前に病院で働いていた。


1階は外来

2階は救急車で運ばれた人が一時的に

入院したりする。

3階と5階は寝たきりの人

4階は比較的元気な人がリハビリなどをして

家に帰る準備をする。

手術はしない病院だったので

救急車で運ばれてきた患者さんが

手術となると近隣の病院に搬送される。


私は3階にいた。

患者さんたちは何らかしらの病気で

寝たきりになってた。


ほとんど、お年寄りが多かったけど

1人だけ若そうな男の患者さんがいた。

その患者さんは交通事故で体が動かなくなり

脳にもダメージを与え

意識はあるけど体は全く動かなく

固まっていた。


目だけ動いてた。

私が病室に入ると目が合う。

痰を吸ったり体を動かすと痛いのか

唸り声をあげていた。


コロナ前はちょくちょくお母さんが

面会に来ていたがコロナになって

面会禁止になり

彼の周りには誰もいなかった。


知っていたけどあまりの若さに

辛いだろうな痛いだろうなと思っていた。

主治医はあの人は若いし心臓は元気だから

闘病する期間は長いよと話していた。


優しいヘルパーさんもいれば

若くて大きめの患者さんの体の向きを

変えるのは大変らしく

患者さんに向かって

もっと痩せてよ

重いんだよ と言いながら

雑に向きを変える

ヘルパーさんもいた。


私が入ってから3年後ぐらいに

その患者さんが

危篤状態になり家族が呼ばれた。

奥さんと彼のお母さんが来て

奥さんは『もう頑張らなくていいよ

ありがとう』と言ってたけど

お母さんは『生きてるだけでいいから

死なないで!どんな形でもいいから

親より先に死なないで!』と

叫んでいた。


私も以前、病室に入ると、その患者さんに

返事は来ないけれど声かけをしていた。

だから思い入れがあったから

亡くなるのは悲しいけど

今まで痛い事や苦しい事、沢山頑張ったから

やっと楽になれたねと思った。


奥さんの気持ちも

お母さんの気持ちもわかる。


私の子供が私より先に亡くなろうとしていたら

私も取り乱すと思う。


感情移入しすぎるから

疲れてしまい

病院で働くのはやめた。