9: 坊主めくり

 


「あ~♪

 そうそう、そうだぞぉ♪

 別の面白い遊びがあるんだぞぉ~?」

ぽむ、とのどかが手を叩いて、

「ひなたちゃん。絵札を貸してくれるかなぁ?

 こっちの字札のほうは使わないんだぁ」

「は、はい」

ひなたから受け取った絵札から

なにやら三枚を選んで取り出すと、

ひなたたちの前に並べてみせた。

 

「いいかなぁ?

 ひなたちゃん、小梅ちゃん、桜子ちゃん」

コクコクうなずく三人に、

絵札――詠み人の絵と句の書かれた札表を指さして、

「これが男の人で、

 こっちは女の人でぇ、それでこれがぁ――」

「お坊さん? お坊さん?」

「そうだぞぉ、小梅ちゃん♪

 その三種類の札を覚えておくんだぞぉ~♪」

頭をなでなでしてニッコリ笑うと、

ひなたたちの顔を見渡すのどか。

 

「この絵札をよぉくきったらぁ、

 こうやって伏せて置いてぇ。

 これを『山』って言うんだけどぉ、

 この上から順番に一枚づつ引いていって、

 山が無くなった時に

 一番札を持ってる人が勝ち、って

 そういう遊びなんだぞぉ~♪」

「「「ふんふん」」」

真剣な顔でうなずくひなたたちを、

紫音が温かい目で見守っていたり。

 

「でねぇ。

 この男の人を引いた場合は、

 自分の札で持っていて良くってぇ。

 こっちの女の人――お姫さまを引いた時はぁ、

 もう一回引いていいんだぞぉ~♪」

「すっごい、すごい!」

「うふふ。だからお姫様なんですね」

「そうそう♪」

感心してうなずくひなたたちを見て、

のどかも紫音も笑顔でうなずいた。

 

「でもねぇ?

 こっちのお坊さんの札を引いた場合はぁ~」

「「「引いた場合は……??」」」

オウム返しに尋ねて顔を近づけるひなたたちに、

ぎゅ~っと眉を寄せたのどかも

人差し指を立てて近づけて、

 

「持ってる札を、

 ぜぇ~んぶ、

 取り上げられちゃうんだぞぉ~!!」

 

「「「えぇっ⁉ ひどい~っ!」」」

口々にぶーぶー文句を言うひなたたちを、

紫音がクスクス笑いながら、

「フフフ、そういうルールなのよ。

 だからね、これは

『坊主めくり』って名前の遊びなのよ」

 

「じゃあ、じゃあ!

 取り上げられちゃった札はどうなるの、どうなるの?」

「うん~。

 その場合はねぇ、このぉ――」

頬を膨らませた小梅に、

女性の札を手に取って見せて、

「――お姫さまの札を次に引いた人が

 ぜぇ~んぶ貰えるんだぞぉ~♪

 どうかなぁ、これでわかったかなぁ??」

片目をつむるのどか。

 

「お坊さんを引くのは怖いけれど、

 お姫様を引くと一発逆転のチャンスなのね……」

胸に手をあてた桜子が少し硬い笑顔を浮かべたが、

 

「……ドキドキするけど、とっても面白そうだわ!」

すぐに尻尾をぱたぱた振って、

「それなら私たちにも大丈夫そうね。

 ね、小梅」

「うんうん!

 ひなちゃん、おねえちゃん、やろう、やろう!!」

正座をしたままピョンピョン飛び跳ねる小梅に、

ひなたも笑顔で大きくうなずいて手を上げた。

 

「のどかさん! 夜の君!

 私もやってみたいです!」

「じゃ、決まりね」

「うふふ~♪ 楽しそうだぞぉ~♪」

顔を見合わせてニッコリと微笑み合う紫音とのどかだった。

 

 

 

「――んあ?

 これは一体何が始まるズラ??」

そこにちょうど梅園を一周してきた

ナーニィと智が戻ってきて、事情を説明すると――。

 

 

「――ああ、なるほど。

 『坊主めくり』かい。

 うん、 確かにこれならルールも簡単だし、

 みんなで楽しめそうだ。

 ――ナーニィ。君は知っているのかい?」

HAーHHAー!

 もっちろんズラ! サトイモ!」

智の問いに大きくうなずくと、

ナーニィは腰に手を当てて胸を張った。

 

 

 

 

「それじゃいっちょ

『坊主狩り』で、

 シオとノウカと対決ズラぁ!!」

「お、おい、ナーニィ。

 坊主狩りはちょっと物騒だぞ?」

「細かいことは気にすんでねぇズラ、サトイモ。

 なら、『ハゲめくり』け?」

「いやいやいや!

 それもちょっと問題があるぞ!」

 

息の乱れもすぐに収まって、
しかも体育会系なだけあって見事に息の合った

ボケとツッコミを見せる智とナーニィに、

ひなたたちは笑い出してしまったりして――。