■概要

・1995年 祥伝社

・「暗号・殺人劇場」改題


・2016年10月7日 読了






■あらすじ

多磨霊園で、大手製薬会社の御曹司が殺害される。

彼は、薬学部の講師として、友人、後輩とともに、

大きな利益を生む特許を手中とし、

祖父の会社への入社が決まっていた。


捜査が行き詰まる中、一通の手紙が警察に届く。

「天地子我」がランダムに配列された、177文字の暗号。


そして、さらなる殺人が起こる・・・




■感想



文学としてというより、

動機、人物の動き、捜査方法、推理の内容、

私には、推理小説として、成立しているとは思えませんでした。


指摘点多くは、ネタバレに記載することとします。



また、

暗号についても、高度な専門知識(DNAの配列など)を要し、

読者が解読できたり、

できないにしても「なるほど」と思えるものではなく、

(検証さえもできないというか、調べてまでしようとは思わない)

題名に、暗号を持ってきた趣旨も不明です。


さらに、

暗号から分かる内容も、それが事件を解く

鍵になるものではありませんし、

「天地子我」という漢字にも、ほとんど意味はありません。

(目撃したことをほのめかすだけ。

 置き換える元なので「あいうえ」でもOK)



それだけではなく、動機をはじめとし、

人物の心理描写、行動、さらに捜査の方法にも

違和感を感じる点が多かったです。


当初は、捜査方法などは、引っかかる程度で、

読んでいたのですが、どんどん作品に対する不信感のようなものが、

募ってしいました。。。



■結末(ネタバレ)


①あらすじ

警部補 熊谷吉之助の視点を中心に描かれている。


友野善吉は、一代で日本で有数の薬品会社を築き上げるも、

息子の芳男は脳卒中に倒れ、

跡を継がせる予定であった 芳男の次男 伸之も、

喧嘩の末、コンクリートブロックに頭をぶつけ、事故死してしまう。


善吉、芳男、共に妻をなくしており、

学問の世界に入っていた長男の章一郎を口説き落として、

入社を決めさせた。


折しも、章一郎は、友人:石上克也、後輩:勝又徹と、

TKF(殺ガン因子)の特許出願をしており、

その特許は、会社にも、莫大な利益をもたらすはずであった。



章一郎、石上のお披露目を兼ねたうちうちの食事会の日、

章一郎は、多磨霊園で撲殺されてしまう。


章一郎のポルシェの他、1台の自動車とバイクの目撃情報があった。



章一郎に恨みを持つ人間を探す過程で、

逆恨みに近い感情を持っていた 高校の生物教師:佐久間道明に

行き当たる。


目撃されたバイクが、佐久間のものに似ていたことから

佐久間を疑う警察。


そんな時、警察に、「天地子我」の4文字が順不同に177文字書かれた

暗号が届く。


暗号は、佐久間からではないかと思う熊谷たちであるが、

佐久間は、駅のホームは突き落とされて殺され、

近くでは、石上の目撃情報が有る。



石上を犯人として疑うが、

章一郎が生きていれば、片腕として取り立てられるはずだったのに、

章一郎を殺すことは、不利にしか働かなく、動機が不明。



石上の婚約者の島田真理子は、

石上の家の前で、岩浜亮を見て不信感を募らせるが、

探偵だった岩浜は、水死体で発見される。


そんな中、友野善吉の個人秘書:勝又定一のもとに、

石上の中学生の時の作文が届き、

石上への人格的な疑いを強める熊谷ら警察。



石上の卒業文集「力への意志」

 善か悪かではなく、勝つか負けるか。

 弱者には嫌悪を感じる。悔しかったら力を手に入れろ。



けれど、暗号がとける!

暗号の答えは、目撃者佐久間からのメッセージ、

「とものをころしたのは、かつまたさだいちだ」


実は、

島田真理子は、善吉の隠し子の娘であり、

章一郎亡き後、真理子と婚約者の石上に、

全てを譲ろうを思っていたのであった。



さらに、

勝又定一の甥とされていた徹は、

実は、定一の実子だった。


徹には、自分と同じ、友野家の奴隷としての人生は、

歩ませたくないとする勝又。


章一郎を殺した後は、

邪魔な真理子を片付けようとするが、

現場を押さえられ自白する。



なお、次男伸之は、

勝又が一緒にいた際、専務の長谷川が事故的に殺しており、

それをネタに長谷川に優位に立てていた勝又は、

会社を握るであろう長谷川から、徹の出世を脅し取るつもりであった。




②暗号

暗号は、「天地子我子我天・・・」と

「天地子我」は177文字分繰り返されている


天知る地知る子知る我知る

故事成語で、賄賂がバレないと言われても、

いや、天も地も、あなたも私も知っていると。



そして、ヒント。

「億千万の鎖に鏡を立てて、小より大に至る」


ここで、文字が四文字であることと、億千万の鎖だけで、

佐久間が化学と生物の教師であることだけで、

DNAの塩基配列だと確定される。(不自然)


