「早くに生んでしまった。私のせいなんだよ」

「おばあちゃん。じゃなかった お母さん」

「あはっはっは おばあちゃんでいいよ!いきなりだったからねえ」

「お母さん、お母さんが悪いなんて事、ありませんよ。」

「聡・・」

聡は私が見えているって言ってた

この二人が、本当に私の家族なの?

「めい姉さん。聴いてくれる?この曲はめい姉さんの為に作ったんだ」


聡はまた、ピアノの前に座るとその白くて長い指で、ピアノを弾き始めた。

「なんて、優しい曲なんだろうね」

おばあちゃんは香りのイイコーヒーを淹れながら呟いた

聞いているうちに私は何だか眠くなってしまって、いつの間にか本当に眠っていた

目が覚めて辺りを見回した。
部屋の中はもう暗くなっていて、誰もいなかった。

ピアノは?

あの真っ白い大きなピアノが無い

おばあちゃんがいたキッチンも無い

此処は何処?


フワフワと身体が揺れる
「気持ちいい。温かいあの時と同じだ!もう少し眠っていよう。きっと、夢見てるんだ。」

メイはまた眠っていたの

温かな水の中をフワフワと浮かびながら

「メイ メイ姉さん。大変だよ。」

目を開けると、赤ちゃんの聡がいた

「お母さんが大変なんだ。ホラッ姉さんの羊水が減って来てる。早く此処から出なきゃ」

「聡、メイ何だかもう力が出ない。聡先に行って。」

「何言ってるの!一緒に行こうよ!」

「いいんだって、私はこのまま此処で眠ってるんだから」

「だって、一緒にじゃないと、僕だって行けないよ」

「聡だけ行ってったら!」

「メイ姉さん。忘れたの?僕たちは一心同体だって事」

「何それ?凄く眠いの、ほっといて・・。」

「姉さん、僕と姉さんは背中でくっついているんだよ!」

えっ!!

そう言えば背中に聡の体温を感じている。

声だって 後ろから聞こえていた。双子って言ったから同じお腹の中にいるのは、当たり前だと思ってたけど、背中がくっついてたの?

「ホラッ急ごう、お母さんも苦しんでるんだよ!!」

「分かった、分かったから引っ張らないで!聡強いよ。痛いって!!」

私ったら、ぐっと握っていた手を開いて、聡を背中から殴ったりして抵抗してた。

「痛い!!うわああん痛いよ~目が痛い!!」

突然の悲鳴

赤ちゃんの指にだって爪がはえてるんだね

私の指の爪で聡の目を傷つけていたんだ

「聡!!ごめんね!!聡大丈夫?早く行こうね、早くでよう!」

目の前が急に暗くなった聡を背中にくっつけて、私は出口を探してた。

心臓が爆発しそうだった。

「どうしよ。どうしよう。聡。聡。」

背中の聡は黙りこくっていた。

その時、急に眩しい光が天井から降ってきた

「光だ!あそこから出れるんだ!聡!もうすぐだよ!ホラッ光が見えてるよ!」

聡の返事は無かった

「聡?どうして何にも言わないの?」
心臓がまたドックンドックン耳にこだました

「メイ姉さん。覚えてて。もし。この目が見えなくなっても、僕はメイ姉さんが大好きだからね。

ずっと、一緒に居られて嬉しかったよ。メイ姉さん幸せになってね」

「何言ってるの?聡?そんな、お別れみたいな事言わないでよ!!嫌だよ?ずっとずっと一緒にいるんだよね?」

眩しい光の中で、私と聡は先生の手によって取りだされた。

「やはり此処で繋がっていたのか。直ぐに切り離そう!」

「先生!二人とも、二人とも無事なんですよね?」

若い女の人。お母さんの声

看護師さんが、お母さんの目に見えない様にと、私と聡は、直ぐに別の部屋に連れて行かれた

そこには、別のお医者さんが待っていた。

背中と背中。皮膚だけだと軽い手術で済むんだ!良かった!

