先日、2月12日(月)の読売新聞の歌壇・俳壇から。

 まず、俳句。

 

 「炊出しをするも受けるも息白し」。「能登瓦伏しし街並みなほも雪」。「避難所に支えあう声冬の星」。「会釈して白息のみを交はしけり」。

 

 「選受けしゆたかな月日冬日和」。この句の『評』に、「前選者宇多喜代子氏への感謝に溢れる。選者と投稿者との俳句を通じた交流の日日が冬日和のように広がる。心にして選に当たりたい。」とあります。この選者は、たしかこの1月から選者を交代した高野ムツオさん。

 

 「冬はつとめて明けの明星消えるまで」。この句の作者は、さいたま市の関根博さん。この句の『評』に、「清少納言の「冬は早朝が良い」という言に、若い頃は「寒いのに」と思ったものだが、今は深く肯(うなず)く。冬の早朝ほど清々(すがすが)しく美しいものはない。金星が太陽の光に消えるまで。」とあります。

 

 「青竹のぱんぱんばんとどんどかな」。この句の『評』に、「どんど焼きで、青竹が燃やされて割れる音を「ぽんぽんばん」と聞き取っている。途中で音が変わるのがよかった。「ぱんぱんぱん」だったら、一席には置かなかった。」とあります。この句の選者は、小澤實さん。「一席」とは、このような欄で、10(ほどの)作品中第1番目に掲げる作品。

 

 「寒風へ夫なき後教習所」。この句の作者は千葉市の方。千葉市内でも車がないと生活が困難な場所があるのですね。おいくつなのでしょうか。

 

 「この席に去年(こぞ)妻在(ま)しき年迎ふ」。「雪下(お)ろす亭主に惚るる妻であれ」。

 

 

 次に、短歌。

 

 「陽だまりの三毛猫眠るボンネット乗るに乗れずに駅へと歩く」。「もう行っていいよと鳥のような目で呟(つぶや)ける母白き壁に囲まれて」。「冷飯に冷汁かけて朝餉とす寒き朝なり能登を思へる」。

 

 「犬二匹連れて散歩し犬二匹の人と会話す今日は終はりぬ」。この歌の作者は、霧島市の秋野三歩さん。筆名だと思いますが、性別も定かでありませんが、おもしろいですね。

 

 「古希越えし吾に復職依頼書が 保育士不足ここまで来たり」。この歌の作者は、岸和田市の女性名の方。

 

 「握ったり開いたりして不思議だろうそれはお前の世界をつくる」。この歌の作者は、金沢市の塩本抄さん。この歌の『評』に、「赤ちゃんが自分の手を不思議そうに眺めるのは、よく観察されることだが、希望に満ちた下の句への展開が素晴らしい。手と言わないことで、想像がいっそう搔(か)き立てられる。」とあります。

 

 「訓練で机の下に潜るたび戻りたくない自分にきづく」。この歌は横浜市の男性名の方。おいくつぐらいのかたでしょうか。

 

 「被災地に残りし人に背を向けて避難するわれ足どり重し」この歌の作者は金沢市の男性名の方。こういう思いもあるのでしょうね。

 

 「思い出を作ってくれた亡き家族に感謝し生きると涙の被災者」。「マスター死して赤ちょうちんの灯は消えたそこには真実(まこと)が確かにあった」。

 

 「いくたびも子の亡骸をぐるぐると哭きつつ廻る鴉やあはれ」。<追記>電子辞書では「哭く(こく)」としか読み仮名がないようです。ネットで、「なく」という読み仮名もみつけました。したがって、「哭(な)きつつ」が正解のようです。

 

 

 今回は、上のようでした。