そこからは、正直不明。

  ・天をA、地をT、子をG、我をCに変換

  ・二重らせんにする

  ・回文部分を除く

  ・ATGCからの3つの塊をコドンといい

    コドンによりアミノ酸の名前がある

  ・アミノ酸の名前の小さい方から大きほうへ

    アルファベットを当てはめる

正確に理解できていないかもしれませんが、

こんな感じです。


そもそも、なぜDNAの塩基だと確定させているかから、

その後についても、生物の知識があれば読めるのかどうなのかも、

分からないといったものでした。




③疑問点、不自然な点

揚げきれないのですがいくつか・・・

後で思い返して記載しているので、

細部で思い違い部分があったらすみません。


【暗号→逮捕】

暗号は犯人(勝又定一)の名前を示しているだけで、

トリックやアリバイ崩しを示しているわけではありません。

つまり、勝又を犯人の可能性があると洗っていれば、

この文章がなくても犯人と特定できたということ。

素人ならともかく、警察の捜査なのに、

「九分九厘 石上が犯人」とされていました。

 

【佐久間の暗号のヒント】

佐久間は、自分の高校の生徒に、

同じような暗号(文字数、文章は違うが天地子我の4文字)を

クイズとして出し、死後、それが警察の耳に届きます。

誰かわからないように、警察に暗号を送った佐久間が、

そのようなことをするのは、かなりおかしな行為です。

 

【石上の立場】

熊谷ら警察は、章一郎亡き後も、

石上が入社を取り消されないことを、執拗に疑います。

章一郎の誘いであったとしても、

莫大な利益をもたらす特許を共同出願している石上と勝又徹を

会社が離したくないないのは、

真理子の婚約者というだけではなく当然ではないかと。

 

【捜査手法】

捜査の秘匿と思われる暗号の存在を佐久間に告げたり、

「背の高い男」「自宅から近い」というだけで、

「あなたを見た人がいる」と佐久間に断定したり、

捜査の手法としても、疑問が残ります。


【石上の卒業文集】

何者かから勝又定一に石上の中学時代の卒業文集が届く。

明らかに怪しいのに、

 「誰が何のために送ってきたか」ということより、

石上の人格的な強さへのあこがれ(=手段を選ばない)を疑う。

ただの中3の時の文章に・・・


【勝又が真理子を呼び出す】

勝又が、真理子を呼び出し自殺に見せかけて

殺そうとするが、決行を急いだのは、

警察から、

「真理子が石上が無罪という証拠を持っている。

 明日、聞くつもりだ。」

という情報を聞いたため。(勝又を捕まえるための罠)


石上が無罪だという証拠を持っている真理子が、

石上のことを悲観して自殺するわけがないことは、

警察には明白。

勝又自身も、そこに疑問を感じるはずだと思うが・・・


真理子が「意図せずに」証拠を知っているため、

 (石上が犯人かもと思っている

   =まだ自殺する可能性あり)

警察から連絡がつくまでは、石上が無実だと気づかなかったから、

自殺したという可能性もあるが、

真理子は自宅にいながら、警察からの連絡よりも先に、

勝又と連絡がつくという状況が不自然だと思わないのか?

■評価項目について


感想項目にある「評点項目」は、

下記のようなポイントを点数化しています。


独断と私の好みですので、お許しください♪



また、素晴らしい作品でも、

  ・重厚なテーマでしたら「娯楽性」が低くなる

  ・美しい文章であっても「テンポ・読みやすさ」が低くなる

など、平均点が下がることもありますので、


これら6項目と平均の他に、「私の好み」を入れました。



【文章の流麗さ】

文章のうまさ、美しさです。

5に近いものは、戦前の日本文学のような重厚感のあるものですが、

3以下位になると、文章のうまさやこなれ感という趣旨が強くなります。


例えば、日常的な言葉だけで綴られていても、

さりげないこなれ感があるものは3.5になり、

作文に近いものは1.5になるようなイメージです。



 

【テンポ・読みやすさ】

同じ文章量を読むのにかかる時間のイメージです。

疲れているときや、電車の隙間時間でも、

読みやすいかどうか?などを基準としています。


素晴らしい作品であっても、文章の流麗さが4.5以上になると、

読みやすさは下がることが多いです。


また、

読みやすくても、テンポが悪い、ダレていると感じる文章は、

点数が低くなります。




【世界観、リアリティ】

その時代や設定としてのリアリティがあり、

世界観が確立しているかどうかです。


ファンタジーやドラマのようなありえない展開でも、

リアリティを持って、真実の出来事のように記載できるか。

また、日常を、よりリアルな形で表現できているかなどです。


登場人物の心理描写が不自然であるだったり、

設定に甘さが有ると言ったことの他、

推理小説であれば、トリックや行動、動機に違和感がないかも

判断しています。




【娯楽性】

エンターテイメント性です。

ドキドキするような引き込まれる感覚を基準にしています。


文学的な要素が強い作品では、作品への評価は高くても、

この項目は低い点数になることもあります。




【感動度】

単純に、感動できるか、泣けるかという基準です。




【構成の巧みさ、予想外の結末】

推理小説やどんでん返しのような、予想外の要素があるかの他、

例えば、視点の多角性(複数人数の視点)や、

心理描写の時系列的な工夫、後から回収される伏線など、

「そうだったんだ」と思わせる要素、面白い視点だと思わせる要素を、

判断しています。




■ハッシュタグについて

点数で研削しやすいように、ハッシュタグに

  ・平均◯◯

  ・好み◯◯

というのを作っています。


コンマが使えなかったので、コンマを除いて記載しています。

  例) 3.0 → 30  、  4.5 → 45


平均は細かくしすぎても検索しにくいので、

0.5ごとに四捨五入のように記載しています。

  例) 1.8~2.2 → 2.0 → 20

     4.3~4.7 → 4.5 → 45

■概要

・小説新潮 2002年11月号~2004年5月号連載

・第2回本屋大賞(2005年)

