「あんたは、「何もしなかった」と言うけれど、「何もしない」ことが罪になることだってあるんだぜ。」川北は言った。「……何もしてないわけじゃない。待っていただけだ。」葛西は静かに言った。「……それが、ダメだったと言うんだよ!」川北は声を荒げた。 #twnovel
「こんなにもこの世界は綺麗なのに、僕達は何をやっているのだろうね?」私は言った。「……仕方ないさ。仕事だ。」川北が答えた。「仕事か。」「醜い仕事だ。」「汚い仕事だね。」「ああ。」……ゆるやかな春の日の午前中。 #twnovel
川北の弾くギターは最高だった。ディストーションを深く効かせながら、なぜか決して「汚い」音にはならない。延々と伸び続けるチョーキング・ヴィブラート……かと思えばザクザクとしたミュート・リフ……。そして奴のギターの音は、全体的には「甘い」サウンドだった。 #twnovel
「まず「言ってみる」コトが大切で、言わなきゃ始まらない、と思うんだ。」「議論するコトは「正しい」と思うよ。話し合わなきゃ始まらない。……「議論」を恐れる必要はないよ。」「だからツィッターも「正しい」と思うんだ。」海人さんは言った。 #twnovel
海人さんは熱い人だ。彼の人生はいつも「海」と共にある。ライフセーバーをやっていて、サーフィン、ビーチフラッグ、そして釣りを「愛して」いる。本名は「佐々木春市」というのだが、「春市・ハルイチ」→「るーいち・いっちゅん」→「うみっちゅ」→「うみんちゅ・海人」になった。 #twnovel
川北は食べても食べても太らない体質だった。ある時、あるハンバーガーショップでハンバーガーが1個60円だった。私の見ている前で川北はそれを12個頼み、「一気喰い」を見せてくれた。……アホだった。 #twnovel
川北は、ギターを客席に投げた!「……お、おいやめろっ!」葛西が驚いて叫ぶ。/……川北はそのまま……客席にダイヴした! #twnovel
それでも、葛西は怒るコトなく、冷静に言った。「…まあ、ライヴは成功だったよ。川北のパフォーマンスのおかげでな。」「パフォーマンス?…パフォーマンスじゃねえよ、わかってねえなあ、葛西は。」川北は笑顔だった。「…ギターを投げるのはアブナイからやめなよ?」私は言った。 #twnovel
「「前例が無い」というなら、俺が「前例」になってやろう。」…不敵にも川北は微笑む。「それで「前例」になれたら、「偉人」だろう?」「俺が、「前例」だ。」/海人さんは、そんな川北を見て、穏やかに笑ってた。/焚き火の炎が、みんなの顔をオレンジ色に照らしていた。 #twnovel
「まだ足りない……。」/蛍は、静かに言った。/「まだ足りない……?まだ食べるの?」/「……うん……。」/「良く食べるなあ、蛍は。……まあ、良いコトだ。」海人さんは、蛍の皿にカレーを足した。/「……まだ、足りない……。」蛍は言った……。 #twnovel
蛍は、不思議な子だ。もともとは山下公園のホームレスのじいさんと一緒に居た子で……ある時、そのじいさんが亡くなってしまってから、海人さんと葛西、時には川北の家などを転々と泊まり歩きながら暮らしている。義務教育期間は過ぎてしまった……。学校に通わないまま。 #twnovel
晴美は尾崎豊が好きだった。いつも彼女の部屋には尾崎豊の歌が流れていた。/「飽きないの?」と一度私は聞いたコトがある。/「飽きないよ。もうアタシの皮膚のようなモノだよ。オザキの歌は。」/確かに彼女の皮膚はいつも熱っぽく、湿ってた。 #twnovel
「……なら死ねよ!死んじまえよ!」…川北は、「死にたい。」と、静かにつぶやいた蛍に向かって言った。「そんなコトバは俺の前で二度と言うな!…生きてなきゃダメじゃないか…。」蛍は、川北から顔を背けて泣いた。静かに。私はいたたまれなくなって、その場を離れてしまった。 #twnovel
