以前に見た、初期流産の胎曩の画像そのもので
レバー状のものとは違い、弾力性があって
組織もしっかりとしていた。

ああ、そうか
妊娠していたんだ、

動揺した。

モーさんと、私の子が、居たんだ。
医学的には子どもではなくて、胎児と呼ばれる
前の段階かもしれない。
たぶん、週数的にもうすぐで心拍が確認できるか
できないかの胎芽、なのかな。

居たんだ!

流産よりも、嬉しさが先にきた。
出来る筈ないと思っていたから、嬉しさが勝り
泣けてきた。


漸くここで気付く愚か者は、あろうことか、
ペーパーの上で見ていた胎曩を落としてしまい
センサーが反応して、そのまま流れてしまった。
私は元来、こういう粗忽が目立つ。


いやだ、待って。

待って。


水流が待ってくれるはずもなく。
胎児?胎芽?を包んでいた塊は消えてしまった。

手元に残ったとして何が出来るかと問われたら
なにも、ないのだけれど。

ないんのだけれど。


うん、ない。



気持ちがあやふやなまま、モーさんに、連絡。

そっかぁ……。

仕事中ということもあり、さらっと返ってくる。
生理周期なども詳しくは分からないモーさんに
文面で伝えても無理だと、帰宅を待った。

帰宅したモーさんは、チーコロの手前もあり
話に触れず、ぎゅーと、いつも通りハグ。


考える。

妊娠継続出来なかったのは、考えるまでもなく
きっと、染色体異常や私の劣化した卵子の問題。
加齢のせいだ。

妊娠に気付くのが早くても、多分流産は変わらず
こんな初期ではどうしようもない。
気付く気づかないはあれど、大勢の人が経験する
ごく、当たり前の初期流産だろう。

わかっている。頭では。
カウントされない妊娠だとも、分かっている。

だけど、嬉しかったし、悲しかった。


チーコロが寝た後、二人でぽつぽつと話す。
居たんだね。
あのときも、あのときも、実は三人家族じゃなく
四人家族だったんだね、と。

顔を見に来てくれたのかな、とモーさんが言う。

泣けて、泣けて、仕方なかった。
嬉しくて、悲しくて、寂しくて、嬉しくて。
なんでこんなに泣いているのか、自分自身でも
よく理解できなかった。

モーさん。
私はここ(初期流産)が、限界かもしれないよ。

そう言ったのだけど、モーさんはうんうんと
うなずくだけで、責めなかった。

来てくれたねぇ、
うん、来てくれたね


翌日、何も知らないチーコロを連れて
花を買いに行った。
くまのガーデンピックがついた、ピンクの
かわいい花を。


玄関のシューズボックスの上に置いていたら
モーさんが、出勤や出掛ける度に、
ちょいちょいと、くまを指先で撫でている。

この人と結婚して良かったな、と思う。
毎日の何気ない仕草に愛しさが募る。


顔を見に来てくれただけでも、嬉しかったよ。

ありがとう。