・第26回吉川英治文学新人賞(2005年)

・映画化(2006年)多部未華子


・読了 2016年6月頃





■あらすじ

西脇融は、高校生活最後の歩行祭を前に、

膝に不安を抱えていた。

歩行祭とは、年に一度、全校生徒が夜通し80キロの距離を

歩き通すというイベント。


一方、甲田貴子は、自分自身とある賭けをする。

西脇融と貴子には、ある特別な関係があった。


文庫本で400P以上の長文を、(大きな回想シーンを挟むこともなく)

歩行祭の始まりから終わりのみの時間軸で描く青春小説。




■感想

青春小説と書きましたが、甘酸っぱい初恋というよりは、

もう少しだけ重いテーマ、

けれど、読後感はさわやかな小説です。


ただ、読みにくい文章ではないのですが、

本題以外のサードストーリーに割かれる文章も長く、

もう少しコンパクトに、凝縮した文体で読みたかったと思いました。



多分、そういった脇道の話題も含めて、

不確かで、不安定で、でも懸命な高校生活という雰囲気が

積み上げられているのでしょうが。


学生の頃の恋愛トークが、社会人になると、

くだらないことで悩む、テンポの遅い会話に聞こえてしまう

微笑ましさとじれったさに近いのかもしれません。

私にピュアな心が足りないのでしょうか?(笑)


そういった感想ですので、本屋大賞受賞作としては、

間延びしたというか、テンポが遅いというような

感想を持ってしまいました。




ただ、

この小説の中でも、主人公:融の親友:忍が話しているのですが、 

物事には、「その時」に、経験しておかなきゃいけない事がある。

同じ物事でも、自分のタイミングで、感じ方も影響も違います。


私の年齢(38歳)にとって、この小説は、

実感するには遅すぎて、懐かしむには早すぎる

そんな小説だったのかもしれません。



夜のピクニックグラフ

夜のピクニック表



■結末(ネタバレ)

