8月ごろ一度ご検討いただいていたのですが、他で検討されていた家庭教師サービスの方に行くことが決まってしまいました。

しかしそちらの指導に今一つ効果がないと感じて改めて私の方に依頼していただいたそうです。

 

吉祥女子中学校(Aライン(80%)偏差値65・四谷大塚)志望ということで、それに向けて一緒に勉強して行くことになりました。

ただ、ご依頼をいただいた時点では、正直間に合わない可能性の方が高いと感じていました。

 

なにしろ初回授業が10月27日でしたのでほぼ3ヶ月しかないといった状況で、指導前の偏差値は53(4科・四谷大塚)。

本人を見てみると理科のどの単元も抜けがかなり多い状態でした。

 

仮に理科の履修が思惑通りに行ったとしても、期間内に全単元は終わらない上に、大抵の場合は何かしらのトラブルがあるのでそれを補修して盤石な状態にするのはもっと難しいだろうと考えていたためです。

 

ただ、「ギャンブルにはなるが履修した単元が出題されたら戦える」という状態を目指すことで合格の可能性を拾う作戦で進めることにしました。

 

 

 

▽定期指導・前半戦

 

とにかく基礎がかなり曖昧な状態だったので、11月からではありましたが理科のノートをベースとした全単元の基礎チェックをかけていくことにしました。

常にノートを2単元分持ち歩かせ、塾のカリキュラムに合わせて基礎を総ざらいしていきました。

塾のカリキュラムに合わせたのは、なるべく演習に基礎を反映し、自分自身で考えて解いてもらうためです。

 

算数は主に質問教室で指導をしていましたが、それでは不十分であったため、11月後半から算数のために週2に増やしていただきました。しかし、これをチャンスと理科を優先して全単元を強引に終わらせてしまうことにしました。

ここから1回に必ず1単元理科を終わらせてから算数をやる、という指導で12月まで進んでいくことになります。

 

指導をすすめる中で、Kさんが算数が苦手な原因は

①文章と数字の意味がリンクできていない

②難しそうだと感じると解ける部分も着手しない

の2点だとわかってきましたのでその点は随時指摘改善を進めていきました。

 

12月の模試では、まだまだ志望校の水準には届かないものの算数が大きく向上。

理科はむしろ下がってしまいましたが、結果にこそ反映されていないものの、解き方などにかなり改善が見られ、成長の跡の見られる答案が作れていました。

このまま努力が表面化してくれるのも時間の問題かと思われましたので、そのままの方針で大丈夫だとお話しました。

 

成績

※掲載許可済み

 

第5回 スタート時(指導前)の成績

4科 52.96   算数 48.5   理科 54.24


第6回 12月の模試 

4科 57.46   算数 57.04   理科 52.1

 

吉祥女子 

Aライン(80%) 偏差値65

Cライン(50%) 偏差値61

(四谷大塚)

 

その後も指導方針を変えず基礎を固めていきました。

塾の正月特訓も休んで授業を依頼してくださり、なんとか一応の形で理科の基礎が完成したのが1月1日の朝でした。

 

 

 

▽6年生の成績・下がりがち問題

 

6年生は子供の意識が変わり、みんなが頑張り始める学年なので「頑張って平行線だ」とよく言われます。

特に夏以降は演習の割合が増え、それまでの成績を維持できない子供が増えます。

 

演習の質に大きな差が出てしまうわけですが、ここで大きく成績を伸ばせるかどうかは、基礎をいかに深く理解しているかにかかっています。

応用を利かせられるほど基礎を深く理解している子供は、問題を解いて例え間違えたとしても、直しをした時の理解度が高くなるからです。

 

その積み重ねの差は、すぐに表面化してしまいます。

「同じ基本問題を毎回間違える」などの兆候があれば注意が必要です。

 

Kさんも6年生でまじめに勉強したものの、基礎の穴が大きく演習の波に乗れなかったために成績が下がってしまったタイプのお子さんでした。

 

 

 

▽算数の式移動を教えるか問題

 

