▽初面談

 

10月24日にお問い合わせをいただき、10月28日にご両親のみで塾に面談に来られました。

 

別の個別に通っているが成績が伸びず、白陵中学校を目指したいが可能性はあるのか、というお話をされました。

 

模試での第一志望の白陵中学校の判定はDでした。

※掲載許可済

 

テストを見せていただいた感想としては基礎漏れが多く、また読解もおそらくできていないだろうなという状況でした。

 

私の指導した生徒の中に3ヶ月で偏差値を10以上伸ばして難関中学校に合格した前例があること

Kさんの場合https://ameblo.jp/ameya-risuke/entry-12840633862.html?frm=theme

 

ただし、今回はそれよりもさらに短い(本番が1/17なので実質2.5ヶ月)

可能であれば時間をかけて真っ当に成績を伸ばすにこした事はなく、短期間で成績を急上昇させるには生徒自身に大きな負荷がかかること

 

指導を受けてもそれ単体では効果は薄く、学習方法そのものを根本的に変える必要性があること。

その管理は塾に毎日通うのであれば塾(ORCA STUDY)でも行うことができること

 

現時点(当時)で合格可能性は低く、合格を拾えるかどうかは本人が努力を継続できるかどうかにかかっているが、ベストを尽くせたとしても合格できるかはわからないこと

特に、いくつか越えるべき壁があり、1度成績が上がったことによって油断してしまう子供も多いため、そのリカバリーに時間を割くような状況が生まれるほど苦しくなること

 

などをご説明させていただきました。

 

 

 

▽指導開始

 

10月29日に初めて家庭教師としての指導を行いました。

初回指導の感想としては、真面目に頑張るお子さんではあるものの、基礎は穴だらけでほぼ今演習で解いている問題は理解できていないであろうということでした。

予想していたことではありましたが、基礎をしっかり理解させることからじっくり時間を使っていくことにしました。

 

すぐに理科指導の効果を実感していただき、算数の指導も並行して行うことになりました。

算数は、解き方を覚えているが思考ができていない典型的な苦手の状態で、自分のたてている式の意味をほぼ理解しておらず、使えないところで関係のない公式を持ち出してしまったり、反射で手を動かしているので正解率が上がらず、途中で成長が停止してしまう典型的思考をしていました。

演習を積んだだけはあって表面上理科よりは取れていましたが、実態は理科と同程度に理解がついてきていない状態でした。

そこで、自分の力で解き切る力をつけるために、解ける問題も含めて問題に着手する時の発想手順そのものから教え直していきました。

 

理科は私のノートを使い、算数はこちらで用意した演習問題を進めていく形式で進め始めました。

 

11月4日より塾に通い始めました。

塾営業時間の15時から21時までみっちりと勉強して帰られました。

この時点では毎日通うと決まっていたわけではありませんでしたが、すぐに効果を実感していただき、メイン塾の授業も切って土日以外は毎日通うようになりました。

まだ別の個別が少し残っていたようでしたが、明らかに効果がないと判断したため、損切りしてこちらに通っていただくようにお願いしました。

月〜金がORCA STUDY、土日のみこれまで通っていたメイン塾という形で指導を行なっていきました。

 

 

 

▽基本方針

 

塾と家庭教師の併用で私が行ったのは、理解度のチェックと弱点補強(理解を深めさせることと演習)、記憶のコントロールでした。

 

まず、「ここまでできて理解したと言える」という基準を示し、その水準になるまで教えたり動画の視聴を繰り返しました。

本人と勉強の指標を共有し、「問題文を本当の意味で理解して、自分の手で正確に問題を解き切れる」ことがどういうことか、実感させるためです。

 

算数も理科も、おそらく全単元を終えるのは難しいだろうということで、こちらで優先順位を決め、本人の理解度をチェックしながら本人も認識していない弱点を洗い出し、重要な順に基礎理解と演習を重ねていきました。

 

また、「どこで、なぜ間違えるか」を弱点として記録していきました。

とにかく解く問題は精査されたものだけに限定し、その問題は「自分の手で最後まで解ける」という状況を作り、適切な時期に反復し記憶を呼び起こす作業です。

忘れることを前提としない指導・学習は基本的に失敗します。

 

Sさんは図形、特に立体的なイメージがかなり苦手で、立体図形が苦手だと言っては紙粘土で模型を作ったり、滑車輪軸が苦手だと言っては滑車や輪軸をダンボールで作ったり、天体が苦手だと言っては地球儀をクルクルさせたりボールを回したり、感覚的に理解できない部分はその感覚をつけるためにできることはなんでもやりました。

 

また、21時まで塾で勉強したらあとは寝るか軽い復習で良いとしました。

 

 

 

▽いいから寝なさい

 