「うるせえ!アンタらは求め続けたのかよ?理想を、幸福を……求め続けたのかよ!?」川北は井上さんに言った。「…アンタらが…求め続けなかったから、こんな社会になっちまったんじゃないのかよ?本当に、本気で求め続けたのかよ!?」「……。」井上さんは気圧されていた。 #twnovel
「殴らせろよっ!」川北は言った。「ちょ、ちょっと待て川北っ!」私は止めようとしたが、それより速く川北の右拳は井上さんに向かって…弾き返された!「うぇっ!?」川北が驚く。そして井上さんは川北のアゴにアッパーカットを入れた!…倒れる川北。「サラリーマンをなめるなよ」 #twnovel
「いつまで眠っているつもりだ!?」川北は観客に言う。「答えろよ、いつまで眠っているつもりなんだよっ!!?」「……眠っているコトさえ、意識できていないのか!?」「…なら、ずっと眠っているしかないんだろうな…」川北はギターのボリュームを上げて、掻き鳴らす! #twnovel
川北はギターを掻き鳴らす!その音は全くのノイズで、爆音だった……!しかし海人さんがカウントを入れ、葛西が安定したベースを弾き始めると……それは「音楽」に変化していく。……「光」だ。「光」が見えるんだ。 #twnovel
川北は歌い出す。「起こしてやるよ、起きないのなら!」「起こしてやるよ、起きないのなら!」私もあわせて歌う。「起きるんだ!馬鹿じゃないのか?起きるんだ!馬鹿じゃないだろう?」……永遠に続いて欲しい、瞬間だった。 #twnovel
「迷ってるヒマなんてないだろっ!?」…川北は言ってた。「まず、決めちまえよ。どっちかに決めて、やってみればいい。間違っていれば、やり直せばいいだけだ。」「…そうか。」葛西は決心したようだ。「侵入する。研究所に。」「…だろうな。やるしかないだろう。」私も決心した。 #twnovel
「戦えよ!戦っちまえよ!」その「ブラックボックス」から川北の声が響く。/「戦えよ!戦っちまえよ!……「敵」が誰だかわかってるんなら。」「……死んだ後も俺達を煽るとは……。大したヤツだな、川北は。」海人さんは穏やかに笑いながら言った。 #twnovel
なんと「ブラックボックス」はただの「ブラックボックス」じゃなかった!葛西が驚く。「バカなフリして、ここまでやってたのか。川北の野郎!」/「ワクチン」だ。ついに見つかった!「ワクチン」!/「複製、できそうか?」私は葛西に聞く。「理論は確かだ。あとは、材料だけだ。」 #twnovel
「歌いたい。」急に、葛西は言った。「……え、だって葛西……歌は得意じゃないじゃん。」私は言ってしまった。「歌いたい歌があるんだ。」葛西はいつものように無表情だった。「……いいんじゃないの?歌ってみれば。失敗しても知らないけどな。」川北は軽く笑いながらそう言った。 #twnovel
川北は葛西にイタズラをするのが大好きだった。ある時は、ラーメン屋で葛西がトイレに立った時に、食べかけの葛西のラーメンにラー油をたっぷり入れて……「ラー油ラーメン!」と葛西に食べさせたりした。意外に、葛西は笑ってた。私も、笑えたんだ、そんなやりとりに。 #twnovel
蛍は絵を描く。海の絵を。真剣に。いつも同じ砂浜で。「今日の海はどう?」私はそばできいてみた。「…………小さい、気がする。」「小さい?」「そうだよ。……海はね、毎日違うんだ。」……今日は素晴らしい青空で、水平線もくっきり見えた。 #twnovel
「アンタらのやってるコトと言ったら…奪い合って、憎しみ合ってるだけじゃないか!」川北は激昂していた。「そんなヤツらの言ってるコトなんか、信じられるかよ!?…信じられるかよ!?」井上さんと木下社長は、川北の剣幕にあっけにとられていた。「帰ろう、川北。」私は言った。 #twnovel
「メジャーデビュー、ダメになっちゃったね。」私は川北に言った。「……まあな。すまないな。」「うん……。」「だが自分の歌いたい歌を歌えないんなら、メジャーでやる意味は全く無いのさ。そうだろう?」「ああ、そうだね。」……私は珍しく笑顔だったんだと思う。あの5月。 #twnovel
