あまりにおじぃが気の毒だ。

「ああ、見た?酷いもんやって……」

うん、と頷き、モーさんと二人で黙る。

「……折角、顔色良くなってきてたのに。
    ママの料理食べ始めて、全然違う」

そっかぁ……。
私は前のおじぃが分からないから。
それは嬉しいけれど、手放しで喜べない。

多目に作って、作りすぎたーとでも言って
おじぃの好きなもの、渡そうかな。

「うーーん、……受けとるかなぁ」

モーさんの考えは当たった。
数日後おばぁにどうぞ、とすすめてみたら
電光石火の速さで断られた。

「ええで、ええで、ええで!
   わたしらで、ちゃんとやるから!
   お父さんも私の料理に慣れてるしな!」

ご本人、顔面蒼白ですけど。

おばぁは張り切って、夕食の支度を始めた。

スーパーのお惣菜。お惣菜。黄色いご飯。
どん!どん!どぉーん!

黄色いのは、三日連続保温してるご飯だ。
私はうちの分だけ、圧力鍋で炊く。

もちろん、お惣菜はパックされたままで
ビニールももれなくついている。
お皿だそうか?と言ってみた。

「ええよ!洗いもの増える!」

あー、そういうことね。
洗いものしたくないから、鍋ごとだったし
今日はパックのままなのね。

「ワシー、きょうは、いらーん」

おじぃが反抗した。
おばぁがカッと目を見開く。

「またあんなこと言うて!
    用意するこっちの身にもなってほしいわ!
    時間かけて用意してるのに……!」

おじぃに聞こえないよう、ぶつぶつぶつぶつ。

用意。時間をかけて。

うーーん、
買い物に行く、ことかしら?

「年寄りの食事は年寄りにしか分からん!
    ママは気にせんでええで!」

スーパーのお惣菜やコンビニ弁当が年寄り用……。
油ぎっとぎと、していますが。

打つ手が、ない。

「わたしらが動けんくなったら頼むな!
    頼りにしてるで!」

高血圧で薬飲んでいる人がですねぇ……
塩分に配慮しない弁当を食べ続ける生活だと
自宅介護では無理じゃないかな?
即入院の事態になるのでは?

若い人でも、毎日コンビニ弁当だと体なんて
すぐにイカれると思うけれど、年寄りだと
新陳代謝が悪いから大丈夫とか?
いや、そんなはずはない。蝕まれている。

老人食の配達業者に頼めば楽かもしれないと
思ってもみたけれど、そういうメニューだと
おばぁが食べるものがない。野菜も無理だし。
好き嫌いも多いし、無駄になるだけだ。

うーん。打つ手が、ない。

おじぃの大反乱を待つしかないかなぁ。
しかし、おじぃは元々食が細い。
触ると骨に直接ふれられる程、痩せている。
少しだけ太ったのになぁ。

「放置しかないって、あの人達は」

モーさんはいう。

いや、だから私には介護がかかってる。
二人の健康は、私達の生活を左右するのだ。
ぴんぴんころり、が一番なのだ。
まぁ、人生そうもいかないけれど。


そういう訳で。
現在も、たまにおじぃの大好物のカレーや
里芋の煮っ転がし等を持っていく程度で
なんの解決策もない。
どうにもならない。

無力である。