2018.spring tour 「Machiavellin」15th performance day at 中野サンプラザ first day


思えばこの日は家を出てすぐからありえないトラブルが続いて。

2泊だから、駅までバスで移動のつもりで出たんだけれど

そのバスが、目の前まで来てるのにハザード出して止まってしまい

一向にバス停まで来る気配が無く

このまま来ないバスを眺めて待っていたら

名古屋駅、新幹線に間に合わない。

「……仕方ない。タクシー呼ぼう」

近くのタクシー会社に連絡をすると、ちょうどすぐそばに一台走っているから向かわせます、と。

「助かった………。」

胸を撫で下ろして、本当にすぐ来てくれたタクシーに乗り込み

在来線の駅までを頼んで窓の外を眺める。

「なんだか不安だな……」

胸がザワザワする。

こんな滅多に無いような出来事が目の前で起こると

気持ちが少し沈む。

程なく駅に着いて、お礼をひとこと伝え、車を降りる。

-ロスを取り戻さないと。

余裕を見て家を出たけど、随分時間が足りなくなってしまっていて

慌てて改札を抜け、ホームに急ぐ。

在来線、名古屋駅に向かい、着いた時には結構新幹線の時間に近くて。

コーヒー一杯買って、ホームに行くと

掲示板にはあたしの乗る列車が載っている。

なんでこんな事になってるんだろ………。

ふと数日前に起こった新幹線内の事件が脳裏を過ぎる。

むくりと恐怖心が立ち起こり、心拍数が上がる。

平日の新幹線、乗客の半数がサラリーマンで

乗り込んで周りを見渡すと、ほとんどの人が疲れきって寝込んでいるから

休みをもらってあなたに逢いに行くのが少しだけ申し訳ない気持ちになる。

隣りで軽いいびきをかきながら居眠りをしている男性を見て

事件に巻き込まれてしまった被害者の男性を思い、心でそっと手を合わせて。

どうかもう、こんな理不尽な事件が起こりませんように、と願う。

東京に着き、そこから在来線、メトロに乗って

定宿にしているホテルのある浅草に向かう。

何気なく探ったバッグ、スマホを見ると

駅まで乗せてもらったタクシー会社から何度か着信があり。

その時初めて、バッグにあるはずの鍵が無いことに気付いて

慌てて折返し電話を入れる。

こんなミス、あたし初めてしでかした。

傘や鍵、ケータイ。

忘れたことなんて無かったのに。

どんどん気持ちが沈んで行く中、千葉の友人の言葉に救われる。

「靖幸が待ってるよ?」

そうね。

しっかりしなきゃ。

新幹線のあの事件で、中野に行くのを躊躇って

ボンヤリしてたのかもしれない。

重なる悲劇の報道に、心が憂いていたのかもしれない。

まだこの時は、この日最後にもうひとつ

あたしがボンヤリする話しを知ることになるって思いもしていなかった。





(続)