須佐勝明のポテンシャル | 海外ボクシング情報

須佐勝明のポテンシャル

須佐勝明のポテンシャル


 WBCフライ級王者の五十嵐俊彰をはじめ、現在プロで活躍する岡田隆志、向井寛史、戸部洋平、石崎義人は、いずれもアマチュア時代に、ロンドン五輪でフライ級代表だった須佐勝明に敗れ、岡田、石崎、向井にいたっては須佐にRSC負けしている。しかし、そんな須佐も、ロンドン五輪では、一つの白星も挙げられずに、大会を後にしている。
 抽選に恵まれず、1回戦から優勝候補のロベイシー・ラミレス(キューバ)と対戦する事になったのが、その最大の要因かもしれないが、仮に抽選に恵まれても、フライ級で慢性的な減量苦を抱える須佐が、本選で2つ以上勝つ事は至難の業だったはずだし、実際、須佐のブログを読むと、その減量が如何に壮絶なものであったかがわかる。
 しかし、コンディションはどうであれ、ラミレス戦の須佐が、掛け値なしの好勝負を演じた事だけは紛れもない事実である。
 この大会で金メダルを獲得する事となるラミレスを相手に、1ラウンドから好戦的に攻め込む須佐は、強烈なパンチをラミレスの
顔面とボディーをねじ込んでいき、ラミレスもショートレンジで積極的に打ち合う姿勢を見せるが、途中から明らかに須佐のパワーを警戒しだし、要所要所でロングレンジからパンチを放る作戦に切り替え、2ラウンド以降は、完全にフットワークを使ってポイントを集めていこうとする。しかし、須佐の強烈なパワーを捌ききれないラミレスは、打ち合いに巻き込まれ戸惑ったのか、試合中、度々自分のコーナーに指示を仰ぐかのように目をやっている。
 確かに、試合自体は、より的確なパンチをヒットさせていたラミレスの勝利で揺るがないが、本来、好戦的なボクシングスタイルを持ち味とするラミレスが、今大会でフットワークを多用したのは、後にも先にも須佐戦だけだった事を考えると、ラミレスもかなり追い込まれていたのかもしれない。
 大会後、引退を表明している須佐ではあるが、ラミレス戦を見る限りまだまだ底は見せていないはずだ。