怒りで表情筋が痙攣してる私を他所に
調査は進む。
(いつもに増して、お口が悪いですよー)
「日常生活で困ることはありますかー?
トイレなども……」
「ない、ですー」
「ないなぁ!そうやな!」
バカだろ。
ほんっっと、バカだろ、てめえら。
トイレに行ったら一人で拭けないじゃないか。
漏らすから、毎日オムツしてるじゃないか。
結婚前に顔合わせで食事に行った以来
外に出てないじゃないか。(5ヶ月間)
月に一度の通院すら、しんどいからって
サボってるじゃないか。
入院したい、しんどい、訴えるから
支えながら病院にいったじゃないか!
体が痛くて起きられなくて、呻いていたのは
誰だ、よ!!!
お!お!ば!か!や!ろ!う!!!!
何のために私が説明した。申請に行った。
事細かに伝えたじゃないか。
リハビリが必要だと、言ったじゃないか。
二人ともそうだと言ったじゃないか。
くそか。早死にしたいのか。
そんなに寝たきり介護老人になりたいか。
猛烈に腹が立って、憤りを顔に出した。
それに気づいたおばぁ、
「あ。ママは、もうええで。席はずしてや。
お父さん、介護いらんくらい元気や!」
殴り!!!!た!!い!!よ!!!!!
思いっきり、鼻っ柱を!!!!
私は辞した。
呆れて、何もいう気になれなかった。
もう知るか、という気持ちが蔓延していた。
元気かどうかの判断じゃないだろう。
日常生活がどうなのか、無理もせず
オーバーアクションでもなく、ありのままで
支援なり介護なり必要かを判断する場。
心から軽蔑した。
やさぐれた私は、チーコロを連れて出掛け
モーさんに一部始終を報告。
やはりモーさんは驚いて、そこまでアホかと
呆れていた。
本屋で、スマホに着信。
…………あ、認定調査の担当さんだ。
私が申請し、申請に行ったときにある程度の
状況を話して連絡先も私にしていたのだ。
「こんにちは。先程はお世話になりました」
お世話になりました。
途中で退席して申し訳ありません。
「いいえ、お母様のご希望でしたからね~。
所でお父様のことなのですが。
私の前で、無理されてましたよね?」
えっ。……そうですね。
あんなに機敏に動く父を見たのは初めてです。
「あはは、ですよねえ。
調査の時に張り切ってしまう方、多いんです。
もうそこが、ご老体なんですよね~。
宜しかったら詳しく状態を教えて頂けます?
もちろん、ご夫婦には内緒にしておきます」
なんてことだ!
担当さんは、ぜんぶお見通しだった!
私は正直に、大袈裟ではなく、状態を話した。
担当さんも、さすがにオムツ着用だったことや
一人でトイレの後処理をできないこと
お風呂に一ヶ月はいらなかったこと
外出もしていないことに驚いていらした。
「それほどなのですね。わかりました。
だいぶ隠されましたね、よくあります。
お母様は元気な頃をご存知ですから
やはり老いを認めたくないと思いますから」
そうですね。
私も説明したのですが、甘かったです。
お手数かけて申し訳ありません。
自分を振り返る。
おじぃおばぁに老いを押し付けたのかもしれない。
あんたたちは歳なんだから、歳なんだから、と。
まぁ、分かっていても辛くなるだろう。
私には初見からご老人、ご老体だったし
モーさんから頼むと言われたのだから
どうしても、安全に、健康に、が一番にくる。
その先には老いや介護、葬式まで見ている。
うーーーん……。
「いえいえ。
私達の仕事は、ご本人さんの介護支援だけ、
そういうことではないのです。
ご家族みなさんの生活を支援するのが
私達の仕事なんですよ。
みなさんの体や心の負担を助けること、
それが、介護支援システムなんです」
めから、うろこ。
……そうか。
本人だけじゃない、そうだ当たり前だ。
私はおじぃの為、おじぃの為、と思っていた。
そうではない。
おじぃだけじゃなく、家族を助けてもらえる。
目前の事に焦りすぎて、杖を杖をと思いすぎて
大事なことを見落とした。
やっぱり、相談してよかった。
こうして話してもらえるだけで、気持ちが楽に
景色がすっと広くなる。
夫婦の、緩く老いと向き合う姿勢で間に合うか。
その心配はあるけれど、動けなくなれば
嫌でも思い知るだろうし、周りが分かっていて
フォローすればいいか。
焦らずいこう。
介護に携わる方、その仕事の偉大さに
ひれ伏す思いだった。
ケアワーカーさんってすごーい!
まあ、私。
ソーシャルワーカー、ケアマネージャー等の
区別ついてないけど。
おじぃは、要支援2の連絡がきた。
らしい。
二人から私に連絡はなく、病院に薬を
もらいにいったときに証書をみたからだ。
どこまでいっても、蚊帳の外だ。
同居って難しい。