「何もしないよりは、少しでもあがいたほうがマシだろう!?……何ですぐにあきらめちゃうんだよっ!?」川北は叫んだ。みんなに。 #twnovel
「気にするな。アンタの本当にやりたいコトはそんなコトじゃなかったハズだ。」 #twnovel
「蛍がいなくなった」…川北は珍しく蒼ざめていた。「ちょっと待って、海人さんは?葛西は?」「……二人とも探してくれてる。」私は思い当たった。「…きっと、あの歩道橋だ!」急いでコートを着て外へ出る。「あそこなら走っていった方が早いよ」…川北の足どりはふらついていた。 #twnovel
「書けなくなった……」葛西は言う。「もうダメかもしれない。」……私は葛西をそっと後ろから抱きしめ、言った。「書けるさ。……ちょっと外でも歩こうよ?」「……ああ。」葛西は珍しく素直だった。 #twnovel
「叫んでみたいんだ。川北みたいに。」葛西は言った。「珍しいね、葛西。」蛍は葛西に言う。「…いいんじゃない?葛西が叫べば、きっと新しい曲ができるよ!」私は心から言った。海人さんがゆっくりドラムを叩き出す。私はテルミンを操る。蛍がギターを弾く。そして葛西が…叫んだ! #twnovel
「蛍は、川北のコトが好き?」ついに私は訊いてしまった。「…嫌いじゃないよ。ただ…」「…ただ、なに?」「本気すぎて怖い時があるの。」「そうか……。」「…あたしは、南さんが好き!」急に蛍は、私に真剣なカオで言った。「…ええ!?」 #twnovel
葛西と川北は時々、お互いに激しい罵り合いはするが……実際に手を上げたコトは無い。つまり二人は「議論」するコトの価値を知ってるんだ。そしてお互いを尊重しているから「本当の議論」ができるっていうコトも。……それを知らないヤツらが多すぎる、と、私は思う。 #twnovel
「明確な敵がいるっていうコトは実は幸せなコトじゃないか?」川北は言った。「……井上さん、のコトか?」葛西は訊いた。「……いや、もっと大きな敵だよ。アンタも含まれてるかもな。」川北は笑った。 #twnovel
「アンタらがこんな世界にしちまったんだろ!?…そのクチでよく言うぜ」川北は井上さんに言った。「こんな世界にしておきながら、アンタらはもう何もしないっていうのか?勝手すぎないか?」井上さんは絶句だ。「動いてくれよ。アンタにはまだそのチカラがあるハズだ」真剣な川北。 #twnovel
「こんなに世界を腐らせておいて、投げ出しちまうのかよっ!」川北は井上さんに詰め寄った。「……また、殴られたいのか?」井上さんは冷静だ。「いいよ。殴りたいんだったら殴れよっ!それでこの腐った世界が変わるんならな」川北は本気だ。 #twnovel
「この日本の状態に絶望していないって?甘い認識力だな」葛西は川北に言った。「絶望したところでどうなる?俺が変えてみせるよ、この状態をさ。」川北は言い返した。「じゃあ、やってみせろよ」「やってみせるさ。」川北と葛西は言い争いをしながらも、楽しんでいるように見えた。 #twnovel
歌おう、私は私の歌を。そして川北は川北でギターを弾くだろう。葛西は堅実にベースを弾くだろう。海人さんは派手にドラムを叩いてくれる。……充分だ。充分すぎる。「……栄光だ。吼えよう、吼えよう!」//咆哮。 #twnovel
…………
というわけで、いきなりですが、
「烏賊川先生」に続く連続twnovelシリーズ、
「川北と葛西と私(仮題)」
の今までをだいたいまとめてみました。
一番初めの一作目を書いたのがきっかけで、名前も適当に決めました。
しかし、川北に好き勝手なコトを言わせるのが楽しくなってきて……
だんだんキャラが立ってきて、
登場人物もどんどん増えてしまいました。(笑)
今ところの登場人物は……
私
川北
葛西
海人さん
蛍
晴美
井上さん
木下社長
……というところかな。
……実はこの登場人物全員、性別が決まってません!(笑)
あえて決めないのもアリなのかな……と、思いまして。
まだまだツィッター上で書いています。
外伝的なストーリーもありますので、それはまた別記事で。
へそ天!
