私は先日、ベランダの生命を蹂躙した。

それは、小さな小さな蟻たちだった。


私はガーデニングが好きで、公園でもお花の手入れをするボランティアをしているので、よく虫たちに遭遇する。

大きな幼虫には驚くけれど、普段は小さな虫たちにも敬意を払って扱っている。


蟻たちも、ベランダでガーデニングをしているわが家には、当たり前に存在している。

いつも蟻たちはベランダを歩いているので、私は特に気に留めることもない。


しかし、最近ベランダの蟻たちが、わが家に集団で侵入してくるようになった。

私は気にしていなかったが、家族が不安がっていた。


なぜ、蟻たちがわが家に侵入してくるようになったのか、原因がつかめないまま数日が過ぎた。

ベランダ掃除をしていた私は、蟻たちの行列がエアコンの室外機の排水パイプに続いているのを見つけた。


一瞬、躊躇したけれど、私は蟻たちをベランダ履きで踏み潰した。

私の中には、なんの感情もわかなかった。


普段、私は世界の平和を望む温厚な人間だと、認識している。

でも、家に侵入してきた蟻を、踏みつけて殺した。


たかが蟻、とも言える。

でも私は、小さいながらも生きている命を、自分たちの家に侵入してくるからというだけで踏み潰した。


自分の都合で、他の生物を殺しても何とも思わない私。

平和主義者だと思っている私でさえ、自分の家族を守る為なら他の生物の命を奪っても平気な顔をしている。


私が踏み潰したのは蟻だし、わが家の中だけのことだけれど、今回のことは争いの縮図だなと感じた。

大げさかもしれない。でも、自分たちの安心安全が危ぶまれた時、どんな手段を使ってでもそれを守ろうとするのは生物の本能なのだろうか。

アリクイ