高校生活最後の歩行祭(80キロを全校生徒が夜通し歩く)の朝、

西脇融は、膝の負傷から、後半、親友の忍と共に、

走ってゴールをできるか不安を感じていた。


一方、

甲田貴子は、この歩行祭で、自分自身と賭けをしており、

緊張感を高めている。

帰国子女で、再度アメリカに行ってしまった杏奈から、

10日ほど前に届いた

「去年、おまじないを掛けてといた。

 貴子たちの悩みが解決して、無事ゴールできるように

 N.Y.から祈っています」

という手紙を不思議に思いつつ。


その賭けとは、

「西脇融に話し掛けて、返事をしてもらうこと」

賭けに勝ったら、

「父親の墓参りに誘う」ということ。



実は、二人は異母兄弟。

融の父と、貴子の母が不倫をしてできた子が貴子。

二人の父親はすでになくなっているが、

シングルマザーの貴子の母は、事業を営んでいて裕福。


二人は、父の葬儀で初めて顔を合わせるも、

キャリアウーマン然とした貴子の母に、

融はある種の劣等感、惨めさを抱く。


そして、

二人共、それを誰にも告げずに今まできたのだった



同じ高校となり、三年生では同じクラスとなった二人。

言葉をかわさずとも、

互いを気にしていることが空気に出ている二人は、

高校生らしく、「好きなの?」「付き合っている?」という

噂にも悩まされる。

会話をしたこともないのに・・・



ただ、杏奈ともう一人の親友で、

一緒に歩行祭に参加している美和子は、

貴子の母から告げられて、そのことを知っていた。


そして、

杏奈からの手紙の意味とは、

 去年おまじない→杏奈の弟 順弥を活かせる

 貴子たちの悩み→貴子と融の悩み

ということだった。



歩行祭の辛さや、サイドストーリーの展開により、

距離を縮めた二人。

貴子は、賭けに勝った。

そして、お墓参りではなく、

自分の家に、融が遊びに来ることを提案する。



主旋律の融と貴子と共に、

いくつかのサイドストーリーが並行して走っている。



①杏奈の弟 順弥
他校生ながら、昨年の歩行祭にこっそり参加しており、

幽霊との噂も出ていた。

空気を読まないが、ある方面には感がよく、

「友人の兄弟を好きになった」という杏奈の言葉から、

徹が、貴子の兄弟であると気づき、話してしまう。


気まずさが流れるが、

これによって、忍が二人の関係を知ることとなり、

それが良い方向に流れ、大団円となる。



②忍と恋人になれなかった他校生

貴子のクラスメート悦子は、他校生で美人の従姉妹が、

貴子の学年の男子との子供を中絶したと知り、

父親探しに躍起になっている。


貴子は、写真の女子と、

忍が歩いているのを、以前、偶然目撃していた。


忍は、友人が告白するのに付き合い、

その後も、デートに付き合わされるうちに、

その彼女に想いを寄せられていた。


けれど、彼女をそのような目では見られず、

彼女も、当てつけのように、他男子との恋愛を忍に相談する。

そして、しばらくぶりに会った彼女が言った言葉が、

妊娠をしたというものだった。



③融と内堀亮子

内堀亮子は、徹に思いを寄せており、

歩行最中に誕生日を迎える徹に、様々な方法で、

アプローチ。

貴子と融が、ゆっくり会話をすることを邪魔する。


亮子は、以前、忍と付き合っており、

忍によると「とても打算的な女。」



④貴子と芳岡祐一

天文部の芳岡は、独特な感性を持ち、他人の態度に動じない。

貴子が母がシングルマザーであることを告げても、

変わらず接する、良い意味で空気の読めない理系系男子として

描かれている。


よくお茶をする間柄になった貴子と、

付き合っていると誤解されているが、貴子は茶飲み友達と。

(小説では、芳岡の心情は詳述されておらず、

 芳岡も、貴子と同じ感覚のような記載をされている。)


祐一は、貴子に「不思議な顔をしている」という。

それは、貴子が寛大なせい、ギラギラもびくびくも

してないからだと告げる。

「甲田さんは許してるんだ。他人から何かもぎとろうなんて思ってない・・・」



⑤忍から融へ

忍は貴子へ、融について、

「感情安定しててマイペースなのは偉い。

 だけど、何も見ないふりをするのは気に食わない。」


「臭くて、惨めで、恥ずかしくてみっともないもの。

 あいつにはそういうものが必要だと思うんだよね。」と。


融自身にも、

「説教していい?」

「お袋さんを楽にさせたい、一人立ちしたい・・・は、

 よーく分かるし尊敬している。」

「けれど、雑音も必要。」

「もっとぐちゃぐちゃしてほしい。」


また、貴子に苛立ちを見せているようだった融も、

事態を把握した忍に、

「あいつは寛大なんだ。・・・

 憎んだり恨んだりしてくれたら、俺だってもっと楽だったのに。

 むしろ、あいつは俺を哀れんでいる」

「あいつの存在を否定していることすら、

 誰にも教えたくなかった。」


最後に、貴子とのことを解消した融は、

「もっと、ちゃんと高校生やっとくんだったな」

「青春しとけばよかった」と、

自分が一番、ガキだったと気づく。



⑥これからの四人

忍と貴子、融と美和子のカップルを

暗示しつつ、物語は終わる。


■概要

・2007年 文庫書き下ろし


・2016年7月 読了





■あらすじ

生前葬に近いイベントを語る講演、

親しい友人の葬式での心無い自称「親友」の弔事に

嫌気が差し、自ら人生のリセットとしての生前葬をしよう決意する

自分で会社を大きくした 上場会社の代表社長 本宮。


戸籍上は違うと言っても、

それは愛人との実質上の結婚を意識するためのリセットでもあった。


けれど、

そんな折に、妻の病気が判明する。





■感想

装飾のすくない文章ではあるが、こなれた感じがあり、

非常に読みやすい文章です。

ブログを書くためにパラパラと見ましたが、

1時間ほどで、ほぼ読み直してしまいました。


前半は、雰囲気もある話しに引き込まれますが、

後半のオチへのリアリティと、人物の心情が不足している

気がします。


結末は、前半のトーンとは全く違うものなのですが、

「あり得ないことにリアリティを感じさせる」迫力が、

不足しており、衝撃的な結末というよりは、

突然、突っ込まれた場違いな結末というほうがピッタリきます。


少し、点数は低いですが、

隙間時間に読むには、良い本かと思います。

ただ、人によっては、最後、モヤモヤが残るかも・・・


生きてるうちに、さよならをグラフ

生きてるうちに、さよならを表


 

■結末(ネタバレ)

短編連作ではありませんが、

章ごとに、語りかける相手(もしくは自分語り)が変わるので、

各章の説明とする。


はじめに


第一章 生きてるうちに、さよならを

   (→講演講師 社会評論家 大塚綾子)

上場企業の経営者である本宮直樹は、

自社の講演に有名社会評論家、人生相談回答者を呼ぶ。

彼女は「生きてるうちに、さよなら」パーティーを開くという。


通常の生前葬と違い、「また今度」といいながら

疎遠になっている人たちを招くというもの。

主人公も、自分の人生の区切りとして、

「生きてるうちに、さよならを」パーティーを開こうと決意する。



第二章 友が天に昇った日

   (→ 親友・フリーライター 下村次郎)

しばらく会っていなかった親友がなくなった日。

彼は、ライターとして有名人となっていた。


親しくもなかった参列者や

昔、故人にハニートラップを仕掛けた相手が、

売名目的で、芝居がかった弔事、思わせぶりな弔事を述べる。


本宮は耐えられなく、騒ぎを起こしてしまうが、

死んでから、交際範囲を家族も把握できないことをいいことに、

訳の分からない相手だけがでしゃばる葬式への嫌悪感を強める。



第三章 それを行う正しい理由

   (→ 愛人 小倉さゆり)

