流れる。
その頃流行っていた、岩崎宏美さんの「聖母たちのララバイ」だ。
「さぁ 眠りなさい 疲れきったあなたの…」
お風呂の中に響く声は
自分の歌がうまくなったような気がするぐらい
すごく、いい声に感じるものだ。
調子に乗った私の声はどんどん大きくなる。
「このまちは 戦場だから 男はみんな…」
しっかり忘れていたのだ、私は。
お風呂場のガラス窓が開いているのを。
「どうぞ心の痛みをぬぐって…」
歌は最高潮に…
その時、「え!…何か変。」
何となく身体にまとわりつく視線を感じたのだ。
どこ?どこから?
ふとガラス窓に目をやった私はビックリ仰天!
ガラス窓の向こうの闇の中から
二つの目がこちらを凝視している。
目をこすってみると、違うような気もするが…
パニックに陥った私は、慌ててお風呂からあがり
お風呂の窓に平行している、脱衣場の窓から
もう一度覗いてみた。
すると家の前の街灯の下に
男の人が立っているではないか!
やっぱり!!
タオルを身に纏い
茶の間で寛いでいた夫に「覗かれた!」と告げる。
慌てて、玄関の外へ飛び出す夫。
でも、時既に遅し。
そんなにいつまでも、そこにいるわけがないのだった。
そう、私
入浴シーンを覗かれたのだった。
テレビではよくあるシーンだけど
まさか自分がその主人公になるなんて。
勿論、お風呂の窓を開けっぱなしで
しかも大声で歌っていたのだから
「見て、見て!」と言っているようなものだ。
いくら考えても、私が悪い。
そして、後で夫が言った。
「かわいそうに…」
私のこと?
違うのだ。犯人が…だという。
「そんなもの見せられて」と。
失礼な!
これがほんとの
「窓んなたちのララバイ」だった。