先日、6月30日(日)の朝日新聞の歌壇・俳壇から。

                                          

 まず、短歌。

 

 「祖父の引くリヤカーにわれはへばりつき渡りし故郷の木の流れ橋」。この歌の作者は、綾瀬市の女性名の方。故郷とはいずこか。

 

 「砲弾を込めて背を向け耳塞ぐ幾度も兵士はそを繰り返す」。この歌の作者は、岐阜県の女性名の方。「<朝来帰(あさらぎ)>とう郷のバス停降りたてば耳になじみし潮の騒めき」。この歌の作者は東大阪市の男性名の方。「牛が塩舐めて凹める石を見に美ヶ原よこの夏はゆく」。この歌の作者は中央市の男性名の方。

 

 「畦道に家族総出で見守りぬ田植え機に乗る十六歳を」。この歌の作者は、西条市の男性名の方。「玉ねぎを切ります野外活動のカレーの練習する日曜日」。この歌の作者は、常連の奈良市の親子の弟さんの山添聡介くん、たしか小3。「紫蘇をつむ我の手にぴょんと飛び乗ったショウリョウバッタの軽さ愛しむ」。

 

 「「メンタルで打つのではない技術で打つ」笑みて応える大谷選手」。「ルビーよりサファイアよりも胸おどる新調の鎌もって畑へ」。「ナスの花撮(と)りて送りぬ多忙なる子らにしばしの脳休めにと」。

 

 「草引きの手を止め聞けばあの言葉テッペンカケタカと正(まさ)に鳴く」。この歌の『評』に、「ほととぎすの鳴き声を聞いた喜び」とあります。

 

 

 次に、俳句

 

 「人生の最後の趣味や草むしり」。

 

 「草笛の鳴らず唇老いたるか」。この句の作者は、今治市の横田青天子さん。下のお名前はなんとお読みするのでしょうか? 性別は?

 もう一句、草笛。「草笛を聞かせてくれた妻が逝く」。

 

 「父の日をそこはかと母はなやぐ」。この句の『評』に「「そこはかと」は所作のみえることば。「なんとなく」「どことなく」ではなく。」、とあります。

 

 「無人機の田植(たうえ)に主の笑顔かな」。「おほかたを捨てて涼しき卆寿(そつじゅ)かな」。「嬉野や四方(よも)に新茶の旗なびく」。

 

 「田植機に乗りて独りの田植かな」。この句の作者は先にも選出されていた横田青天子さん。男性のようですね。

 

 「すいすいと植木等とあめんぼう」。「片陰(かたかげ)や誰もだあれもゐない辻」この句の作者は米沢市の女性名の方。

 

 「いつぽんの産毛のごとし子かまきり」。この句の『評』に、「白くいたいけな子かまきり。櫃が胸に迫る。」とあります。

 

 紙面中ほどの『俳句時評』の欄。今回のタイトルは、「瀬戸内寂聴の遺句集」。筆者は、岸本尚毅さん、俳人。

 

 冒頭の文。「瀬戸内寂聴の遺句集『定命』(小学館)が刊行された。2021年の没後、京都市の「寂庵(じゃくあん)」で見つかった句が収められている」。その後、6つの句の引用と解説があります。その6句を引用します。

 

 「剃(そ)りたての頭(つむり)にとんぼ来てとまる」。「うららかや遠い恋文陽(ひ)に干して」。「死ぬる日もひとりがよろし陽だけ照れ」。「生ぜしも死するもひとり柚子湯(ゆずゆ)かな」(この句は、第1句集『ひとり』(2017))。

 

 「ひとりなりこころにあられふりしきる」。「年々に発心の秋身に重く」。

 

 今回は、上のようでした。