「片方の赤ちゃんの心音が弱っています」

「そんな・・そうかとにかくマッサージも並行してするんだ。」

看護師さんと若い先生の会話

「聡?心臓動いてないの?聡!返事してよ!聡!!」 

沢山の人がざわざわと動いていた。

「おんぎゃ~おんぎゃ~~」
「えっ!聡!!良かった!大きな声だね。もう大丈夫!!」

「先生、心拍戻りません。弱まっています」

看護師さんったら、今、大きな声で泣いたでしょ! 

ん?そっかあ 私なんだ。私の方が弱ってるんだ。そいう言えば苦しい。息が出来ないかも

でも、聡が無事で良かったなあ。聡、お母さんをお願いね!お姉ちゃんのせいで聡の目が見えなくなったらどうしよう・・本当にごめんね。もし、無事に生きてたら、お姉ちゃん聡に目をあげるよ

はあ また眠たくなってきた 聡、お姉ちゃん眠るね。


ここまで リアルな夢って

あり?

私、今自分が死ぬところ見たんだね
そうだったんだ こんな風だったんだね

聡に目ってあげられなかったね ごめんね

シャー
カーテンが開けられて、外の光が眩しかった

白いピアノもちゃんとあった。キッチンではおばあちゃんが朝ごはんの用意をしていた。

「おはよう メイ姉さん!」

聡が声をかけた

「聡、ごめん!!全部私のせいだったんだ。聡の目が見えなくなったのって・・・」

「姉さん、まだ気にしていたの?大丈夫だって言ったでしょう。今夜、僕のコンサートがあるんだ。もちろん 来てくれるよね!」

「へえ 聡ってコンサートするんだ!凄いじゃん!」

「結構売れっ子なんだよ!こうなれたのだって、姉さんのお陰なんだから」

「はい。出来たよ。お食べ」

テーブルには美味しそうなご飯とおかずが並んでいた。

「今朝は張り切ったんだね!」

三人で座って食べる朝ご飯

天使ってご飯食べるのかって!!

時と場合によってはね!
念じて~~物体を動かす!!
ヨシヨシ。

今朝はン~何だかいけそうだよ!
「いただきます!!美味しそう!アッチ!」

ヤバイ、猫舌になってる!

「ゆっくり お食べよ。逃げないからね」

おばあちゃんが笑った。聡もお笑った。私も笑ったんだ。

「おや めいこ、昨日よりもっと羽が広がってるよ!」

「ホントに!!」

あと少しで本当に羽が開いて飛べそうだった

「良かったね。メイ姉さん」

「ありがとう!!」

もしかして、落ちこぼれ天使じゃなくなる?

そうなったら、魔法も使えて・・聡の目も治せるかな?

「ホーホケキョ~~ピィピピピ ホ~~ホケキョ」

「春だねホトトギスが庭の梅の木に来てるよ!」

「おばあちゃん!今日って何日?」

「今日は3月30日だよ。僕のコンサートの日だからね」

どうしてだろう 何時の間にこんなに日が過ぎたんだろう。

人間と一緒にいるから?一日が凄く早く感じる。ヤバイ あと1日で3月って終わりじゃん!

どっちが早いか!羽が広がるのが早いか、それともメイが誰かの役に立つのが早いか!! 

「メイ姉さん!味噌汁零れてるよ!」
「あああ しまった!」
集中が切れちゃった

お椀は床に転がっていた。

うう痛い!チクッって今した!  

変だ 変だぞ 胸が痛い?
背中の羽をバタバタさせてみた。先っちょがまだくっついている。

急がなきゃ  消えてしまう 聡の目をどうにかしたい・・・。

おばあちゃんは、メイの落としたお椀を拾って、汚れた床を雑巾で拭いていた。

「めいこ お前此処にずっといれないのかい?お前さんの姿が少しばかり薄くなってきてるんだ」