Sさんは飲み込みのいい生徒でも頭の回転の速い生徒でもありませんでした。

ただ一点、勉強を継続するという点に関しては素晴らしいものを持っていました。

 

しかし、油断するとすぐに睡眠時間を削って勉強したがり、翌日思考が回っていないということが何度注意しても直りませんでした。

 

入試においてはとにかくまず丁寧に考える習慣をつけること、そしてゆっくりとなら自分の手でできるようになってからスピードアップを図ること。

そうでなければただ雑に解く習慣がついてしまいます。

 

結果として合格したSさんですが、この点はなかなか改善しませんでした。

 

 

 

▽終盤戦

 

前受けとして岡山中学校の入試がありました。

この学校の対策のために基礎対策を削る余地はほとんどありませんでしたが、前日に1年分だけ過去問を解かせました。

 

ほぼ初めての過去問演習であったため、解いている所を後ろから見ながら、私がアドバイスをする状況で行いました。

と言っても、答えを教えたり間違いを指摘したりせず、一般論として点数を上げるための戦略を解いている途中でつぶやく方式で解かせました。

とにかくまだ計算ミスが多かったので、複雑な計算になったら一旦飛ばして解ける問題だけまず解くように指示したりもしました。

また、四捨五入等の指示も基本的に読み飛ばしていることがわかり、その点も改善させました。

 

ここでようやく過去問の解き方と時間配分を理解できたようで、それまで芳しくなかった算数の点数が一気に合格水準に達しました。

本人もかなり自信がついたようで、翌日は自信を持って受験できたそうです。

 

結果は、岡山中学校 難関大コース 合格

ただし、東大・医学部コースへは受かりませんでした。

 

点数は250点満点で188点

東大・医学部コースの合格最低点も188点でしたが、専願ではなかったための合格がいただけませんでした。

 

 

白陵中学校のレベルを考えると、点数としては物足りないものではありましたが、この時点の成果としては十分だったと思います。

 

その後、岡山学芸館清秀中学校を成績Aの奨学生として合格しました。

 

この頃、基礎が7〜8割ほど履修できてきたことで、Sさんの弱点だけを集めた動画を作成しました。

寝る時間の確保を至上命題とする私が徹夜してまで作ったこの動画は、合計で6時間分ほどに及びました。

私もやはり人間ですので、生徒の頑張りに触発された部分はかなり大きかったです。

なんとか受からせたい一心で思いついたもので、それくらいSさんの頑張りは素晴らしいものだったのです。

 

結果としてこの動画は強力な武器として働き、Sさんの基礎の理解を大いに助けました。

もちろん動画任せにすることはなく、常に本当の理解度のチェックは私の手で直接行なっていきました。

 

 

 

 

▽過去問について

 

日曜日がメイン塾の過去問演習の日だったのですが、岡山中学校の受験後頃から過去問を解きにいくのをやめてほしいと保護者様にお願いをしていました。

最初は過去問をやる時間がどれほど捻出できるか怪しいという事情があったため、塾で解いてきてもらっていたのですが、過去問演習を行えるようになってきたため、過去問を最も有効な形で役立てるべきと考えたからです。

 

過去問対策としては、Sさんの課題・癖についての注意事項を読み上げ、時間を測って解かせる。

その後、問題のうち解けたはずの問題、基礎知識を入れて次回は解くべき問題、損切りする問題の三種類に分け、時間配分や解き方等の検討を行う。

新たに見つかった課題は次回の過去問演習時に読み上げ、穴が見つかれば即基礎を穴埋め、というサイクルです。

 

特に取るべき基礎問題(1️⃣2️⃣)で必ず2〜3問の失点があることと長文問題の内容が把握できていないこと、苦手な図形問題の克服、が大きな課題となり、弱点が見つかれば基礎演習で知識を組み直していき、高確率で出題される立体図形の問題は、毎日それなりの難易度の問題を1日1題解かせていました。

 

実際、メイン塾で解いてきた過去問は、間違えたところもほぼ理解できておらず、点数の取り方も戦略を次に活かすサイクルが作れていませんでした(これは当然で、塾で個別にそこまでは普通できない)。

「速さの問題は全部ダイヤグラムで解け」という先生もいたそうで(子供の話なのでどこまで本当なのかはわかりませんが)、正直講師の質も低いというか有害ですらあると考えていました。

 

何より初めて解く過去問でどの程度得点できるのか?という情報は極めて重要であったためです。

 

ただ、ORCA  STUDYによる私とのほぼマンツーマンを週5日ほぼフルタイムで行なっていた関係で、息抜きになるという理由でなかなか保護者様が止める判断がつかなかったようです。

 

なんとか説得し、2025の過去問だけは手付かずの状態で残していただきました。

 

そのはずだったのですが・・・

 

