きのう、3月4日(月)の読売新聞の歌壇・俳壇から。

 

 まず、俳句。

 

 「少女採り干した雁皮を紙に漉く」。この句の作者は、長岡京市のみつきみすずさん。この句の『評』に、「ガンピは高級和紙の原料である。少女が採集して丁寧に乾燥した野生の木の皮を使い、感謝しつつ紙を漉いているところ。」とあります。

 ありのままそれだけの俳句ですが、句も所もお名前も日本古来の感じ。

 

 「捨てられぬ火鉢廊下の突き当り」。「外が好き夜が好きなり雪兎」。「モルヒネを打ち勝鶏(かちどり)の傷を縫う」。

 

 「ざくざくと霜柱踏み家出かな」。この句の『評』に、「家出というと物々しいが、家族に反対されて、家出同前の門出ということだろう。歯切れの良い「ざくざくと」が、勢いを感じさせる。」とあります。

 

 「重力に逆ふやうに雪がふる」。この句の作者は、石狩市の男性名の方。石狩市へは行ったことがありません。すごく雪が降るのでしょう。この句では、ふんわりまいおりてくるような大きな雪のつぶでしょうか。

 

 「瑕ひとつなき青空の寒さかな」。「瑕(か)」という語を使い、6・5・5音です。すっきりしたいい作品だと思います。すばらしい。

 

 

 つぎに、短歌。

 

 「ま寂しきものに師走の動物園 塀の内より象の鳴くこゑ」。この歌の作者は、下関市の男性名の方。上野動物園だと違うような気がします。「ま+寂し」という言葉が使われているのを始めて見ました。

 

 「「歯がなくてくしゃくしゃ顔もかわいいよ」じいじが好きという孫娘(まご)が居て」。この歌の作者は船橋市の男性名の方。「倒壊の家の前には一鉢の白きシクラメン供えられたり」。「優しいなレジのあの子はいつの日も街のみんなの人気者だね」。この歌の作者は、鳴門市の女性名の方。

 

 「まつげにも積もろうとするその雪と同じ思いで愛していたよ」。この歌の作者は、高島市の女性名の方。俵万智さんの選。

 

 「無期囚と齢(よわい)同じき老看守「先に出る」とぞ定年を告ぐ」。「普賢岳の荒き山肌あきらかに対岸に見ゆ霜ふかき朝」。この歌の作者は、天草市の女性名の方。天草は熊本県、普賢岳は長崎県。この2首の選者は黒瀬珂瀾さん。

 

 

 今回は、上のようでした。