先日、愛犬を亡くした。




その犬は我が家ではなく、近所の親戚の家で飼われていたので、事実上はうちの犬ではない。





名前はメイ。




5月に生まれたからメイと名付けた。





人が大好きで、食いしん坊で、散歩の際たまに道路の真ん中で寝そべってみたり、人の家から勝手に靴を持っていったりと、おてんばで手の付けられないような一面のある犬だった。




震災後しばらくしてから、我が家の先代の犬ミルクが出産した子犬の1匹で、近所に住む親戚のTさん宅に引き取られた。




Tさん宅では、高齢の母Yさんと息子のTさんの二人暮らし。Yさんは足が悪かったのでメイの散歩は出来ず、Tさんも介護の仕事をしていて、夜勤などが多かったため、毎日散歩をすることは出来なかった。





鎖に繋がれている飼い犬にとって、散歩は唯一の楽しみ。




散歩ができないメイを不憫に思い、Tさん宅がすぐ近所(徒歩1分ほど)にあることもあり、私は高校時代から、毎日彼女の散歩をするようになった。





あまり散歩に慣れていなかったメイは、最初の頃は色んな方向にリードを引っ張ったり、すぐ側を通りかかった野良猫に襲いかかろうとしたり、とにかく危なかった。





しかし数週間後には次第に大人しくなり、私の歩幅に合わせて歩けるようになるほど慣れてきた。





田舎の四季折々の風景や空気を感じながら、メイと散歩するのは楽しかった。





特に春から夏にかけて、田んぼにいるアメンボやカエルを捕まえようと泥だらけになって遊んでいるメイの姿が印象に残っている。





大学生になってからも、なるべく家にいる時はメイのもとへ行き、おやつをあげ、散歩をした。




アルバイトなどで帰りが遅い日も多くあったが、できるだけ散歩は欠かさなかったし、雨の日は、自分がカッパを着てメイに傘を差し、短時間の散歩をした。





そのうちにYさんが老衰で亡くなり、コロナの影響もあって、Tさんも仕事が忙しくなかなか家に帰ってこなくなった。





私はできるだけメイに会いに行くよう心がけたが、誰もいない家で、彼女はいつも寂しそうな顔をしていた。





異変が起こったのは今年のゴールデンウィーク前ごろから。







散歩の際、今までは見向きもしなかったような野草をたくさん食べるようになった。





下痢をすることも多くなった。





体調が優れないのかと思い、犬用のミルクや栄養のあるドッグフードをあげたりしていたが下痢は改善せず💦




ゴールデンウィークが明けたころから、あまり散歩に行きたがらなくなり、食べるご飯の量も減った。




あんなに散歩が好きだったのに…………。





心配になり、Tさんの許可をとり、母と一緒にメイを動物病院に連れていった。





診察室に入るなり獣医さんは、「呼吸が乱れている。これは心配だね」と言った。




体重を測り、血液検査をしたところ、犬フィラリア症の陽性反応がはっきり出ていた。





さらに、蚊が媒介した回虫が体内で成長し、心臓に寄生し、その影響で心臓肥大症を患っていた。





散歩に行きたがらなくなったのも、運動をすると心臓が苦しくなってしまうから。





貧血と腎臓障害とも言われた。





もっと早く病院に連れてくれば良かったと思った。





狂犬病のワクチン接種は法律で定められているため、大半の犬は接種する。メイも、Tさんが連れて行ってくれていた。





しかし、春から秋にかけて飲ませるフィラリア症予防の薬は、飲ませていなかった。





とりあえず応急処置として点滴を打ってもらい、飲み薬を処方してもらった。





点滴のおかげか、少し回復したように思えた。





数日後、多忙なTさんに断り、看病のため、生家である我が家に連れて帰ってきた。









心臓に負担を掛けないよう涼しい場所に寝かせ、水を欲しがったので沢山あげた。ミルクも飲んだ。





我が家に連れてきたのが17日の午前中。






それからわずか2時間後の午後2時すぎ、彼女は息を引き取った。






わずか8年の命だった。





まさかこんなに早く逝ってしまうとは思ってもいなかった。






実習先との打ち合わせに向かうため、部屋で着替えていた私のもとへ、母が泣きながらやってきた。




最期は、苦しそうにしながらも母と祖母の前まで歩み寄り、しっぽを振ったあとに倒れたそう……。





私はついさっきまで生きていた、温もりのあるメイの身体を抱きしめて、「ごめんね、ごめんね」と泣きついた。









動物は人間とは違い、言葉が話せない。





散歩にも行けず、ご飯も食べられないほどの苦しみを堪え、どんなに辛かっただろうか。





毎日散歩に行き、様子を見ていたのに、直前までメイの変化に気付くことが出来なかった。





