私は35年来のフィギュアスケートファン(特に女子シングル)であるが、昔と比べてこのスポースの認知度がアップしてファンも増えたようである。
フィギュアスケートは、演技よりも人物に焦点があてられる傾向があり、個人のコアなファンが多い印象がある。
また、フィギュアの芸能界化が進められたように感じているが、おそらく、フジテレビが中継をするようになった影響もあるのであろう。またちょうど浅田真央が出てきたタイミングで、アイドル扱いの傾向が強まった。
昨年の全日本では坂本花織が推されていたが、3,4年前の状況を知っている者にとっては、ちょっと複雑な気分である。
と言うのも、ロシアウクライナ戦争前まではロシアが圧倒的であったからで、坂本選手は入賞レベルに過ぎなかったからである。確かに演技の円熟度は増したが、技の難度が上がった訳ではなく、高難度のジャンプを飛ぶロシア選手には、勝てるチャンスはなかった。
ロシアのやり方は、体型の変わらない若いうちに4回転を跳ぶように訓練し、そういうスケーターを量産する体制をとったことである。飛べなくなれば切り捨て、常に3,4人そろえておけば表彰台を独占できる。
スケートの点数は、ジャンプに偏重していて、難度の高いジャンプを持っている選手が有利である。
坂本選手のようにジャンプの質がよくても、限界があるのである。
ロシア選手が、戦争の影響で国際大会に出られなくなったので、坂本選手がトップに押し出されたのである。
紀平梨花選手にも触れておこう。
紀平選手は、唯一ロシア選手に対抗できるスケーターとして期待されていた。トリプルアクセルを跳べる強みがあったが、やはり4回転を連発するロシア選手とは差があった。
そのため、4回転にもチャレンジしたが、結果として怪我を誘発したのだと思う。
また、コロナで大会が中止になったことも気の毒であった。
現在は、怪我の治療のため公式の大会には出場していないが、そのまま引退となってしまうのは心残りであるので、大会に戻ってきて笑顔を見せて欲しい。
ところで、私のフィギュアファン歴は、伊藤みどりのカルガリーオリンピックの演技から始まる。
私は、この演技を何十回見ただろうか。
フィギュアスケートをスポーツに変えたのは伊藤みどりであり、その流れは今日まで続いている。
日本では、今も昔も伊藤みどりは過小評価されている。
私が見た女子フィギュアスケートのベストワン演技は、ワリエアのボレロ(2021グランプリシリーズ、ロシア大会)である。
全てに完璧であったが、まさか、この後北京オリンピックでドーピング問題が発生するとは思わなかった。
ボレロの演技には休む部分がほとんどない。これをこなすには相当な体力が必要であり、ドーピングの効果があったのかも知れない。年齢のこともあり、ワリエワは同じ演技はもうできないであろう。
ロシアのように、寿命の短い4回転マシーンを作るシステムは、人道の観点で否定されるようになった。
その点では、日本の選手も活躍するチャンスも出てきたが、高難度ジャンプに挑戦する人も出てきて欲しい。スポーツであるのだから。
フィギュアスケートについては、私は30年分の話ができるが、切りがないので最近の話題だけにとどめておく。