では、前記事の続き……

連続ついのべシリーズ、
「聖美といた夏」
13~25です。



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・13・
#twnovel 楽園大学付属病院。聖美がもともと入院していた病院らしい。聖美についての事情は伝わっていたらしく、すぐに救急車はこの病院に到着した。動かなくなった聖美と俺を乗せて。…病院で待っていたのは、薄汚れた白衣に長い黒髪、銀縁メガネの、あまり医師っぽくない若い女性だった。


・14・
#twnovel 「聖美の担当の、皿田だ。すまないコトをした」彼女は何もかも知っている様子だった。「聖美の体に盗聴器と発信器がつけてあったからね。事情はわかってる」冷たい表情で彼女は言った。「…なら、なぜ!なぜ救えなかった!?」俺は彼女に掴みかかろうとした。「…すまない。謝るよ」


・15・
#twnovel 「聖美は実験体だったんだ」彼女は言った。「聖美は11歳の時に、一度死んでいる」俺は驚く…。「そんな、まさか…」「まあ、死んだといっても脳死状態だったんだが。それを回復させるために、脳を再生する実験をしていた。記憶を人工的に作って彼女に与え、脳を復活させる実験だ」


・16・
#twnovel 「しかし、うまくいかなかったんだ!なぜか「死にたい」という意識が再構築させた脳からは出てしまう…」彼女は冷ややかに横たわる聖美を見る。「だから試しに「歌いたい」という意識を与えてみたんだ。すると、意外なほど上手く成長した。しかし…欲求不満で脱走してしまってね」


・17・
#twnovel 「そういうコトだったのか…」俺はただ、聖美を見つめるコトしかできなかった。「再生はできないんですか?」「…無理だな。肉体の損傷が激しい。強い薬を与えすぎてしまったな。彼女のコトはあきらめてくれ」冷たく皿田は言い放つ。「…最後に、キスくらいならしてもいいよ?」




・18・
#twnovel 自宅に戻った。最悪な気分だった。ひどく疲れていた。俺は泥のように眠った。…夢。夢の中でも、聖美は私に歌いかける。「おっはよう♪おっはよう♪」…俺は目を覚ました。そうだ!パソコンを立ち上げ、録音した聖美の歌声を再生させる。素晴らしい歌声が再生される…!俺は泣いた。


・19・
#twnovel 聖美の歌を何回も聞き直して、俺は思った。彼女はあの日、死を覚悟していたんじゃないか?「…きっと、そうだ!」朝に2倍量の薬を飲んで、薬がもう無いというコトを知っていながら…全力を込めて歌ったんだ。命を懸けて。考えれば考えるほど、聖美を深く愛さずにはいられなかった。


・20・
#twnovel 彼女の歌を完成させるコトを決めた!それから俺は3日間、ほとんど寝ずに、何も食べずに曲作りに没頭した。聖美の歌声を一つの作品として残すために、全てのチカラを使って…完成させた!俺はネットの動画投稿サイトに、その歌をアップした。そして疲れ果て、再び泥のように眠った。


・21・
#twnovel 2日間で1万アクセス。トップクラスの作曲者にはかなわないが、俺にとっては十分な反応だった。聖美の完璧な歌声に、「コレって新しいボーカロイド?」とかいうコメントがついたりした。「感動」とか「泣ける」というコメントが幾つもついて、俺はほとんど狂喜した。最高だ。




・22・
#twnovel 突然俺の家のチャイムが何回も鳴らされた。午前2時。…こんな時間に?不審に思いつつドアを開ける。そこには、白衣を着た長い髪の女性…。皿田だ。「聴いたよ、聖美の歌!素晴らしいじゃないか!」上気した笑顔で皿田は俺に言う。「何の様だ?」「…聖美を生き返らせてみないか?」


・23・
#twnovel 「何だって!?」訊き返す。「感動したよ。あんな曲…なかなか作れないだろう」もう一度、訊く。「生き返らせるって、どういうコトだ!?」「…彼女の意識データは全て、大学のコンピュータの中に残っている。396TBのデータだ。それをキミに預けてみようかと思ったのさ」


・24・
#twnovel 396TB!?膨大なデータだ。「396TBの記憶容量を確保できれば、キミのパソコン上に聖美の意識を再生できる。用意できるか?」皿田は微笑みながら言い放つ。確かに、確保するには大変な容量だ。しかし無理な容量ではない。「用意する!どんな手を使ったって、用意するさ!」





・25・
#twnovel …あれから2年。今日も聖美は俺のパソコンの中で歌っている。好きな歌を好きに歌って、幸せそうだ。「おっはよう♪おっはよう♪」「おはよう、聖美。また、夏が来るよ。キミの大好きな季節だね」「うん、大好き!だって、アナタと出会えた季節だもの!」最高の笑顔で、聖美は歌う。



・終・



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というわけで、思いもかけず長いついのべシリーズになりました。
さらに、聖美と砂音がコンビニに行くシーンとか、砂音が皿田を殴るシーンとか……
あるのですが、はしょりました。
そのうち、またついのべとして書くかもしれません。

エピローグも、いろいろ考えられるし。



そして、一番肝心な聖美と砂音の出会いのシーン!
コレは、まだ決まってません……
(^-^;)

最初のシーンが決まってなくても、書き始めるコトができるのも、ついのべならでは。

今回のついのべシリーズで、さらに「ついのべの可能性」を感じさせられましたね!

きっと、「聖美といた夏」の追加シーンを、ついのべとして書いてしまうコトでしょう。



そして、最初のキッカケを作ってくれたYさん、本当にありがとうございました!
m(_ _)m
\(^O^)/
m(_ _)m



というわけで、まだまだついのべを書き続けます。

へそ天!
ゆないキズトでした!



……あ、「TB」というのは「テラバイト」の略で、1TBは1024GB(ギガバイト)です。
396GBは、約40万GB……。
膨大なデータ量ですね。

でも実際、人間の脳をハードディスクで再現しようとしたら、どれくらいになるんでしょうかねえ?