ゆないキズトでした!
「こんなにもこの世界は綺麗なのに、僕達は何をやっているのだろうね?」私は言った。「……仕方ないさ。仕事だ。」川北が答えた。「仕事か。」「醜い仕事だ。」「汚い仕事だね。」「ああ。」……ゆるやかな春の日の午前中。 #twnovel
川北の弾くギターは最高だった。ディストーションを深く効かせながら、なぜか決して「汚い」音にはならない。延々と伸び続けるチョーキング・ヴィブラート……かと思えばザクザクとしたミュート・リフ……。そして奴のギターの音は、全体的には「甘い」サウンドだった。 #twnovel
「まず「言ってみる」コトが大切で、言わなきゃ始まらない、と思うんだ。」「議論するコトは「正しい」と思うよ。話し合わなきゃ始まらない。……「議論」を恐れる必要はないよ。」「だからツィッターも「正しい」と思うんだ。」海人さんは言った。 #twnovel
海人さんは熱い人だ。彼の人生はいつも「海」と共にある。ライフセーバーをやっていて、サーフィン、ビーチフラッグ、そして釣りを「愛して」いる。本名は「佐々木春市」というのだが、「春市・ハルイチ」→「るーいち・いっちゅん」→「うみっちゅ」→「うみんちゅ・海人」になった。 #twnovel
川北は食べても食べても太らない体質だった。ある時、あるハンバーガーショップでハンバーガーが1個60円だった。私の見ている前で川北はそれを12個頼み、「一気喰い」を見せてくれた。……アホだった。 #twnovel
川北は、ギターを客席に投げた!「……お、おいやめろっ!」葛西が驚いて叫ぶ。/……川北はそのまま……客席にダイヴした! #twnovel
それでも、葛西は怒るコトなく、冷静に言った。「…まあ、ライヴは成功だったよ。川北のパフォーマンスのおかげでな。」「パフォーマンス?…パフォーマンスじゃねえよ、わかってねえなあ、葛西は。」川北は笑顔だった。「…ギターを投げるのはアブナイからやめなよ?」私は言った。 #twnovel
「「前例が無い」というなら、俺が「前例」になってやろう。」…不敵にも川北は微笑む。「それで「前例」になれたら、「偉人」だろう?」「俺が、「前例」だ。」/海人さんは、そんな川北を見て、穏やかに笑ってた。/焚き火の炎が、みんなの顔をオレンジ色に照らしていた。 #twnovel
「まだ足りない……。」/蛍は、静かに言った。/「まだ足りない……?まだ食べるの?」/「……うん……。」/「良く食べるなあ、蛍は。……まあ、良いコトだ。」海人さんは、蛍の皿にカレーを足した。/「……まだ、足りない……。」蛍は言った……。 #twnovel
蛍は、不思議な子だ。もともとは山下公園のホームレスのじいさんと一緒に居た子で……ある時、そのじいさんが亡くなってしまってから、海人さんと葛西、時には川北の家などを転々と泊まり歩きながら暮らしている。義務教育期間は過ぎてしまった……。学校に通わないまま。 #twnovel
晴美は尾崎豊が好きだった。いつも彼女の部屋には尾崎豊の歌が流れていた。/「飽きないの?」と一度私は聞いたコトがある。/「飽きないよ。もうアタシの皮膚のようなモノだよ。オザキの歌は。」/確かに彼女の皮膚はいつも熱っぽく、湿ってた。 #twnovel
「……なら死ねよ!死んじまえよ!」…川北は、「死にたい。」と、静かにつぶやいた蛍に向かって言った。「そんなコトバは俺の前で二度と言うな!…生きてなきゃダメじゃないか…。」蛍は、川北から顔を背けて泣いた。静かに。私はいたたまれなくなって、その場を離れてしまった。 #twnovel
「うるせえ!アンタらは求め続けたのかよ?理想を、幸福を……求め続けたのかよ!?」川北は井上さんに言った。「…アンタらが…求め続けなかったから、こんな社会になっちまったんじゃないのかよ?本当に、本気で求め続けたのかよ!?」「……。」井上さんは気圧されていた。 #twnovel