12月ごろ、式の移動を使うかどうかで話し合いがありました。

塾では教わっていない方法だが、このまま練習する意味があるのかと不安になられたようです。

 

算数の指導から遠ざかっていたので、すぐさま一般論として塾ではどう教えているか元同僚の算数科の講師に確認しました。

結果、「授業では教えないけれど偏差値55〜(浜学園基準)なら出来ていて欲しい」という回答だったので、教えるべきだと話しました。

 

実際にニュートン算などまさに方程式のような解き方をする単元も多く、妙なこだわりを入れる方が子供は混乱してしまうのではないかと私は思います。

ここで式の移動について安定して解けるようになったことが、12月の模試や1月に入試問題の点数に大きく反映されていくことになりました。

 

 

 

▽受験生が12月後半に遊びにいっていいか問題

 

12月22日の授業の中で寄生虫のお話をした時に、国立科学博物館の展示のお話をしたところ、Kさんが興味を持ちました。

小さい頃は何度も行ったそうなのですが、全く覚えていないということで、授業後に「明日行ってもいいか先生に聞いてほしい」とお母さんにお願いしたそうです。

私に「そんなところに行っている暇があったら勉強しろ」と言われるのではないかと心配してのことだそうです。

 

私は二つ返事でOKを出しました。

 

理科の体系的な知識が増えた今、それを見ることは本人にとってプラスの影響を与えるだろうと思われたことと、根をつめている時こそ質のよい休憩は大切だと考えたためです。

 

12月でも1月でも、休息が重要なファクターであることは間違い無いと私は考えています。

 

 

 

 

 

▽定期指導・後半戦

 

1月2日から過去問演習が始まりました。

それから着手した最初の過去問(吉祥女子2022)がボロボロ。

過去に同じ問題をといたことがあったため、2巡目の演習でしたが、理科が38点(70点満点、合格者平均点53.4点)で肩を落とすKさん。

おそらく本人なりに成長を感じていただけに、結果に結び付かなかったこの状況はかなり辛かったと思います。

 

しかし、私から見ればこの結果はある意味必然でした。

それは実力がないという意味ではなく、知識が完成したばかりのお子さんが、「知識をしっかり使い、問題文をよく読んで思考して解く時間配分に慣れておらず、思っていたより時間が足りなくなる」というのは実はよくあることだからです。

 

それまでは知識がなく、深く考えることができていなかったからこそ時間配分に余裕があったのが、処理できる情報が増えたことで同じ感覚で解くと間に合わなくなるのです。

これは過去問を時間配分を意識して解いていくことである程度すぐに改善するだろうと考えていました。

 

また、その過去問を丁寧に解析し、間違いを分類していった結果、「その時点での実力でも、取るべきところが取れていれば合格平均点に到達する」ということが、本人に実感として伝わってくれたように思います。

おかげでボロボロの点数を取ってしまった次の過去問演習も前向きな気持ちで取り組んでくれたようです。

 

そして実際、1月3日には2021年吉祥女子2回目が57点(70点満点、合格者平均点54.1点)と2巡目ではあるものの合格者平均点を上回る点数を取ってくれました。

11月12月を忍耐強く基礎を完成させる方針に付き合ってくださったからこそのこの上げ幅だったと思います。

 

理科の方はこの後も地道な基礎チェックを続けており、基礎の穴が見つかっては埋める作業をほぼ毎日繰り返していました。

ただ、一方で算数の状況がかなり厳しく、伸びが停滞してしまいました。

この頃から算数の安定なくして合格率の上昇はないと感じるようになりました。

 

その後、過去問をこなしていくことでかなり合格点に近い点数が取れるようになってきたものの、あと1歩が埋まらない状況が続きました。

そこで複数の過去問解析の結果から、理科の化学計算、算数の速さ・図形に穴があることがわかりました。

 

しかし、それらを埋める時間がないまま1月の前哨戦が始まりました。

 

1/11、星野学園 合格

1/13、淑徳与野 合格

1/14、浦和明の星 不合格

 

