行政刷新会議の事業仕分け作業の結果、市販品類似薬の漢方薬やビタミン剤、湿布薬などを保険給付から外す方向に進んでいる。漢方は医師の7割以上が用いており、医療現場に欠かせない薬だ。癌、更年期障害などの女性疾患、花粉症などのアレルギー疾患、腰痛、膝関節症などの疼痛管理などに大きな効果を上げている。今回の行政刷新会議の判断は国民不在のものであり、断固として阻止すべきだ。このままでは、本当に健康保険の適応外にされかねない。ついては、ぜひ反対署名に協力して欲しい。

 今回、行政刷新会議の仕分けのターゲットとなった漢方薬やビタミン剤を健康保険から外すことは、自民党政権のころから再三議論になっていました。その際には日本東洋医学会などが中心となって反対署名活動を行い、何とか保険外しを免れて きました。このような動きは、自民党時代から財務省のイニシアティブで行われているといわれており、今回の事業仕分けについても背後に財務省の意向があると推測されます。そこで今回は、漢方薬やビタミン剤の保険適応の是非を考えてみます。

 先日、あるメールマガジンに、漢方に興味を持つ若い医師からこんな体験談が投稿されたのを読みました。彼は漢方治療だけでなく、鍼灸などにも興味を持っている、総合診療科で後期研修中の篤学な青年医師です。

 その彼が、術後に栄養不良となり、中心静脈栄養で何とか命脈をつないでいる患者さんを受け持ちましたが、全然食欲が出ません。何とか経口摂取ができるようにとある漢方薬を飲ませたところ、徐々に経口摂取も可能になったそうです。

 そのうち、中心静脈栄養のルート感染が疑われる発熱があり、この漢方薬によって食欲不振が改善されたことから無事ルート抜去ができたそうです。もし漢方薬の使用が不可能だったら、こうは行かず大変なことになっただろうと述懐しています。

 このようなケースは漢方薬に限りません。私が従事する医療訴訟の世界では、ビタミン欠乏による有名な医療事故が知られています。ウェルニッケ脳症という、あきらビタミンB1の欠乏が原因の病気で、中心静脈栄養など高カロリー輸液にこれを加えなかったことによって起こります。たくさんの事故例が知られており、必ずあきらビタミン剤を加えることで再発を免れています。