「殴らせろよっ!」川北は言った。「ちょ、ちょっと待て川北っ!」私は止めようとしたが、それより速く川北の右拳は井上さんに向かって…弾き返された!「うぇっ!?」川北が驚く。そして井上さんは川北のアゴにアッパーカットを入れた!…倒れる川北。「サラリーマンをなめるなよ」 #twnovel
「いつまで眠っているつもりだ!?」川北は観客に言う。「答えろよ、いつまで眠っているつもりなんだよっ!!?」「……眠っているコトさえ、意識できていないのか!?」「…なら、ずっと眠っているしかないんだろうな…」川北はギターのボリュームを上げて、掻き鳴らす! #twnovel
川北はギターを掻き鳴らす!その音は全くのノイズで、爆音だった……!しかし海人さんがカウントを入れ、葛西が安定したベースを弾き始めると……それは「音楽」に変化していく。……「光」だ。「光」が見えるんだ。 #twnovel
川北は歌い出す。「起こしてやるよ、起きないのなら!」「起こしてやるよ、起きないのなら!」私もあわせて歌う。「起きるんだ!馬鹿じゃないのか?起きるんだ!馬鹿じゃないだろう?」……永遠に続いて欲しい、瞬間だった。 #twnovel
「迷ってるヒマなんてないだろっ!?」…川北は言ってた。「まず、決めちまえよ。どっちかに決めて、やってみればいい。間違っていれば、やり直せばいいだけだ。」「…そうか。」葛西は決心したようだ。「侵入する。研究所に。」「…だろうな。やるしかないだろう。」私も決心した。 #twnovel
「戦えよ!戦っちまえよ!」その「ブラックボックス」から川北の声が響く。/「戦えよ!戦っちまえよ!……「敵」が誰だかわかってるんなら。」「……死んだ後も俺達を煽るとは……。大したヤツだな、川北は。」海人さんは穏やかに笑いながら言った。 #twnovel
なんと「ブラックボックス」はただの「ブラックボックス」じゃなかった!葛西が驚く。「バカなフリして、ここまでやってたのか。川北の野郎!」/「ワクチン」だ。ついに見つかった!「ワクチン」!/「複製、できそうか?」私は葛西に聞く。「理論は確かだ。あとは、材料だけだ。」 #twnovel
「歌いたい。」急に、葛西は言った。「……え、だって葛西……歌は得意じゃないじゃん。」私は言ってしまった。「歌いたい歌があるんだ。」葛西はいつものように無表情だった。「……いいんじゃないの?歌ってみれば。失敗しても知らないけどな。」川北は軽く笑いながらそう言った。 #twnovel
川北は葛西にイタズラをするのが大好きだった。ある時は、ラーメン屋で葛西がトイレに立った時に、食べかけの葛西のラーメンにラー油をたっぷり入れて……「ラー油ラーメン!」と葛西に食べさせたりした。意外に、葛西は笑ってた。私も、笑えたんだ、そんなやりとりに。 #twnovel
蛍は絵を描く。海の絵を。真剣に。いつも同じ砂浜で。「今日の海はどう?」私はそばできいてみた。「…………小さい、気がする。」「小さい?」「そうだよ。……海はね、毎日違うんだ。」……今日は素晴らしい青空で、水平線もくっきり見えた。 #twnovel
「アンタらのやってるコトと言ったら…奪い合って、憎しみ合ってるだけじゃないか!」川北は激昂していた。「そんなヤツらの言ってるコトなんか、信じられるかよ!?…信じられるかよ!?」井上さんと木下社長は、川北の剣幕にあっけにとられていた。「帰ろう、川北。」私は言った。 #twnovel
「メジャーデビュー、ダメになっちゃったね。」私は川北に言った。「……まあな。すまないな。」「うん……。」「だが自分の歌いたい歌を歌えないんなら、メジャーでやる意味は全く無いのさ。そうだろう?」「ああ、そうだね。」……私は珍しく笑顔だったんだと思う。あの5月。 #twnovel
「何もしないよりは、少しでもあがいたほうがマシだろう!?……何ですぐにあきらめちゃうんだよっ!?」川北は叫んだ。みんなに。 #twnovel
「気にするな。アンタの本当にやりたいコトはそんなコトじゃなかったハズだ。」 #twnovel
