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今年の芥川賞受賞作、津村 記久子さんの
「ポトスライムの舟」
を読んでみました。

あ、写真は「文藝春秋」誌です。
芥川賞はこの雑誌が主催なので、この雑誌に全文掲載されるのですね。
私もさすがに毎号買っているわけではなく、たまたま「芥川賞全文掲載」というのが新聞広告に載っていたので今回、買ってみました。



それで、「ポトスライムの舟」の感想ですが……
ちょっと暗い作品ですが、最後はすがすがしいです。

作者の津村記久子さんはまだ30歳ということで、「30歳の女性」ならではの作品になっています。

「ポトスライム」って、私は最初
「ポト・スライム」というスライムの一種かな、と思ったんですが(笑)、
「ポトス・ライム」なんですね。(^-^;)
「ポトス」という植物の一種みたいです。
私の常識力はこれくらい……(^-^;)



ストーリーは、
化粧品工場に契約社員として働く29歳の独身女性「ナガセ」が、
工場に貼られた世界一周旅行のポスターを見て、迷いながらも世界一周旅行の代金、163万円を貯めてみよう、と思い立つ……
というところから始まっていて、そこから彼女の日常が淡々と描写されるという内容になっています。

この主人公の「ナガセ」、とにかく働く人で、工場の仕事が終わった後は、友人の喫茶店で働き、
土曜日はパソコン教室の講師をして、それ以外にもパソコンでのデータ入力の内職をしているという……
でもそんな彼女の姿に私は、ある種の「美しさ」を感じてしまいました。
節約する姿も、なんだか「美しい」と思います。



特に大きな出来事もなく、淡々と進む小説なのですが、この2008年・2009年あたりの現在の
「生活の姿」を正しく描かれていて……
「ナガセ」の職場のリーダーの「岡田さん」や、
「ナガセ」の大学時代の友人
「ヨシカ」、「そよ乃」、「りつ子」、
「りつ子」の娘「恵奈」や
「ナガセ」の母親など、
それぞれに事情を抱えつつ「生活」している姿が描かれています。

「ナガセ」の母親がどうやら「韓流スター」にハマっているらしいのも、「現代」ですね……(笑)



舞台は奈良で、奈良ならではのお寺や仏像や鹿などのネタが所々出てくるのも、微笑ましいです。

やっぱり女性ならではの部分はたくさんあって、
確かに「結婚」したら「離婚」は必ずつきまとってしまうのが現代だし、
「働いていないと不安」という部分も共感できます。
でも女性が主人公なのに、男の気配が全くない小説というのも珍しいですね。
登場人物はほとんど女性だけだし。



最後の最後は、なかなかすがすがしい終わり方で、この後の「ナガセ」がどうなったのか、気になります。

「マイケル=ダグラスとキャサリン=ゼタ=ジョーンズ」のくだりはちょっと笑ってしまいました……(笑)
ココも、女性ならでは、という視点ですね。



とりあえず、「ポトスライムの舟」、読んだ後にいろいろと「残る」というか、考えさせられる小説です。
今のこの社会をしっかり描写しているので、今のうちに、この小説を読むコトが意味があると思います。

この小説の登場人物、「ナガセ」、「ナガセの母親」、「りつ子」、「恵奈」、「ヨシカ」、「岡田さん」……
全員に幸せになって欲しいなあ……
なんて、思いました。
あ、「そよ乃」は、どうでもいい……(^-^;)



やはり芥川賞をとるだけあって、いい小説でした。

「文藝春秋」、本屋さんで探すのは大変なので、売ってる場所は店員さんに聞きましょう!(笑)



へそ天!
黒水川でした。