四行詩の例。haruo uema小説試筆帳 -3ページ目

四行詩の例。haruo uema小説試筆帳

作り方は自由な四行詩を作品例で話します。

     1
 

折絵(おりえ)が会社の帰りで路地を曲がると、大きなトラックが道を塞ぐ。一人が通れるぐらいの隙間はある、いつも利用してる場所だし、今日も停まっているか、と思いながら隙間を通る。
 突然、前から人影が現れた。仲良くしたい雰囲気じゃないよね、と呟く。昭和の時代に携帯電話なんて無い。大きな声なんてすぐにだせないし、しばらく様子をみなければ、さいわいに何かの勘違いなら迷惑だろう。
「よう、ねえちゃん。遊ばない」折絵に声をかける淫猥な表情の男。
「急いでますから」
 引き返そうと背中を向けると、もう一人が待っていて、彼女を腕の中へ強引に誘い込んだ。ハンドバックを握りしめる彼女。
「誰か、助けて」声は掠れてしまう。こういうときに平常心ではないし、息も苦しい、呼吸を忘れている。最初の男が折絵の唇を荒れた肌の指で塞ぎ、トラックのドアを開ける。
「入りな、ねーちゃん。可愛がってあげるぜ」
 首を何度も横に振り、くねる女の身体、そのとき。
「何をしている」と外で声がした。
「ちっ、邪魔が入ったぜ」二人は隙間から急いで逃げる。
 声をかけてくれた人は一人らしく、二人を一緒には追ってはいけないらしい。

「どうせ、車を取りにくるさ。警察へ連絡して置こう」
 彼へ助けてくれたお礼をいうと、隙間から出た彼女へ言う。名前を教えて欲しいと告げる。
「俺の名前なんか忘れたなー。困ったときはお互い様」
 惚ける彼は悪い人ではないらしい。それより、と警察へ電話するから自分の部屋へ寄るように誘う。
「君の部屋を知っている連中なら怖いだろ。緊急避難だよ」
「そうですね。電話で、私も話さなきゃですし」
 状況を説明する必要もあるだろう。だけれど、ちょっと男へついて行くのに不安。彼の部屋は近くで、歩きながら彼もそれを察したようで、俺は高校生のころサッカーをしていて、など自己紹介代わりに喋る。
 固定電話は玄関にあるはず、ドアを開けたままにしてたら良いかも。警戒心は解けずに、身の安全を考えていた彼女。
「えっ、妹の名前、なんって。歳はいくつ」
 聞き返すと、なんだー、友達の兄貴じゃん。
「部活が一緒で、先週もボーリングへ行ったよ」
「仲の良い友達って、君か。確か、おり、何とか」
「はい。折絵です。それじゃあ、田中さんですよね」
 安心感と親しみが沸く。気兼ねなく彼が明けたドアから室内へ入ってしまった。

彼が固定電話でやりとりしながら尋ねてくる。
「あの、変なことされた、未遂でいいのかな。君の話も聞きたいとさ。それより」
 なにか言いたげにする。そりゃあ、傷害事件なら大事になるでしょ。何もなかったし、と駐車違反だけで連絡するように伝えた。女性が悪戯された事件は、女性が恥ずかしくなるほど世間の視線を浴びる昭和時代だ。
「遅くなったし、食事をしていけよ。俺はそれなりに作れるから」
「それなりですか」正直だ、と良い感情を抱て、彼へ応じた。

    2

 ベッドにスモールライトが当たる。なぜ寝室にいるのか、考えるのはやめようと会社の制服を脱ぐ。前の恋人と別れて半年、とっくに記憶に居場所はない奴だった。
「何を迷ってるの。さあ」
 彼がベッドの縁で誘う。迷ってるわけじゃない。急かすものじゃないよ、と思いながら(彼女そのまま)の姿になる。
「これ上げる」恥ずかしさを笑って誤魔化しながら、イチジクの葉を彼へさしだす。
「ショー、うん」何かの遊びと気づいた彼、匂いを嗅ぐ真似をしてベッドの端へ置く。匂いフェチではないらしい。

 明りに照らされる折絵の全身は、ふんわり柔らか感を晒して、餅肌の煌めき。手で覆う(あんまん)の丸さは二つの間に影を作る。
「英語で、愛の前に何があるのか知ってる」彼が聞く。
「えいち、ヤダっ、Hじゃん」爆笑はできないけれど、ちょっと大げさに「いやだー」と笑って彼の肩を小突く。
「それで良いか、折絵」彼が真面目な顔で言うと、彼女の腕を引き寄せる。
「うん、いいよ」田中の腕の中、胸へ顔を埋めた。折絵の半月型の丸い背中が彼の指へ吸い付くように感じる。

 彼の柔らかな鞭は、彼女の首筋、目元を撫でるようにして焦らすが、唇はこの期待感が高まるのを喜び、やがて、お互いlipが軽く触れ合う。
 折絵は仰向けになり、あんまんを指で押さえるが、彼が下から喉元へ揉み上げる。風船になるあんまんだけれど、肉の奥が熱く疼きだす彼女。彼は折絵の指を軽く押しよけ、サクランボを食べ始める。
 彼女は首を横に振り疼き出す全身の破裂を我慢する。右腕は女の流線形をなぞり、自分の腰から這い上がると谷間の森を押さえて、左腕は彼の背中へ回す。谷間の森を触って欲しいのだ。

 折絵の膝の間で、田中はスルメイカに安全装置を付ける。すでに指が彼女の森を散策していたけれど、応接間の扉を開く。
「だめっ」 
 違うだろうと言いたい言葉を彼女は口走る。応接間が柔らかく彼を迎え、湧水で潤う。
「もう、こうなってるね」
「言わないでぇー」腰をよじらせる彼女。
 スイトピーの蕾がパクパク蠢き、スルメイカを食べようとしているように感じた折絵。応接間へ訪れたスルメイカに喉から感激の囁き、か弱くアアアと響く。

 スイトピーの蕾の中へスルメイカが筒状の体を埋めてくる。
「ハウッ」
 折絵の喉が歓喜して叫び、顎を向こうへ押し倒す。肩先から上がった顎まで、微かに震える。
餅肌は付きたての餅になり、柔らかく揺れる。指が疼きに痺れて、両手をシートに広げ掴む。
 短く吐く息、それが上り詰めるときに近づき荒くなった。女の良い表情は愛されて到達するecstasyのとき。
女の最高の表情は赤ちゃんを産んだとき。

 彼女は田中のスルメイカをしゃぶりながら、上目で彼をみる。すっきりしたというか、間の抜けた表情にもみえる。
「うん、美味しい。田中さんと結婚するのかな」
 折絵はそんな予感がした。

   3

 あれから何年経ったのだろう。町内道路の拡張を訴えて、田中は町議会議員になっている。折絵は妻として選挙とか手伝い、美人秘書とか呼ばれているが、いつも謙虚に、と田中は窘めた。
 あの日のことを覚えてくれている彼に折絵は感謝して、今も楽しい夜の性活を二人で楽しんでいる。

    了
 
 甘い誘惑・映える昭和の女・折絵