おそらく、カフェへとやって来るすべての人物に、差別意識や、偏見意識はある。

 

しかし、悩みや、想いを抱えている人物に助言する会話の中で、差別的な発言をする人物は一人もいないし、逆に、差別反対を訴える人物もいない。

 

それは、差別という問題に対して、多くのことを示唆していると思う。

 

雨の中で飲む一杯も、また格別。

 

 

秋の夜は、はるかの彼方に、

小石ばかりの、河原があつて、

それに陽は、さらさらと

さらさらと射してゐるのでありました。

 

陽といつても、まるで硅石(けいせき)か何かのやうで、

非常な個体の粉末のやうで、

さればこそ、さらさらと

かすかな音を立ててもゐるのでした。

 

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、

淡い、それでゐてくつきりとした

影を落としてゐるのでした。

 

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、

今迄流れてもゐなかつた川床に、水は

さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました……

 

中原中也『一つのメルヘン』