小倉さゆりは、何人もの愛人を作った本宮が、

唯一入れ込んだ女。


さゆりは、

「涼子さん(妻)のどこが好きだった」と。

地味で、自分の人生に出しゃばらないところと応える。


では、自分の好きなところは?と聞くさゆりに、

「言葉にウソがないところ」と。


そんなさゆりに、人生のリセットを目的とした生前葬を開き、

戸籍上は難しいものの、それは、

残された人生をさゆりと過ごしたい証だと告げる。



第四章 花の香のする夜に

   (→ 自分語り)

生前葬をしたいという本宮に、

それは、社会的な「死」であると反対する腹心の志村。


そんな中、冷え切った家族の筈が珍しく強固に、

妻が、年末年始のグアム行きを決める。

妻、息子、娘と四人の旅行も打ち解けられず、

早く帰りたいと思う本宮。


グアムが新婚旅行とも気づかぬ本宮と家族の前で、

妻は、余命が半年か1年しか無いことを告げる。



第五章 あの海と同じ海を眺めて

   (→自分語り)

伊豆半島のホスピスに入った妻。

仕事は手につかず、当面、副社長の今泉に任せることとする。


「あの海とつながっているんだな。」

「そうね。家族でいったあの海と。」

思い浮かべていたのは、家族旅行ではなく新婚旅行。


新婚旅行の際の

「結婚してくれてありがとう。」と言う涼子の言葉を思い出した。


涼子は、

「私がいなくなったら結婚して。けれど、愛人と奥さん違う。

 今の愛人を後妻にむかえないで。」と。



第六章 人間性が試されるとき

   (→ 愛人 小倉さゆり)

世界が涼子を中心に廻りはじめたはじめた主人公。

さゆりと別れることを決意する。


別れを告げるために、さゆりに与えていたマンションに向かったが、

引っ越しの済んだ部屋で、さゆりは待っていた。


「私の存在価値は、奥さんがいてのこと。」

妻に無いものを私に求める以上、

妻と愛人は、一対であり、私とも別れようと。


「素直に涼子さんに感謝してるわ。

 涼子さんがあなたの奥さんだったからこそ、

             あなたと会えたんだから。」


さゆりに別れを告げに来たにも関わらず、

この女こそ、後妻にきてもらうべき女だと思う本宮。

愛人を辞めるといいながら、「待っている」と告げるさゆり。



第七章 旅立ちの準備がはじまる

   (→ 親友・フリーライター 下村次郎(故人))

ホスピスの近くに、自分の収去を構えようとする本宮。

そんな折、副社長今泉のクーデターが耳に届く。


妻の死の後は、戦意喪失になると感じていた本宮は、

今泉に、妻の死後、社長職を譲るつもりであると話す。


大塚綾子に相談に行った本宮は、

「奥さんのことを知らずに結婚したのでは?

 生まれ育った土地を見てくるべき」

との言葉から、

妻の故郷 長野県の鬼無里村を訪れることを決める。


そういえば、

「しがらみから逃げてきた。」と話していたことがあったなと。



第八章 しがらみを逃げ出して

   (→ 自分語り)

鬼無里に向かう途中、

柵(しがらみ)という土地があったことを知る。


昔の村の長老的な老人に会った本宮は、

情念の物語を聞く。


~~~

ある裕福な家の息子は、お手伝いの女と恋仲になり、

嫁と子供を置いて、駆け落ちをした。

男(息子)の妻は、5~6歳の娘を残して自殺。

男とお手伝いは心中を図るも、女だけが生き残った。

女の両親も、不始末の責任を取り首をつって死んだ

~~~


鬼女・魔性と呼ばれた、その女こそ、

旧姓 宇多野涼子、本宮の妻であったのだ。



第九章 情念の炎が消えるとき

地味なところが取り柄と思っていた妻とは思えない、

若き日の姿。


「しがらみから逃げ出したくて」

「結婚してくれて、ありがとう」の言葉の意味もわかった。


本宮は、責めるのではなく、

「この私と結婚してくれてありがとう」という礼、

そして、

会いに貪欲だった涼子を、地味で枯れた女と扱った詫びを、

涼子に話すために、真実を知っていることを告げることを決意する。


けれど、それは叶わず、涼子は容態急変で帰らぬ人となる。


妻の死後、社長を退くための準備をしている際に、

涼子が心中した男の娘が、小倉さゆりだと気づく。


そして、涼子が死んだ日に、さゆりが訪れていた疑いも・・・



おわりに 

本宮の死後、息子からという語り口になっている。


本宮は、さゆりと高速道路の中央分離帯に衝突して

亡くなっていた。

本宮の文章を読んだ息子は、それを道連れであると信じて。

■概要

・1994~2004年 連載

・7篇からなる短編連作

・2005年にイメージアルバム(バイオリン高嶋ちさ子ら)


・2016年9月読了


霧笛荘夜話表紙



■あらすじ

港町に佇む、古いアパート霧笛荘。

そこを訪れた歳、纏足の老婆は、「どこの部屋でも好きな部屋を」と、

6つの部屋を案内する。

それぞれの部屋に住んでいた、元の住民のエピソードと共に・・・



 

