「犬を飼いたい!」

昨年、家族からそんなリクエストを受けた私。

……いやいや待てよ、と。

そもそも私は子供の頃から動物が苦手。犬も猫も「かわいい」と思う気持ち以前に、未知の動きや鳴き声が怖い。だから家族がペットショップの前で「かわいいーー」と目を輝かせていても、私は一歩下がった位置で静かに見守るだけだった。

正直、ペットショップのショーケースのガラスが「最後の砦」だったと思う。ガラス越しだから安心して見られる。それがなければ近寄れない。

「パパは苦手だよ」
「動物を飼ったら動物中心の生活になるよ」

そう繰り返してきたのに、妻も子供も「パパは世話しなくていいから!」と一蹴。

「いやいや、そんなわけあるかい」と心の中で突っ込みつつも、少しずつ「これは避けられない流れなのでは…」と薄々感じていた。

そんなある日、とあるショッピングモールのペットショップで「運命の出会い」が待っていた。

ふわふわの真っ白な毛並み。つぶらな瞳でこちらをじっと見上げる小さな犬。
――そう、それが後に「マルちゃん(仮)」と呼ばれることになるマルチーズ(オス)だった。

「ねぇ、この子、かわいくない?」
妻と子供が声を揃える。

……正直、その時ですら私も心が動かなかった。

しかし、押し切るように妻と子供がマルちゃんを迎え入れようと決意する。

ここから、おじさんと犬の奇妙な共同生活が本格的に始まるのであった。