君と僕と。61 最終話 | くる*くるり

くる*くるり

ふたりといっしょ

いつまでも





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あの日 絡めた小指に
小さなリングをはめた。

君の温もりを閉じ込め
僕は ここにいる…











「 ユンホ 起きて、ほら学校。」


『 …ん…』


睡眠時間が短くて今日は辛いだろう。
けれど 約束したのだから
きちんと学校へ送り出す、心を鬼にして。

少し早くに起こし始めた。
悔いなく丁寧にお別れを言うために、
僕の気持ちをもう一度伝えるために。


「  …ユンホ、起きて。」


『  わかった、起きる…』


眠い目を擦って 上半身を起こした彼の
何も纏ってない白い肌を見て
夢ではないことを再確認し 耳が熱くなった。

起きた時から腰や 受け入れたそこの痛みが
現実味を帯びていたけれど。


「 ほら、支度 支度。」


ユンホが寝ている間に 近くの
コンビニまで行き朝食に、とパンを買ってきた。
ユンホは 珈琲よりも ホットチョコレート。

見比べていると ホットチョコレートの方が
嬉しそうに飲んでいたから。
珈琲はどうやら 背伸びをして 
飲んでいたみたい。
甘いパンが好きだし 寝言も言うし
腕を振ったり 足を上げたり…

僕の中に まだ知らなかった
ユンホがたくさん増えて
どのユンホも 愛おしく思う…


「  ユンホ 食べながら聞いて?」

『 うん。』

口いっぱいに頬張って
ユンホは モグモグしながら
ジィっと僕の目を見た。
そのまま吸い込まれてきそうな勢いに
外のクラクションの音や
登校時の子供の声が 一瞬消えて
正確には 続いていただろうけれど
世の中にふたりしか 居ないような
不思議な錯覚に陥った。


「 ユンホ 愛してる。」


「 けれど この言葉は鎖じゃない。
君を縛る鎖ではなくて 君が僕を辿る
糸だ、赤い糸。」



『 …糸か… 細いね…』


「 そうだね、細くて脆い。
引っ張り過ぎても切れるし 弛ませても
絡まるし、おまけに 誰かに切られるかもしれない。」


『 …そんな奴 許さない。』



「   …うん、程よい強さで 握っていたら
必ず 辿ってここに来れる。
僕が反対側を 握っているから ずっと。」



「 縛るんじゃなくて 握っておくってこと。
ユンホ自身の気持ちで。」


『 難しいよ、せんせ。』


「 そのうち わかる。」


ユンホは 膨れた頬の空気を
ぷぅと抜くと はは、と笑った。
もう少し大人になったら
自分の足で ここに来て。

そんな想いを込めて 僕は
ユンホを抱きしめた。

左手に持っていたパンを置くと
僕の背中に腕を回し 僕よりも
強い力で 抱きしめ返す。


ひょっとしたら もう会えないかもしれない。
ユンホを手放す必要があるのか?
頭の中は 今も自問自答している。



『 先生 俺、必ず来るから。』


「  うん、待ってる。」



ユンホが キスをしたら
チョコレートの味がした。
思い出の味になるだろうな…


「  じゃあ、もう行って?」


『  …うん、』


「  ほら、遅刻するよ。」


ユンホは 僕の手を握り 離そうとしない。
時計のカチカチが急かすように
大きく聞こえる。


『  嫌だ。やっぱり、別れるなんて、』


握った手を引き寄せ 胸に僕を抱く。
心臓のドクドクとした振動が
僕の身体まで 震わせて。


『 せんせは それでいいの?
俺と会えなくて それでもいいの?』


「 …ユンホ、いいわけないよ。
僕は 君が思ってる以上に 君が好きだ。」


『 だったら!』


何も答えず また唇を寄せた。
何度しても足りないキス、
名残惜しくて 離せない身体。

でも…


「 決めたんだ。 無駄に学生時代を過ごさず
楽しんで、それでも 僕への気持ちが
変わることがなかったら その時は。」


僕にも大きな賭けだ。
けれど それは悲観的なものでは無くて
将来への希望。
君と僕で生きていけるように
強くならなくちゃ。




ーーーカチャ…



バス停まで 見送ろうかと言ったら
ここでいいと言った。
バス停で僕が泣いたら 恥ずかしいだろ、って。

だけど 僕には わかってる。
この扉が 閉じた瞬間
君の瞳から 涙が溢れる事を。

よく我慢したね、ユンホ…
君は 悔しくて 悲しくて
僕を憎む時があるかも知れないけれど
いつか今日の日の事を
ふたりで笑い合おう、ね。


(  いってらっしゃい    …ユンホ  )




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僕は今日も 窓の外を眺めている。
向こうの通りから 君が現れ
大きく手を振り 走って来る姿を
想い描きながら。

白い歯が見えるところまで来たら
鍵を開けよう。

ドアノブが回ったら
大きく両手を広げよう。


そして言うんだ。


「 おかえり、ユンホ。」











終わり。



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おはようございます。

君と僕と。最終話を読んでいただき
ありがとうございました。
途中 長い間抜けてしまっていて
設定も アレなんで(笑)
このお話 過去のお話の中で
最下位争いなアクセスでしたがアセアセ
それでも 毎日通ってくださったり
いいねやコメント、ランキング応援など
本当にありがとうございました。

毎日 励まされて 頑張れました。
重ね重ね、感謝の気持ちでいっぱいです。


このお話 結局は 別れて終わってしまいましたが
チャンミンも思っていた通り
将来への希望を持って生きていく
と言う落とし所ですので
ハピエンじゃなかった、と思ってもらうよりは
今も ふたりが互いを想い
再会を夢見て 頑張ってるんだな〜 などと
考えてもらえたらと思います。
また いつか再会したふたりの姿が書けますように…


さて、まさかケミり過ぎるふたりが
見れるなんて 思いもしなかった
書き始め当初(笑)
今は 物語よりも リアルを見せつけられ
毎日 あっぷあっぷしていますよね。

君僕が終わり 次からは 僕ベンの続きです。
カテゴリ見ていただくと
ちょいちょい 初回を書いては放置している
ものも多くて…( 性格直せ)
パッと浮かんでは書く(笑)
それらも いつかお披露目できたらいいなぁと
思っています。


いつもありがとうございます。
君僕 最後のバナーです。
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