■感想

安定感のある浅田次郎先生らしく、

そつのなさと、抜群の読みやすさ。

物悲しいけれど、どこかに希望のある世界観も素敵です。


けれど・・・

浅田作品としては、読み終わってから心に残る印象や余韻が、

あまりありませんでした。

読みやすさは抜群ですので、

(浅田先生が大好きだけに、)

失礼ながら、疲れた時の暇つぶしには最適ですが、

私にとって、何かを求めて読む作品ではなかったです。


霧笛荘夜話のグラフ


霧笛荘夜話の表
 





■結末(ネタバレ)

①第一話 港の見える部屋

悲嘆に暮れつつも死にきれず、霧笛荘にたどり着いた

星野千秋(27歳、偽名)。
 ※人生に絶望した理由は明かされない。


霧笛荘で暮らし始め、

ぶっきらぼうではあるが親切な隣人 眉子に助けられて、

ホステスを始めるも、死ぬことを諦めてはいない。


ホステスとしての顧客である、うだつの上がらない老医者に

体を任せる代わりに、睡眠薬を手に入れるが、

「酒を飲んで」「薬を大量に飲みすぎた」ために、

吐き出してしまい、未遂に終わる。


その混乱に乗じて、睡眠薬を手に入れ、

実際に自殺したのは、眉子であった。


なお、うだつの上がらない医者は、

元々眉子の客であり、心配した眉子が千秋に紹介したのであるが、

千秋を心配してのことか、

自分が睡眠薬を手に入れる布石であったのかという疑問を残しつつ・・・


後日談として、千秋は医者と結婚し、子供も生まれ、

幸せに暮らしているとのこと。



②第二話 鏡のある部屋

尾上眉子(本名:吉田よし子)のが霧笛荘に住むまでの物語。

両家の市場として、見合い結婚、2人の子供に恵まれたよし子。

生まれ持った美しさがありながら、上品という名の、

無難で面白みのない化粧や服装に、身を沈めている。


同級生に妬まれぬよう、ことさら地味な服装で行った同窓会で、

一番面白みのない服装、垢抜けないのは自分だと気づく。


ある日、子どもたちと行ったデパートで、

よし子は、華やかな装いへと变化し、そのまま子どもたちを放棄し、

失踪してしまう。



新しい暮らしを始めた霧笛荘。

ホステスとして、少しずつ生活用品を揃えていく中で、

1つだけ、分不相応に買ったのが鏡台だった。

ボタンの図柄を施した赤い鎌倉彫。



そして、隣には、一見粗暴であるが、

人が良すぎるため、常に損をしている半端なヤクザ 鉄がいた。


ホステスとして、何人もの男に抱かれるたび、

吉田よし子ではなく、尾上眉子が確立していく。



そんな日々に、夫からの追手が。

もちろん、連れ戻そうというのではなく、

世間体として悪くない状態で、離婚を求めるもの。


手切れ金を渡される場に、鉄を連れていく眉子に、

鉄夫は、


幸せの青い鳥を探したっきり、帰り道がわからんくなっては、

シャレにならないと告げる。




③第三話 朝日のあたる部屋

人がよく中途半端なヤクザもの 佐藤鉄夫の話。


誠実ではあるが、頭の回転が早くなく、

心の底からは、人を疑えない鉄夫は、

兄貴分「武兄」に騙されて、殺人罪で服役までしても、

その兄貴を慕っている。


霧笛荘の上階に住む、バイトをしながらデビューを目指す、

四郎が、コンサートのチケットを売れずにいると、

見栄を張って、分不相応に購入してしまうような

男気のある一面もある。



危険なシャブ・覚醒剤の運び屋の仕事を、

武兄から頼まれるものの、さすがに断わった鉄夫。


けれど、

実は、割の良い仕事が入ったという四郎が、

運び屋を引き受けてしまったことをを知る。


結局、四郎の代わりに捕まってしまい、

服役する鉄夫。


ただ、組織内で、順調に出世していた武兄は、

その後、マンションの駐車場で蜂の巣になって死んでいた。




④第四話 瑠璃色の部屋

芽が出ずにバイト三昧のギタリスト 四郎の話し。

札幌のコンクールで入賞し、

ほぼ家出同然で、田舎町から東京に出てきた四郎。


けれど、かつてのバンド仲間は、

東京に出てくるのが目的であったように、

大学に行ったり、婿養子に入ったりと、

一年以上が経ってしまった。


バンド仲間に声をかけようと訪ねてみると、

姉の訃報が。

連絡先が分からなかった四郎には、届かなかったのだ。


姉は、ただの姉ではない。

美しいが足の不自由だった姉は、踏切列車にはねられた。

貧乏な家族の働き手となるはずだった自分の代わりに、

慣れない仕事をし、足が悪くて線路を渡れなかった。


家族にバレないように、家出を手伝ってくれた姉。

「はんぱで帰ってくるのが一番困る」と言ってくれた姉。



四郎は、美しい姉に、初恋のような思いをいだき、

また、姉も、四郎に、弟以外の感情を持っていたフシがある。

札幌のコンクールの際には、帰ることができず、

二人でラブホテルに泊まったこともある。

それ以上には進まずも、抱き合い、キスをして眠った二人。


そして、

「彼女ができていない」という四郎のために、

姉は、クリスマスには、東京で四郎と過ごす予定だった。

飛行機のチケットを見た家族は、どう思ったのだろう・・・




全てが崩れそうになる四郎に、

