■概要
・1995年 祥伝社
・「暗号・殺人劇場」改題
・2016年10月7日 読了
■あらすじ
多磨霊園で、大手製薬会社の御曹司が殺害される。
彼は、薬学部の講師として、友人、後輩とともに、
大きな利益を生む特許を手中とし、
祖父の会社への入社が決まっていた。
捜査が行き詰まる中、一通の手紙が警察に届く。
「天地子我」がランダムに配列された、177文字の暗号。
そして、さらなる殺人が起こる・・・
■感想
文学としてというより、
動機、人物の動き、捜査方法、推理の内容、
私には、推理小説として、成立しているとは思えませんでした。
指摘点多くは、ネタバレに記載することとします。
また、
暗号についても、高度な専門知識(DNAの配列など)を要し、
読者が解読できたり、
できないにしても「なるほど」と思えるものではなく、
(検証さえもできないというか、調べてまでしようとは思わない)
題名に、暗号を持ってきた趣旨も不明です。
さらに、
暗号から分かる内容も、それが事件を解く
鍵になるものではありませんし、
「天地子我」という漢字にも、ほとんど意味はありません。
(目撃したことをほのめかすだけ。
置き換える元なので「あいうえ」でもOK)
それだけではなく、動機をはじめとし、
人物の心理描写、行動、さらに捜査の方法にも
違和感を感じる点が多かったです。
当初は、捜査方法などは、引っかかる程度で、
読んでいたのですが、どんどん作品に対する不信感のようなものが、
募ってしいました。。。
■結末(ネタバレ)
①あらすじ
警部補 熊谷吉之助の視点を中心に描かれている。
友野善吉は、一代で日本で有数の薬品会社を築き上げるも、
息子の芳男は脳卒中に倒れ、
跡を継がせる予定であった 芳男の次男 伸之も、
喧嘩の末、コンクリートブロックに頭をぶつけ、事故死してしまう。
善吉、芳男、共に妻をなくしており、
学問の世界に入っていた長男の章一郎を口説き落として、
入社を決めさせた。
折しも、章一郎は、友人:石上克也、後輩:勝又徹と、
TKF(殺ガン因子)の特許出願をしており、
その特許は、会社にも、莫大な利益をもたらすはずであった。
章一郎、石上のお披露目を兼ねたうちうちの食事会の日、
章一郎は、多磨霊園で撲殺されてしまう。
章一郎のポルシェの他、1台の自動車とバイクの目撃情報があった。
章一郎に恨みを持つ人間を探す過程で、
逆恨みに近い感情を持っていた 高校の生物教師:佐久間道明に
行き当たる。
目撃されたバイクが、佐久間のものに似ていたことから
佐久間を疑う警察。
そんな時、警察に、「天地子我」の4文字が順不同に177文字書かれた
暗号が届く。
暗号は、佐久間からではないかと思う熊谷たちであるが、
佐久間は、駅のホームは突き落とされて殺され、
近くでは、石上の目撃情報が有る。
石上を犯人として疑うが、
章一郎が生きていれば、片腕として取り立てられるはずだったのに、
章一郎を殺すことは、不利にしか働かなく、動機が不明。
石上の婚約者の島田真理子は、
石上の家の前で、岩浜亮を見て不信感を募らせるが、
探偵だった岩浜は、水死体で発見される。
そんな中、友野善吉の個人秘書:勝又定一のもとに、
石上の中学生の時の作文が届き、
石上への人格的な疑いを強める熊谷ら警察。
石上の卒業文集「力への意志」
善か悪かではなく、勝つか負けるか。
弱者には嫌悪を感じる。悔しかったら力を手に入れろ。
けれど、暗号がとける!
