先日、一本の木が切られた。
その木は私の住んでいる地区のシンボル的存在であった。
初めてこの地区に不動産屋さんに連れられて来たときから
とても印象に残る木だった。
それが縁だったのか、この地区に仮ながら居を構えることになった。
私は思う。
この木はこの地区の守り神だったのではないかと。
何かが住んでいそうなそんな独特な風貌と雰囲気を持っていた。
推定150歳の椋の木。
ちょうど江戸末期、篤姫のいた頃に誕生。
話によると植えていないのにどこからともなく
種がやってきて自然に生えたそうである。
その地にはずっと役場があって地域の拠点になっていたようである。
つまりはこの木はこの土地の住民の歴史を見てきたことになる。
地域住民で守ろうという運動もあったそうだが
木を移すにしても多額の費用がかかるので断念したそうだ。
数日前、その木の前を通った。
木が1mくらいの高さにまで切られていた。
その翌日はもう地面すれすれに切り株が残るだけだった。
ここにきて2年位にしかならないが
知らない土地での目印になってくれたり
知らす知らずお世話になった。
だからその切り株を見るにつけても涙が滲んで来る。
たかだか木と思われるかもしれないがこの土地の歴史の
証人を失ったということで、なにかとてつもない
大事なものがなくなってしまったという喪失感を感じずにはいられない。