最愛なる君へ 最初で最後の告白 -3ページ目

第7の手紙

拝啓、親愛なる君へ

今日はこっちは冷たい雨が降り続いてるよ。
次の日曜日まで天気が安定しないんだってさ。
さすがに自転車出勤にはちょっと辛いかな?

昨日(正確には一昨日)、初めて心療内科の門を叩いたよ。
正直、怖かった。
どんなこと言われるのか、とか、どんな診療なのか、とか、薬出されたらどうしよう、とか。
耳鼻咽喉科なら鼻や喉、内科なら臓物一般とか名前で容易に理解できる科ではないし、なまじ薬の知識があるから脳全体に影響を与えるであろう薬を飲むのにも抵抗があるんだ。


受けての感想は、正直胡散臭い。

聞き始めが家族のことから。
しかも、俺が喋る度に突っ込みを入れるから核心の部分へ行く前に診察が終わってしまった。
終始急いでいる感が否めない。
『もう次があるから早くしてくれ』とも言われてしまったよ。
それと、簡易な言動のみで最小量とはいえ薬が処方されたことも不安が残る。
そして、君と俺の関係などを『恋人』『失恋』などと言い切るんだ。
そんな下世話な言葉で括られたくなかった。
『失恋ごときで来る軟弱な奴だ』とレッテルを貼られたみたいだ。
患者に取るべき態度か甚だ疑問だ。

本当にこの医院で治せるのか不安がよぎるよ。
でも、今の交通事情では俺にはここにしか通えない。
君に会える日が雲を掴むようにあやふやなことも俺の心を締め付ける。
君に再会するには必ず治さなくてはならないのに。
その日が不完全な俺を晒す日になりそうで怖い。


ごめん、今は焦りと不安だけが渦巻いてる。
ただ、処方された薬は未だに飲めない。
いきなり暗礁に乗り上げたみたいだ。
君には、滑稽に見えるかな?
それとも肩を叩いて同情してくれるかな?


いつになったら強くなれるのかな。
君の前に確実に立てるまでに。

第6の手紙

拝啓、親愛なる君へ

昨日、カーテン閉めたまま手紙書いてたせいでとんでもないことに気が付いたよ。
今日はカーテン越しでもいい天気なのが分かるけど、昨日、雨風共に激しすぎたんだね…
外に出るまで気が付かなかったよ。
ま、何とか仕事場には行けたよ。
だけど…


君に謝らなくちゃならない。
君に謝らなきゃいけない。

昨日、ふと通り過ぎた女性の手に乗ってたものに目が行ってしまった。

最後に君が手にしてた携帯と全く同じ機種だった。

それを見た瞬間、全身の血が一気になくなったような気がした。
君に会えない苛立ちと、君に繋がらない恐怖と、君が愛おしくて仕方がない感情が一気に押し寄せてしまった。
仕事中なのに涙が止まらない。
そして、俺の脳裏に最悪な理論が頭をもたげた。


『最後に君に『一緒に死のう』と言えたら良かったのかな?』



と。
君は自分を守る為に再構築の道を選んだ。
俺も遅ればせながら再構築の道を歩もうとした矢先だった。

一緒にピリオドを打つ。
その目には俺しか映らない。
一瞬でも君の全てを俺に染めれると。


そんな狂気が駆け巡った。


本当にごめん。
君に謝っても謝りきれない。
君の未来を、君の幸せを誰よりも望んでいるのに。
知人に『君のこと、よろしく頼みます』と頭を下げたはずなのに。

俺は一瞬でも君の不幸を願ってしまった。
俺のせいで不幸にさせたくないとあんなに望んでいたはずなのに。

望んではいけない語句が何故よぎってしまったのだろうか。



俺は泣いた。
思い切り君の名を叫んで。
君を守れなかった懺悔と。
君の不幸を一瞬でも願ってしまった懺悔と。
俺のあまりの浅ましさに。

そして、脳裏に浮かべた君の死に顔があまりに綺麗だったことにも。



今日、心療内科に行ってくる。
どんな診察なのか全く分からない。
でも、一瞬でも不幸を望んだ今の俺に君に会う資格はないのは理解できる。

一歩でも前に進まなければ。
君にまた出会う日の為に。

第4の手紙

拝啓、親愛なる君へ

今日は天気予報が外れていい天気だよ。
君の上の空も晴れてるといいな。

昨日、俺の知り合い二人に俺の病気のこと、療養することを告白したよ。
よく一緒に劇観に行ったりしてた奴らだよ。
二人とも元気そうだったよ。
一人は何も聞かずに頷いてもらえた。
もう一人からはアドバイスを受けたよ。
そいつらには君の現状は何一つ言ってないから安心してくれ。
君の為でもあるし、俺の為でもある。
君をこれ以上俺のせいで傷つけたくないんだ。
君が傷を負う姿は想像することも嫌だ。

やっぱり君にはどんな状況でも甘くしか出れない自分がいる。
それでも渦巻く感情が俺を俺を押し続ける。

堂々巡りだな、これは。
やっぱりちゃんと切らないと再構築は無理だな。
明日、長岡の心療内科に初診を受けに行くよ。
やっぱ、怖いな。
でも、ちゃんと前に進まないと。
君だってその門をくぐった時、やっぱり緊張したかい?怖かったかい?
俺は本当ならずっと前に通院すべきだったんだ。
警告を何回も受けていたのに。
君を失ってから立ち上がるのは本末転倒なのはよく分かってる。
でも、もう一度でいい、君に会いたいんだ。
全てが精算されてからまた会いたい。
今度こそ君の力になりたい。
今度こそ本当の親友になろう。
その為には一刻も早く治さなくちゃならない。
必ず君に追いつく。
だから一緒に頑張ろう。