暗号の答えは、目撃者佐久間からのメッセージ、
「とものをころしたのは、かつまたさだいちだ」
実は、
島田真理子は、善吉の隠し子の娘であり、
章一郎亡き後、真理子と婚約者の石上に、
全てを譲ろうを思っていたのであった。
さらに、
勝又定一の甥とされていた徹は、
実は、定一の実子だった。
徹には、自分と同じ、友野家の奴隷としての人生は、
歩ませたくないとする勝又。
章一郎を殺した後は、
邪魔な真理子を片付けようとするが、
現場を押さえられ自白する。
なお、次男伸之は、
勝又が一緒にいた際、専務の長谷川が事故的に殺しており、
それをネタに長谷川に優位に立てていた勝又は、
会社を握るであろう長谷川から、徹の出世を脅し取るつもりであった。
②暗号
暗号は、「天地子我子我天・・・」と
「天地子我」は177文字分繰り返されている
天知る地知る子知る我知る
故事成語で、賄賂がバレないと言われても、
いや、天も地も、あなたも私も知っていると。
そして、ヒント。
「億千万の鎖に鏡を立てて、小より大に至る」
ここで、文字が四文字であることと、億千万の鎖だけで、
佐久間が化学と生物の教師であることだけで、
DNAの塩基配列だと確定される。(不自然)
そこからは、正直不明。
・天をA、地をT、子をG、我をCに変換
・二重らせんにする
・回文部分を除く
・ATGCからの3つの塊をコドンといい
コドンによりアミノ酸の名前がある
・アミノ酸の名前の小さい方から大きほうへ
アルファベットを当てはめる
正確に理解できていないかもしれませんが、
こんな感じです。
そもそも、なぜDNAの塩基だと確定させているかから、
その後についても、生物の知識があれば読めるのかどうなのかも、
分からないといったものでした。
③疑問点、不自然な点
揚げきれないのですがいくつか・・・
後で思い返して記載しているので、
細部で思い違い部分があったらすみません。
【暗号→逮捕】
暗号は犯人(勝又定一)の名前を示しているだけで、
トリックやアリバイ崩しを示しているわけではありません。
つまり、勝又を犯人の可能性があると洗っていれば、
この文章がなくても犯人と特定できたということ。
素人ならともかく、警察の捜査なのに、
「九分九厘 石上が犯人」とされていました。
【佐久間の暗号のヒント】
佐久間は、自分の高校の生徒に、
同じような暗号(文字数、文章は違うが天地子我の4文字)を
クイズとして出し、死後、それが警察の耳に届きます。
誰かわからないように、警察に暗号を送った佐久間が、
そのようなことをするのは、かなりおかしな行為です。
【石上の立場】
熊谷ら警察は、章一郎亡き後も、
石上が入社を取り消されないことを、執拗に疑います。
章一郎の誘いであったとしても、
莫大な利益をもたらす特許を共同出願している石上と勝又徹を
会社が離したくないないのは、
真理子の婚約者というだけではなく当然ではないかと。
【捜査手法】
捜査の秘匿と思われる暗号の存在を佐久間に告げたり、
「背の高い男」「自宅から近い」というだけで、
「あなたを見た人がいる」と佐久間に断定したり、
捜査の手法としても、疑問が残ります。
【石上の卒業文集】
何者かから勝又定一に石上の中学時代の卒業文集が届く。
明らかに怪しいのに、
「誰が何のために送ってきたか」ということより、
石上の人格的な強さへのあこがれ(=手段を選ばない)を疑う。
ただの中3の時の文章に・・・
【勝又が真理子を呼び出す】
勝又が、真理子を呼び出し自殺に見せかけて
殺そうとするが、決行を急いだのは、
警察から、
「真理子が石上が無罪という証拠を持っている。
明日、聞くつもりだ。」
という情報を聞いたため。(勝又を捕まえるための罠)
石上が無罪だという証拠を持っている真理子が、
石上のことを悲観して自殺するわけがないことは、
警察には明白。
勝又自身も、そこに疑問を感じるはずだと思うが・・・
真理子が「意図せずに」証拠を知っているため、
(石上が犯人かもと思っている
=まだ自殺する可能性あり)
警察から連絡がつくまでは、石上が無実だと気づかなかったから、
自殺したという可能性もあるが、
真理子は自宅にいながら、警察からの連絡よりも先に、
勝又と連絡がつくという状況が不自然だと思わないのか?

















