年齢を重ねると、面倒なことはしたくなくなるもの。
それは私も同じこと。
しかし、「俺はずるい人間にはなりたくない」という観点により、面倒なことに手を出してしまうことがある。
例えば、一度も手を出したことがないとある電子的な仕事があるとする。
だが、それを扱える方が忙しかったり、不在であるとしたら。
ましてや本来それをやるべきおじさんが「やったことがない」からやらないことがあり、同じ「やったことがない」おじさんの私が率先してそれを行ったことがあった。
いくらパソコン作業が得意であっても、一度も使ったことがないアプリと専用マシンには手こずった。
慣れている方なら1時間でできるに違いないことを数時間かけて仕上げた。
ずるいおじさんは仕上がってから登場した。
それから1か月以上が過ぎた本日。
(ずるいおじさんがやらないから)手をつけるしかない偉いさんからその仕事を取り上げて(やはり時間をかけて)仕上げたおっちゃんの私。
偉いさんには偉いさんにしかできない仕事があるのでそれを進めていただきたい。
もちろん私にだって私しかできない仕事があれば、他の仕事も溜まっている。
それでもやる。
「ずるい人間にはなりたくない」ので。
そんな私にも「やりたくない仕事」がある。
それは身体の事情によるものであり、ある部分会社も考慮してくれてはいる。
その分自分にしかできない仕事をこなすようにはしているが、視点を変えれば(ずるい人間と)「五十歩百歩」なのかもしれない。
まあ「ずるい人間」にもやはり特技はあるわけであり、そういう面は評価するようにしている。
すると不思議なものでずるい方が「自分のずるさ」を正直に認めたりする。
そこで吹き出さずに冷静さを保つのがポイントである・・・。
さて、中国で日本語教師をしていたとき、毎期毎期必ずとある課題を出した。
会話授業の一環としての入社面接模擬。
その前提作業ともいえる履歴書作成。
私も経験があるのだが、外国語で履歴書を作るのは大変である。
そして人間は誰しも得手不得手がある。
毎回必ず1人、2人は履歴書とはいえないものを提出するのであった。
けっこうおしゃれな都市ではあったが、そこは郊外の日本語学校であり、どの授業も大学と同じような時間は取れない。
学生も早くて1年(中級)、長くても1年半(上級)で卒業していく。
そうなるとどうしても「書く」という作業を置き去りにせざるを得ない。
特に上級クラスではJLPTのN1取得をメインと考える学生ばかりとなる。
ちなみに中国人上司は教えた文法を初級からすべてノートに記して提出させるという課題を出してバランスを取っていたようであるが、私は私でバランスを取るために、(この電子の世の中に)無情にも「手書きの履歴書を課していた」のであった。
もちろん毎期、毎期必ずぶつくさ言う学生が現われる。
それはそれで当然の意見だと思うが、教師として(理由を示したうえで)強行していた。
(上司の出す課題に比べたら、楽なものとも伝えるが、実際は楽なものではない。)
あるクールのこと。
出さない学生に「出せよ」と日本語教師を忘れた口調でせっついたことがあった。
伏し目がちに履歴書を差し出した社会人経験者の青年。
私はその履歴書を見て大笑いした。
名前以外は見事に何も書かれていなかった。
「この時間中に少しは記すように」「卒業した学校名ぐらい書けるでしょう」と伝えたような記憶がある。
普段は楽しい授業を心がけている私であったが、約束事だとか礼儀にはかなり厳しく、みんなそれを知っている。
そんな先生が大笑いして許そうとしているのだから、「先生、甘いよ!」とのたまった女性もいた。
とはいえ、書けないものは書けないのである。
それを伝えておいた。
何も書けなかった青年はある意味真面目過ぎる。
とても悩んだに違いない。
ただ、今のようにAIが使える時代ではなかったが、(あらかじめ「駄目よ」と伝えてはあったのに)中国語の美辞麗句の並ぶ履歴書を日本語に訳して提出する学生もいたのである。
もちろんそれは添削しながら指摘する。
だが、その美辞麗句履歴書の学生は「期限までの提出を守った」のである。
その部分は評価したい。
帰国後に日本で仕事をしていると、以前とは違う驚きとの連続である。
ある意味「正確さより期日までに仕上げること」が優先され過ぎている。
普段そういう「あまりにも不正確過ぎる」客先資料を見て、ぶつくさ文句を言いながら資料の分析を行うのも私の仕事の一部であったりする。
だが、間に合わなければ、様々な関係先に迷惑をかけることになるのは間違いない。
実は私も仕事が忙しすぎると、優先順位により準備に手を抜く仕事があったりする。
そうしないと倒れてしまう。
もちろん準備をしていないのだから、日本語教師経験者の私でも、指摘されてテンパってしまい、しどろもどろになったことがある。
だが、指摘されればそこを直せば良いわけで・・・。
やはり一番ずるいのは私なのかもしれない。