 

 

▽仕上げについて 大人たちがギスギスする1週間

 

Sさんが失点してしまう傾向のリストを作って演習前に毎回読み合わせていたのですが、それが徹底できた時は点数が高く、そうでない時は明確に点数が低く出てしまう状況でした。

1月になって過去問では合格点に近い点数をとれる日もありましたが、基本的には算数も理科も10点〜20点ほど合格水準を下回っており、それらの過去問はすべて塾で解いてきてしまっている2回目のものでした。

少しずつ改善してはいたもののミスは減らず、旗色は悪いものの、本番で最高の状態に持っていけるようにかなり細心の注意を払って指導していました。

 

私としては唯一手付かずで残っている2025年の過去問を解かせ、点数を取らせることで本物の自信を持って本番に挑んでもらおうと考えていました。

賢い子供には偽りの自信をつけることはできません。結果の裏付けのない言葉は慰めとして伝わってしまいます。

もちろん点数が低く出てしまう可能性もありましたが、それはそれで一つの成長材料にしてもらうつもりでした。

 

1月11日の日曜日、Sさんにとっての最後のメイン塾登塾日があり、私は最後にこれまで学習したことをフルに発揮してもらうために、1週間のスケジュールを組んでいました。

 

翌日、ORCA STUDYで指導を行い、夜に2025の過去問を解かせました。

結果は合格者平均を大きく上回り、私も喜んで合格答案でしょうと太鼓判を押したとき、Sさんが実は昨日解いてきたのだと白状しました。

 

しかも、前日(1月11日)に受けたものは合格点よりも20点も低く、毎回私と確認していたはずの注意事項は突発的に解いてきてしまったせいかほぼ守られていませんでした。

 

翌日、私自身Sさんの努力を無駄にしかねない行動に強い危機感を覚え、感情が抑えきれず「こんないい加減な状態で解いてきて欲しくなかった」と言葉を荒げる場面があり、Sさんは泣いて途中退室されました。

お母様も同席されていたのですが、Sさんの様子から翌日休まれました。

 

技術的な面でベストを尽くしたい私と、精神的なケアを最優先とするご家庭の方針がぶつかってしまいました。

精神的なケアを決して軽視していたつもりではありませんでしたが、申し訳ないことをしてしまったと思います。

 

そのまま続けるかどうかも迷われたようなのですが、ご両親が塾を訪ねて来られ、話し合った末翌日から指導を再開することになりました。

残りの2日で知識の総チェックをかけ、弱点をピックアップした問題演習を可能な限り行いました。

これまでの2ヶ月半で習得した新しい知識を、本番で十全に使いこなせるようにするための作業です。

ここでも新しい弱点が見つかる状態でしたが、かなり難しい立体図形の問題を解き切り、「もはや立体図形は苦手分野ではない」と太鼓判を押しました。

 

最後に注意事項のリストを持たせ、「自信を持って行ってこいと言いたいところですが、君の場合は注意事項を忘れるから最後まで気にしながら受けるのが多分1番可能性が高い」とアドバイスをし、本番へと送り出しました。

 

「後から不安な問題が見つかってしまったら即座に解決するので電話してもらって良い」と言ったら、その夜に一度だけ電話がかかってきたので、

一問解説をしました。

 

 

 

▽結果発表

 

1月17日は午前が白陵中学校、午後が滝川中学校という日程での受験となりました。

1日2校受験は本当に体力が必要です。

 

1月18日午前10時、合格発表のタイミングになるとほぼ同時に電話がかかってきました。

「あ、これは受かったな」と思い、電話に出ると「受かりました〜!」と興奮した声でお母様からご報告いただきました。

電話口に嬉し泣きの声と、Sさんの明るい声も聞くことができました。

 

ギリギリの受験は、良い結果が出ることばかりではないことは私自身何度も経験してきました。

Sさんは努力を惜しまず、しかし運も持っていたと思います。

 

午後に受験した滝川中学校は、自信がないと言っていたものの、そちらも合格をいただき、受験校は全て合格という結果となりました。

 

最終週以外にも結構厳しい指導を行う場面もあったのですが、Sさんはずっと塾で勉強したいと言ってくれていました。

それはおそらく、それだけ指導の効果を実感してくれていたということだと思います。

 

後日聞いたところによると、失点傾向のリストの注意事項の意味が本番にようやくわかったとのことでした。

あくまで結果論ですが、もしかしたら2025の過去問をよくない形で解いてきたことも、本人に危機感を持たせる意味では良かったのかもしれません。

 

努力を惜しまない生徒に出会えたことに感謝すると共に、その生徒に十分に応えられたことを誇らしく思います。

本当に嬉しい合格報告でした。

 

 

 

🔽Sさんの合格体験記