本当に情けない。





ごめん、メイ、もっと早く気付いてあげられていたら、助けられたかもしれない。






目は開いたままだったが、安らかな顔をしていたのがせめてもの救いだった。





「TさんもYさんも居ない家で、ひとりぼっちで死なせなくて良かった」と母は呟いた。





確かに、みんなに見守られながら天国に旅立って行ったのは幸せだったかもしれない。





「毎日散歩してくれてありがとうねって、きっとメイも言っているよ」と祖母は言った。





確かに、ほぼ毎日散歩に行っていた。





でも、死ぬ直前まで体調の変化に気付くことが出来ず、フィラリア症予防の薬を飲ませてあげようともしなかった。





いつも元気はつらつな彼女からは、病の影など想像もつかなかった。





フィラリア症は知っていたけれど、蚊除けも吊るしているし大丈夫だろうと、根拠のない自信をもっていた。





思いがけない彼女の死は、私の無知と過信が引き起こしたものだった。






1つ言い訳をするなら、学生で、薬や動物病院にかかる費用を捻出する余裕はなかった。そして、あくまでメイはすでにTさんちの犬、あまり干渉しすぎてはもはや我が家の犬になってしまうのでは?と変なブレーキをかけている自分がいた。





TさんもTさんで、私が中途半端に世話をするので、頼り切っていた部分はあると思う。





もっとTさんと連絡を取り、世話ができない分、病院代がかかりそうな時は後からもらうなど、色々な対策はできたはずだった。






ただ散歩をしていただけの偽善者…………。





本気でメイのことを思うなら、散歩だけでなく、もっと手厚いケアができたはず。







彼女を失った悲しみよりも、結果として何もしてやる事ができなかったという後悔が胸をついた。





周りの人たちは「十分よくやった」「むしろ飼い主であるYさんの管理不足ではないか」「悲しんでいたって前には進めない」と声を掛けてくれるが、自分の中で渦巻く後悔の念は決して消えることはない。





良くないことだと分かっているけれど、知恵袋や2chで「フィラリア症 犬」と検索すると…………





「飼い犬を末期のフィラリア症で失った。世話が行き届かなかったことを後悔している」という飼い主の投稿に対して、





「飼い主のくせにフィラリアの薬も飲ませなかったのか」「見殺しだ」「虐待」「人としてありえない」と言った、愛犬家たちの心無い書き込み。胸が痛んだ。





私も、散歩やエサなどの世話という上っ面だけの飼い主で、フィラリア症になるまで放置し、「人としてありえない」ことをしてしまったのかもしれないと思った。








しかし…………その日に限って、空には美しい虹が2本。





「悲しまないで」「今までありがとう」とメイが言ってくれている気がして、少しは傷が癒えた。










彼女が亡くなってから数日が経つ。




果たして「フィラリアにかからず長生きすること」だけが本当に犬にとって幸せなのか?と考えるようになった。





決して開き直るわけではない。





もちろん、健康で寿命を全うすることは犬にとっても、飼い主にとっても一番の願い。






メイはあまり長く生きられなかったけれど、時間の許す限り、私は彼女と過ごした。





ペットにとっての幸せって「どれだけ飼い主に触ってもらったか」「どれほど大切にしてもらったか」「どれくらい撫でてもらったか」による部分が大きいのではないかと思う。





メイと一緒にいる時間は何よりも癒しだったし、犬と人間という関係を超えた、本当の友達のような気がしていた。





彼女も同じように思っていたはず。





メイに聞いてみないと分からないけれど、少しでも、1分でも「幸せだったな」と思える瞬間が彼女の人生であったのなら、私のしてきたことは間違いではなかったのかな、と思えるようになった。








現在、犬を飼っている方、これから犬を飼おうとしている方々へ。


↑動物病院から貰ったパンフレット




犬フィラリア症は、蚊が媒介する恐ろしい病気です。




特に外飼いの犬は、常に蚊に刺される危険に晒されています。




しかし、犬フィラリア症予防薬(経口剤)を投薬することで、予防することができます。




最近では薬の改良も進み、犬が好んで食べるようなお肉型のものも出ています。





ぜひ、病院に連れていき、薬を飲ませてあげて下さい。





犬を飼うということは、その子の一生を握るということ。





うちのメイのような最期を迎える犬を少しでも減らすために…………。誰かの役に立つことが出来ればいいなと思い今回のブログを書きました。





最後まで読んで頂き、ありがとうございました。