ふーと煙を吐き出しながら空を仰ぐと、
すぐ上の踊り場から見下ろしているヤツと目が合った。
高校からの友人の池月 真だ。
練習に行く途中らしく、
陸上部のウィンドブレーカーを着ている。
運動部の場合、
高校時代そこそこ熱心にやっていても、
大学に上がるとオレのように辞めるヤツが多い中で、
同じ陸上部だった真は、
入学と同時に迷わず陸上部に入り、
高校時代と同様に、至極マジメに続けている。
オレは仰向いたまま
タバコを持った手をへらりと上げた。
真は応えず、
両手をウィンドブレーカーのポケットに突っ込んだまま、
のしのしと階段を降り始め、
オレの横を無言で通り過ぎる。
「聞いてたんだ?」
「聞こえたんだよ」
階段を降り切ったところで、
真はムッとしたように振り返った。
立ち聞きしていたと思われるのは心外なんだろう。
可愛い顔に似合わず硬派なヤツで、
オレはそんなところがキライじゃない。
真は仏頂面のまま、
いったん下まで降り切った階段を
二段飛ばしで戻ってきて、
オレの隣に腰を下ろした。
「相っ変わらずだな」
「人聞き悪いなぁ。オレだって自分を知ってるしさ、
価値観違うコは避けてるつもりなんだけどね」
「そんな簡単に割り切れるもんじゃないだろ」
オレはタバコをくわえながら、目だけを動かして真を見た。
毎日外を走り込んでいるにもかかわらず、
色白の頬が薄らと紅潮している。
UVケアに躍起になっている女の子からみたら
恨まれそうなほどキメが細かい綺麗な肌だ。
今でこそ183センチのオレと並ぶほどデカくもなったが、
高校入学当時は160センチそこそこで、
姉の琴絵さんそっくりの「美少女」だったヤツは、
年上の先輩から一部のヤローにまで相当なファンがいた。
根っから愛想の無い性格と、
早々に出来た当時の彼女の高見舞子が、
学校一と噂される本物の美少女だったのとで、
表立って接近する勇者は、あまりいなかったようだが。
人に顔を眺められるのがキライな真は、
オレが見ているのに気づいて、
ギッと音がしそうな勢いで睨みつけた。
「何だよ」
「いやぁ、昔から基本的に人の恋路に無関心な
真クンの台詞かと思ったらさ。
マジであの女にほだされちゃったわけ?」
高校卒業とほぼ同時に高見と別れた真は、
最近、別の女と付き合い始めていた。
他人のメニュー選びには頓着しない主義のオレだったが、
正直、今回だけはまずいことになったと思っていた。
・・・To be continued.
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