私は田舎出身であるが、雑誌での田舎暮らし企画やテレビでの田舎紹介などを見ると、一面だけを見ていて、良い面だけを強調しすぎているように常々感じている。

 かつて、TV東京で田舎に泊まろうという番組があった。芸能人が田舎の家に一晩泊めてもらうという企画であり、中には親切な人がいて、泊めてあげて食事まで出したりしていた。

 私の田舎のことを考えると、そんな親切なことをするような人はほぼいない。

 

 田舎は、物価も住居費も安く、家庭菜園を楽しみながら生活できる、と田舎暮らしの本に紹介されたりするが、それは周りに住民がいない場合の話である。田舎地区には様々なしきたりが存在し、神社や鎮守の森の掃除当番、草抜き、ゴミ捨て場の管理、祭りの準備、町内会の役員など多くの仕事がある。

 当然プライバシーはなく、誰が何々をしたとか、住民間で話されるのは、そういう話題がほとんどである。

 

 従って、そのような世界で都会の人が生活できるはずがなく、多くは人間関係の煩わしさで、田舎暮らしを辞めていく。田舎から都会に出ていった若者が帰らないのは、人間関係の希薄さゆえに、生活を気兼ねなく送れるためでる。

 田舎だからといって、お人好しが住んでいるわけではない。ゆめゆめ、勘違いなさらぬように。

 

 ところで、田舎を紹介するテレビでは、80歳を超える老人が出てくると、若いとか元気とか、MCやゲストがコメントするが、止めてもらいたいと思うことが多い。

 また、NHKのど自慢では、老人が出てきて歌うのを、司会者が仮面のようなえびす顔で会話をふったり、ゲストが褒めそやしたりすることがあるが、(今は見ていないので分からないが)心にもないことをと思って、いやな気分になる。

 

 私も老人の仲間入りをしているが、無理に親切にする必要もないし、労ってくれとも思わない。なるべく人に迷惑をかけないようにするので、余り干渉しないでもらいたいなと思っている。

 お金で買える人間関係が気楽かなと思っている。