「蛍がいなくなった」…川北は珍しく蒼ざめていた。「ちょっと待って、海人さんは?葛西は?」「……二人とも探してくれてる。」私は思い当たった。「…きっと、あの歩道橋だ!」急いでコートを着て外へ出る。「あそこなら走っていった方が早いよ」…川北の足どりはふらついていた。 #twnovel
「書けなくなった……」葛西は言う。「もうダメかもしれない。」……私は葛西をそっと後ろから抱きしめ、言った。「書けるさ。……ちょっと外でも歩こうよ?」「……ああ。」葛西は珍しく素直だった。 #twnovel
「叫んでみたいんだ。川北みたいに。」葛西は言った。「珍しいね、葛西。」蛍は葛西に言う。「…いいんじゃない?葛西が叫べば、きっと新しい曲ができるよ!」私は心から言った。海人さんがゆっくりドラムを叩き出す。私はテルミンを操る。蛍がギターを弾く。そして葛西が…叫んだ! #twnovel
「蛍は、川北のコトが好き?」ついに私は訊いてしまった。「…嫌いじゃないよ。ただ…」「…ただ、なに?」「本気すぎて怖い時があるの。」「そうか……。」「…あたしは、南さんが好き!」急に蛍は、私に真剣なカオで言った。「…ええ!?」 #twnovel
葛西と川北は時々、お互いに激しい罵り合いはするが……実際に手を上げたコトは無い。つまり二人は「議論」するコトの価値を知ってるんだ。そしてお互いを尊重しているから「本当の議論」ができるっていうコトも。……それを知らないヤツらが多すぎる、と、私は思う。 #twnovel
「明確な敵がいるっていうコトは実は幸せなコトじゃないか?」川北は言った。「……井上さん、のコトか?」葛西は訊いた。「……いや、もっと大きな敵だよ。アンタも含まれてるかもな。」川北は笑った。 #twnovel
「アンタらがこんな世界にしちまったんだろ!?…そのクチでよく言うぜ」川北は井上さんに言った。「こんな世界にしておきながら、アンタらはもう何もしないっていうのか?勝手すぎないか?」井上さんは絶句だ。「動いてくれよ。アンタにはまだそのチカラがあるハズだ」真剣な川北。 #twnovel
「こんなに世界を腐らせておいて、投げ出しちまうのかよっ!」川北は井上さんに詰め寄った。「……また、殴られたいのか?」井上さんは冷静だ。「いいよ。殴りたいんだったら殴れよっ!それでこの腐った世界が変わるんならな」川北は本気だ。 #twnovel
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歌おう、私は私の歌を。そして川北は川北でギターを弾くだろう。葛西は堅実にベースを弾くだろう。海人さんは派手にドラムを叩いてくれる。……充分だ。充分すぎる。「……栄光だ。吼えよう、吼えよう!」//咆哮。 #twnovel
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「烏賊川先生」に続く連続twnovelシリーズ、
「川北と葛西と私(仮題)」
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一番初めの一作目を書いたのがきっかけで、名前も適当に決めました。
しかし、川北に好き勝手なコトを言わせるのが楽しくなってきて……
だんだんキャラが立ってきて、
登場人物もどんどん増えてしまいました。(笑)
今ところの登場人物は……
私
川北
葛西
海人さん
蛍
晴美
井上さん
木下社長
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……実はこの登場人物全員、性別が決まってません!(笑)
あえて決めないのもアリなのかな……と、思いまして。
まだまだツィッター上で書いています。
外伝的なストーリーもありますので、それはまた別記事で。
へそ天!
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