浦和明の星は合格の可能性もあるとは思っていただけに非常に残念でしたが、この時点での実力の穴を考えると致し方がない所ではありました。

 

1月の結果を受けて、ここから特に演習面で問題のある単元の強化に取り掛かりました。

質そのものを短期間で変えるのは本人にかなりの負荷がかかることが予想されましたが、躊躇している時間は残されていません。


ここまで来ると私も「この子がここまで頑張ってくれているのだからなんとかねじ込みたい」という気持ちが強くなっていました。

 

そこで、「本人の解き方を見ながらの長時間指導」を提案させていただきました。

本人の発想の間違いを正し、習得していない解法パターンを意図的に短期間で習得させることが必要だと考えたからです。

解きながら覚えていく、では残りの期間では間に合わないと感じていました。

 

長時間指導の初日、化学計算の演習から着手しました。

化学計算の弱点は、反応式を書かない(書けない)ことと演習不足によるものだとはっきりしていたので、とにかくそれらを徹底させ、演習と基礎知識のリンクに成功。

正解率が飛躍的に向上し、本人も成長を実感したようです。

 

次に、算数の速さと図形について特に解き方をチェックしながら特訓、という日が続き、基礎を3周して即解法パターンが出てくる状態を作りました。

特に「距離・速さ・時間」の比の変換に最後まで手間取りましたが、手が止まったところで「この比は何に変換できる?」と考えさせ続け、どうにか算数の穴がかなり埋まってきたなというところで入試本番となりました。

 

ちなみに理科の基礎チェックは1/31まで続きました。

1月中盤には見られた理科の穴も、この頃にはかなり少なくなってきていたように思います。

 

今思い返すと、本当にギリギリまで基礎しかやっていませんね 笑

 

しかし過去問を見てそれで十分だと判断しました。

 

社会にも不安要素があったのですが、私には教えられないので、SAPIX時代の先輩講師に2コマほど依頼しました。

開成・筑駒コースの授業も担当していた私の信頼する講師で、こちらも「わかりやすい!」と気に入ってくれたようです。

 

この時点で問題を解くKさんの様子を見て、吉祥女子に受かる可能性は十分ある状態だと判断できました。

私から見た合格の可能性は不安要素込みでギリギリ五分まで持ってこられたと見ていました。

 

 

 

2/1 吉祥女子 不合格 山脇 合格

本命校の不合格を受けて、Kさんはボロボロ泣いていたそうです。

精神面で、2日目を万全に受けられないのではないかと心配したものの、就寝後のご連絡だったので信じて待つことにしました。

 

2/2 吉祥女子 合格

お母様から「LINE見てください〜!」のメッセージ。

「これは受かったか・・・?!」と思いましたが、空気を読むのが苦手目の私は不合格の可能性もありうると考え直し、恐る恐る「こんばんは」とお返事。

結果は見事に合格でした。心臓ニワルイヨ・・。

 

お電話をかけさせていただくと、「合格しました、嬉しいです。先生とやった速さの問題がでて、しかも解けました!」と明るい声で報告してくれました。

電話口で小さくガッツポーズしていたのは内緒です。

 

この短期間での逆転劇は、何か一つでも欠けていれば実現できませんでした。

お母様はずっとKさんの横にいて私の授業を一緒に聞いていらっしゃいましたし、Kさんは本当に素直な性格で、コツコツ勉強する真面目さと、叱られた時でもわからないところを誤魔化さない強さを持っていました。

何より私の方針を塾のカリキュラムより優先して全面的に信頼し、全てを賭けてくださった英断が大きかったと思います。

 

▽合格体験記

 

 

 

 

▽後日談

 

お母様から、こちらを送っていただきました。

「1年間で偏差値を21.2アップ!吉祥女子合格」と書いてあるのがKさんです。

 

東京の某校舎の生徒の中で1番成績が伸びたみたいですね。

 

もちろんKさんの頑張りあってのことなのですが・・・いや〜、嬉しい!😆