「えええ!!!何このバランス異常に悪い神がかり的な運は!!(大笑」

そう言って彼女は手を叩いてひとしきり笑うと

「○○さぁ……その、岡村くんに関して"だけ"強運ってどういうこと?!(笑」

-強運?!強運じゃないよ。たまたまだよ。
……あたしは別に、会場の席さえ貰えればそれだけでいいんだけどね。
居場所はとりたてて"前がいい!"とか無いから。
チケット当選だけでいいんだ。

昔、若かった頃にあなたに逢いに行ってた名古屋公演、

いつも後ろの方から小さなあなたを見つめてた。

一緒に歌ったり手を振ったり。

持って行ったオペラグラスなんて覗いてる暇無いくらい

夢中になって、ステージを見てた。

ここから見る "岡村靖幸" が当たり前なんだ、って。

そう思ってた。

前の方はきっと芸能界の人や、そういう世界の関係の人、招待されてる人たちのお席なんだ、って。

そう思ってた。

Zepp(名古屋)で初めて「1番」をいただいた時に

発券したチケットを確認したローソンのレジで

発券枚数、公演場所を見ながら

一番上の名古屋の番号を見つめて

「………ホントにあるんだ……」って思った記憶。

一般には出ないと思ってた番号。

枚数も公演場所も気もそぞろで

纏めて受け取って急いで車に戻って。

もう一度チケット、全て揃ってるのを確認したあたし。

ジワジワくる驚き。

車の中、ひたすら「ホントにあるんだ!!!」って声を出して笑って。

何十回と逢いに出掛けたあなたとのDATE。

当たり前に「真ん中……後方辺りかな?」って思ってたあたしは

こんな素敵な場所をいただいちゃって、大丈夫?!って。

こんな幸運、たぶんもう二度と無いよ、って

古い友人に話したら

「じゃあ忘れないよう瞬きせずに岡村くん、見てきなよ(笑」

そんな冗談を言っていたんだけど。

それからも何度かあなたの傍であなたの歌を聴かせてもらえることが続いて。

「ねぇ……岡村くん、ちゃんとチケット売れてんの??お客さん数人とかじゃないよね??」

って、真顔で彼女に訊かれて

-失敬ねっ!満員御礼出てるのよ??
東京公演なんて早々に売れちゃうんだから!
靖幸、可愛いってみんなに言われてんのよ?(笑

「……可愛い?!(笑」

そう話して。

「チケット引き出した??」

あなたの公演チケット発券をダシに、お茶しようよって

近くのカフェに出掛ける。

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「どうだった??秋、○○笑ってたじゃん?岡村くんに嫌われちゃったー!って。(笑」

-うん。番号は凄かったけど、結局あたし見たい場所、それも結構前の方で見られたから。嫌われてなかったのかも(笑

「あんたみたいなファン、どっちか言えばありがたいんじゃないの?嫌うも何も。
良いファンだよ。
文句一つ言うことなく、ずっと離れずついてきてくれてるんだもん。」

-あたしは……良いファンなんかじゃないよ。  
猛烈に怒るし。ボヤくし。
みんなみたいにテレビ録画したりラジオ録音して何度も見たり聴いたりしないし。

「靖幸、死んじゃう!ってワンワン泣いて、
靖幸はバカだ!!って怒り狂ってたのに?(笑
岡村くんのこと好きで心配だったからでしょ??(笑
あんなふうに心配するファン、そんなにいなくない?
心離れずにひたすら待つの、凄いなーって見てたんだけど。」

……うん(笑

「希少で奇特、殊勝なファンだよ、友達目線で見てるからまぁまぁフィルタかかってるけど(大笑」

………そうね。

ファンの人に嫌な思いとかさせられてないといいんだけど。

ふと、自分の日頃の行いを振り返る。

迷惑かけていないかな、あたしは………。

-あたしね?
靖幸がやりたいことをやりたい様、
納得してやれていたら。
それで靖幸が笑顔でいられるのなら。
それだけでいいんだ。

心の波が、穏やかに凪いでいてくれたら。

荒れ狂う波はきっと辛いから

イライラしたり、悲しくなっちゃったり

そんな思いをして欲しくない。

「で。どうだったの?笑っちゃう番号だった??」

ゴソゴソ、バッグからチケットを取り出して見せる。

「…………ねぇ。これは何処なの?どういうこと?席、無いの?立ち見???」

-あぁ……ここのホールね、オーケストラピットってスペースがあるの。

そう言ってGoogle開いてホールの座席検索をして彼女に見せる。

ステージがここで、席はここだよ、って。

「えええええ!!!!」

-うん。あたしもね、ローソンでチケット受け取って、急いで車に戻って枚数と場所確認で見た時に、同じ反応したよ(笑

「凄いじゃん!!○○、東京は前の方にならないんだよーって言ってたじゃん!!」

-ね。たまたまかな?前の方になっちゃった。

「凄い凄い!!良かったじゃん!」

ホントね。

「しかも東京だけじゃないじゃん!なんなのこれ。運使い果たしちゃってない?!(大笑」

-去年の春も、だったから運残ってたのかな?

チケットをジッと眺めて。

「あ。ここ、名前入ってる。」

うん。記念になるね、DATEした思い出。

「でもさ、一瞬ホントに席無いのかとか思っちゃった。椅子は?あるの??」

-あるよ!!ちゃんと座席ある(笑

「通路とかで体操座りして見るのか思っちゃったよ(笑」

-あたしもね、前に1番貰った時にびっくりしたんだ。
ずっとそういう前の方は招待客の人のお席だと思ってたから。
自分には縁のない席だ、って。
そう思ってた。

そんなとりとめもない話しをしてカフェを出る。

「春、何公演行くの??楽しみだねー。
喘息出ないようにしなさいよ?
なっちゃうとまたドクターストップで行かれないーってワンワン泣くんだから(笑」

うん、わかった。

無理しないようにしなくちゃ。

「じゃ、またね!」

新しいアルバムが出たら、聴きながらドライブ行こうよ。

そんな約束をして別れた。


春……待ち遠しいな。

早くあなたに逢いたい。