かっちーーーん。
思いっきり、腹が立つ。

ゴミ屋敷の惨状を知らす、おばぁの喧嘩売りも
なんにも知らない奴等が好き放題に言う。

「……捨てたのは、ゴミです。
    見てないと分からないと思いますが、ゴミ。
    嫁はおかんに相談しながら必要か不必要か
    判断をあおいでから、捨てていました。
    もちろん相当のゴミだったし、全部じゃない。
    少なくとも、好き勝手に捨てていません」

ゴミなんてどこの家にでもあるわ!
と、誰かが言った。

「そういうレベルじゃないです」

この人達が責めたい、疑惑を持っているのは
私なのだから、そこを弁解しても一緒。
何も変わらない。
でも悪者にもなりたくないから、誰かが
特攻するのを待っている。

反吐が出そうだ。


みんな、幼い頃から知っている責めやすい
モーさんを責める。

親を大事にしなきゃいけない。
泣かせちゃいけない。
立てなきゃならない。
恩を感じないのか。
両親とも体が弱いのに。
前は優しかった子なのに、どうして。
結婚してどうして、変わったんだ。


みんな、モーさんを責める。
寄ってたかってこのやろう、と奥歯を噛んだ。

私は気が強い。
おかしいと思ったら黙っていられない。
守りたいものは、自分で守る。



少し私の話を聞いて頂いてよろしいですか?

さっきから、みなさん揃ってモーさんを
責めていらっしゃいますが、何故ですか?
モーさんを私が変えたという話ですよね?
矛先は私にください。

みなさんのお気持ちは分かります。
一回り以上も年上の相手、しかもコブつきと
結婚してから、モーさんが口答えするになった。

みなさんが思う所は同じでしょう。
騙された、糸をひかれている、嫁の言いなり
そんなところですよね。
私もみなさんの立場なら思うかもしれません。

モーさんの不満は今に始まったことじゃなく
腹が立つから関わらなかっただけです。
成人男性にはよくあることだと思います。

結婚後にモーさんが意見するようになったのは
色々と決める必要があったからです。
通院の役や、食事の時間、小さな取り決めは
私とチーコロを馴染ませようと努力してくれた
それだけです。
今までみたいに夫婦と息子の三人暮らしじゃ
なくなったからです。

そこにお義母さんが突っ掛かって喧嘩、です。
モーさんが家に帰れば早いと文句を言う、
仕事してるのか、今まで帰ってこなかった癖に。
休みの日にまた休んでるのかと突っ掛かる。
顔を見たら文句を言いながら別室にいく、
そんな感じです。

お義母さんとモーさんがお互いに
もやもやした気持ちを日常会話に持ち込んで
それが家出に繋がったと思います。

先ほど、私達三人が大きな顔で生活をして
両親を居づらくさせているんじゃないかと
ありましたが。

私は食事のお世話をさせてもらっているだけで
モーさんが帰宅する頃は、チーコロも一緒に
両親の食事は終わっていて、それぞれが
テレビやパソコンを楽しんでいます。

お義父さんが辛そうならマッサージをして
お義母さんにお茶やおかしを出したり
普通の家事をしているだけです。

もちろん、チーコロはまだ小さいので
うるさいこともあります。
その時はお二人に謝りながら、チーコロを止め
私を手伝わせたり、外に出たりします。

モーさんの休日は、両親の食事と片付けだけで
日中はほとんど離れで過ごしています。
私達なりにご夫婦の時間を大切にしてますが
それでは配慮が足りないと思われることも
あるかもしれません。申し訳ありません。

親を大事にしろ、とおっしゃっていましたが
ご存じの通り、モーさんは不器用です。
言葉にするのもとても不器用です。
でも大事にするのは、心持ちじゃないですか?

モーさんは結婚前に全部を話してくれて
両親をよろしく頼むと言いました。
例の件も数年前から気づいていたそうです。
それも含めて、私に面倒をみてくれ、
大変だと思うけど家族になってほしいと
言ってもらいました。

リフォームに関しても、体の弱い両親に
少しでも楽に暮らしてほしい願いからです。
綺麗な家がいいからじゃありませんでした。

そこもきちんと話し合ってきました。
私達二人で勝手に決めた事は何もありません。
お義父さんはご存じです。
補聴器を付けている時におたずねください。
お義母さんの被害妄想です。

お義母さんは子供に夢を見すぎています。
子育てなさったみなさんならお分かりでしょうが
子供は親の思う通りにはなりません。
未熟ながら、私も毎日感じています。

お義母さんの望みは、自分に意見をしない
否定しない、なんでも賛成する、口答えしない
そういう息子です。
居るわけがないです。
居たとすれば、気持ちが他人です。

モーさんは、なかなかお義母さんの前では
口に出せませんが、体を心配しています。
嫁の私が分かっているからいいと思います。
モーさんがこんなこと言ってたよ、と私から
お義母さんに伝えています。

大の男が何もない時に感謝をいうほうが
稀じゃないですか?
おじさまたち、ご自身はどうでしたか?

私は、お義父さんお義母さんが好きです。
お義父さんは小心者でわがままで酒癖悪くて
お義母さんはモーさんに酷いことばかり言うし
いくら説明しても悪い方に考えてしまいます。

でも、私はお二人が好きです。
ずっと一緒にいたいと言っています。
素人の可能な限りお世話をしたいと思います。

ここまでモーさんを育ててくださった
感謝の気持ちで一杯です。
不器用なモーさんの代わりに、私が話し動いて
お二人を支えていきたいと思っています。

なにか、ご意見、ご質問ありますか。


誰も何も言わなかった。

反論は息の根をとめるまでやる。
べらべらと語るのは慣れてる。
さぞかし気の強い嫁の烙印が押されたであろう。
知るかボケ。

意見を待っていると、本家嫁が頷いた。

「ひとつ、ええか?
   私はお母さんから嫁さんの文句を一度も
   聞いたことない。絶対悪く言わなかった。
   せやから、なるほどなあ思って聞いてたわ。
   これからもよろしくしてやってな」

はい。こちらこそ、よろしくお願いします。

にっこり笑って、隣の仏間に向かった。

おかあちゃん。
話、聞こえてた?
ごめん。私ね、結婚前に全部知ってた。

おばぁは、数珠を握ってわんわん泣く。
背中をさすってやり、大丈夫と繰り返す。

認知症、進んでるんだろうな。