「クリスマス・イブは、二人で姉の供養をしよう。」

と、「二階のオナベ」カオルは、男の約束をしてくれる。


イブの日、待ち合わせ場所に現れたカオルは、

いつもの男の姿ではなく、

姉にそっくりな洋服の美しい姿。


姉を思いキスする四郎に、

「男のキスも悪くないね」というカオル。



その後、四郎は大スターになるが、

それもカオルがいたからと、老婆は告げていた。




⑤第五話 花の咲く部屋

花子がカオルになるまでの物語。


地方から就職し、造花工場で働く花子。

ギャンブル好きの兄が、花子の給料さえも前借りしていく。

そんな兄も、父の借金を返済してきた過去もあったのに。


ただし、それには秘密があった。

花子は工場社長の愛人で、兄にそれを相談した途端、

兄は、社長をゆすりだした。


給料を前借りしていても、「お手当」は、

花子に出ていると思っていたのである。


そんな自分を不幸とも思わない花子は、

自分を、人間ではなく「花ではないか」と感じている。



ある日、そんな父に、自分が月に1万円の仕送りをしていることを

打ち明けた途端、兄の態度が変わった。


兄は、

そんな花子の「馬鹿」で不器用な生き方を母に重ねて。



そして、

花子の兄は、工場に行って、社長を殺そうとする。

すんでのところで、社長が殺されずにすんだのは、

小川という花子に思いを寄せていた

他の会社の営業の男のおかげだった。


社長とのことを知りながら、

花子を連れ帰り、「一緒に暮らそう」という小川。


ありがたいと思いつつ、

「人間ではなく花」である花子は、

夜の街に走り出してしまう。



目指したのは、「ルピナス」というレズバー。

銭湯であった中野みのるという人が、開店させたお店だ。

「あたしにそんな趣味はない」「女って損だと思わない」。

といいながら、オナベとして生きるみのるの手を、花子はとったのだった。



老婆はいう、

「カオルはいい男だった。 ・・・

 みんながカオルを愛してたのに、カオルは誰も愛しちゃいなかった」


そんなカオルはドックに浮かんで、すでにいない。

花を育てるのがことさら得意だったカオルのために、

棺は花で埋められた。

「格好のいい生き方をするやつはいくらだっているが、

  死に様まで格好のいい男なんて、そうはいるもんじゃない」




⑥第六話 マドロスの部屋

園部幸吉は、終戦の前日、特攻隊員として出撃命令を得て、

「検閲されない」という言葉のに従い、

恩師の娘 澄子に手紙を書く。


「今迄 貴女は僕の生きる支であり

  そして今は 潔く死する支です

 有難うのほかに 遺す言葉はありません」


けれど、

それは、時代の空気と死する前の覚悟に

酔った言葉であり、

言葉ほど、澄子のことを愛してないことは、自分でもわかっていた。


澄子とは、そこまで愛を語るほどの思い出もなかったのだから。



死を意味する出撃命令を待つという、

長い長い拷問のような時間から、

やっと、開放されるという不思議な感覚。


けれど、それは、翌日の終戦により、また破られた。



この弛緩なき緊張の寄る辺をどうすればいいのか。

命を絶ちたいという願いを持つものも少なくなかったが、

上官の「他のものは死なぬように」との自決により、

それも果たせぬまま。



復帰まで、1年ほどの歳月を要し、

その後、澄子に会いにゆくと、幸吉の死の手紙が届いており、

澄子は、自決していた。


幸吉死すとの知らせの後を追って。

けれど、澄子すらも、時代と自分に酔っていたことを、

幸吉は感じていた。



軍服を、船乗りのマドロスに変えて、

霧笛荘の住民となった。




そして、カオルの死に際して、

棺を独りで運んでいったのは、この男だった。



カオルへ向けて、

「人生は運不運じゃありませんよ。

     それを言うなら幸か不幸でしょう。


産んだの不運だのは、力の至らなかった人間が

    口にするセリフなんだ。

だから力を出し惜しむときも、

           人はそれを言う。


・・・


忘れることができぬのなら、

  せめてありもせぬ嘘を作り上げて、

    もう一つの人生に身を置くほかはあるまい。」




⑦第七話 ぬくもりの部屋

この短編連作で唯一の、住人以外の主人公 山崎茂彦の話。

銀行から好条件で、不動産会社に引き抜かれた山崎。


社員に厳しく、成績がでない社員を罵倒する社長も、

山崎には甘い。


けれど、山崎は、霧笛荘の立ち退きに力を入れられず、

結果を待ったく出せずにいた。




■概要

・2013年 第149回直木三十五賞受賞

・ホテルローヤルを舞台とした短編連作(7編)

・作者の父が、同名のラブホテルを釧路に開業していた


・2015年 読了


ホテルローヤル表紙





■あらすじ

釧路の湿地帯に佇むラブホテル「ホテルローヤル」。

このホテルを舞台とした物語であり、

廃業後、廃業時、営業時、廃業のきっかけとなった出来事と、

様々な時間軸の短編連作。




■感想

駄作なわけではなく、完全に、好みの問題です!

