きのう、6月23日(日)の朝日新聞の歌壇・俳壇から。

                                          

 まず、短歌。

 

 「四人の子六人の孫在るけれどあなたの居ない四十二年」。「満洲を青酸カリ持ちて生き延びし叔母百二歳にてみまかりたまう」。「五十年家まもり来し鬼瓦地震(なゐ)に傷めば庭すみに置く」。この歌の作者は、七尾市の男性名の方。

 

 「まなうらにミヤマキリシマ咲き咲かせ小声でうたふ坊がつる賛歌」。この歌の作作者は、福岡県の嘉麻市の野見山弘子さん。坊がつるは、九重連山にある盆地・湿原。ミヤマキリシマは、ツツジの仲間。「坊がつる賛歌」は芹洋子さんの歌。むかし、わたくしが佐賀の実家に住んでいた頃、観光バスのガイドさんが歌ってくれたのを記憶しています。作者のお名前も似つかわしいと思いました。

 

 「種もみを等間隔に打ち込みて田植え仕事をドローンが担う」。「ダンゴムシはツノがあるのに優しいとそっとつまんで見入る三歳」。「裏庭のプールに飛来の二羽の鴨家族五人が窓辺に並ぶ」。この歌の作者は、常連のアメリカのソーラー泰子さん。

 

 「背の伸びる音の聞こえてきそうな子われより大きくなった足裏」。この歌の作者は、常連の奈良市の親子の親子のお母さん。たしか中2の常連のお嬢さんの葵さんのことでしょう。

 

 

 次に、俳句

 

 「曽(かつ)て塗師(ぬし)老いて厨(くりや)に蕗(ふき)を炊く」。「田植え機のエンジン始動鬨(とき)の声」。「(のど)とほる時にめろんと音すなり」。 「托鉢(たくはつ)の一行跛(はだし)また跣」。

 

 「腹裂かれ群なす鯵(あじ)や天日干し」。「廃屋の秘むる光陰蔦(つた)茂る」。「秘境めく山霧秘密めく湯宿」。

 

 「六月や淳を賜る戦地より」。この句の作者は、多摩市の又木淳一さん。わたくし初見では意味が分かりませんでしたが、作者のお名前を拝見して理解できました。たぶん、6月に誕生された作者に、戦地のお父様が名付けられ、戦地から郵便で知らせてこられたのでしょう。

 

 短歌修行中のわたくしの愚考ですが、「戦地より淳を賜る六月や」の方が日本語として馴染みやすいと思うのですが・・・。

 

 紙面中央下部に、次のお知らせがありました。

 「◇朝日俳壇 入選取り消し 6月9日の俳壇に掲載した「この町の最後の本屋燕の子」は二重投稿だったため、入選を取り消します。」

 

 今回は、上のようでした。