この作品は、非日常、

そして、場所の特性上、純真な恋愛だけではなく、

行為の際の熱量と、事後の虚しい静寂を伴うこともある

ラブホテルという空間を舞台にしたストーリーが、

少し突き放した視点で、淡々と綴られているもの。


私は、現代文学については、

メリハリ、起伏、感動が好きなタイプなので、

こういった世界観を楽しむ作品は、

あまり好みではなくて・・・


同じ北海道の作家さんなのに、良さがわからなくて申し訳ありません。

ただ、直木賞受賞は納得!と思える

透明感のある倦怠感と、リアリティのある生々しさが、

不思議と同居した、独自の世界を作り出している作品でした。

  



ホテルローヤルのグラフ

 
ホテルローヤルの表

             



■結末(ネタバレ)

①シャッターチャンス

アイスホッケーで輝いていた同級生は、

怪我による挫折で「やりがいがない」と仕事を辞める

男になっていた。


そんな交際相手から、

プラーベートショットとして投稿するため、

廃墟(ラブホテル)でヌードを撮影される主人公 美幸。


やっと見つけた目標という恋人との気持ちのズレと、

負い目をおったように語られる「結婚」をほのめかす言葉が、

虚しくかつ、主人公を怯えさせる言葉として語られる。



②本日開店

養護施設を出て、寺に嫁いだ主人公 幹子。

何の取り柄もない自分をもらってくれた

可も不可もない夫と寺自体に、

恩返しをしなくてはという思いが強い。


強要されたわけではないが、

檀家からの寄進の代わりに、多数の男に、

体を差し出している。


檀家の代替わりである男(前檀家の息子)に抱かれたときに

快楽を感じてしまうが、

その分のお布施だけは、夫は御本尊から下ろすことはなかった。


しかし、その男は、

今後、自分ではなく接待として幹子を使いたいという。


「本日開店」は、直接には、

ホテルローヤルの創業者(前社長)が、

死ぬ間際に言い残した言葉だが、幹子自身の状況でもある。



③えっち屋

ホテルローヤルを廃業にした雅代。

父親である田中大吉が創業者だが、

父と母は、ホテルの開業を巡って不仲となってしまう。


アダルトグッズを売る朴訥な宮川が、

自分は使ったことがないという言葉を聞き、


自分も、性を扱う業種に従事しながら、

10年以上も行為をしていないことに気づき、

「宮川さん、これ使って遊ぼう」と。



④バブルバス


⑤せんせぇ

⑥星を見ていた

⑦ギフト

■概要

・初出:『小説新潮』2004年9月~2005年5月

・2007年映画化(妻夫木聡、夏木マリ、佐々木蔵之介 他)

・2007年舞台化(中村橋之助、鈴木杏、藤谷美紀 他)


・2016年7月読了





■あらすじ

時は幕末。

別所家、徳川家康の影武者を務めたほどの由緒ある家柄ながらも、

時代的な厳しさもあり、今は、金銭的にも余裕がない暮らしを送っている。


次男の彦次郎は、文武に優れ、良家の一人娘の婿養子となるが、

子供が生まれると、些細なミスを責められ、姑に追い出されてしまう。

妻子とも離れ離れ、ほぼ失業状態で、兄夫婦の元に「出戻って」いる。



家の近くにあった「三巡神社」に手を合わせたところ、

それは、不幸の神様たちを呼び寄せる神社だった!


・福々しい(大黒様のような)貧乏神

・相撲取りのような疫病神

・愛らしい幼女の姿をした死神


たちとの戦い?がコメディータッチで。


憑神のグラフ

憑神の表




■感想
最初は、江戸時代末期の貧困武士の空虚な寂しさがを描きつつも、

自分の厄災を他者に渡したりと、コメディータッチを楽しんでいたのですが。


徳川家康の時に身代わりを努め、有難くも職に殉じた先祖への誇りの部分では、

真摯に引き込む文章が語られていましたが、これが伏線になっているとは、

思いもせず・・・


最後は、さすがの浅田文学。

コメディー一転、まさかの武士の美学と感動のお話しに。

最後は、やはり泣かされました!





■結末(ネタバレ)

神通力を持つ元部下の助けもあり、

災いを他者に転じることができた彦次郎。


 ・貧乏神 → 元姑

    ・・・自宅が家事に


 ・疫病神 → 無能な兄

    ・・・お役目が彦次郎となり周囲も安心


けれど、元が誠実なため、それを気に病み、

また、死神は、他者に転じる決断ができない。



そして、徳川慶喜が大政奉還を行った後、

最後の将軍は、大阪から江戸に敵前逃亡、逃げ帰った。



それに不満を持ち、

決起に立ち上がるという名目で脱走(脱藩)する武士たちが、


結局、大きな大志を持っておらず、

新しい世のプラスにならないと悟った彦次郎。



彼らを後に引けなくするため、

徳川家康の影武者を努め、死をも厭わず出陣をする。



それは、

取り付いた人を不幸にするという神に対し、

一人の小さな幸不幸ではなく、

歴史の中での自らの意義という意味を果たすということで、

人間が勝利した戦だった。