(第五章 次々起こるびっくり事件ドッキリ事件!)
23. えっ、四十年間もビザなし?
それからまた一週間が過ぎ去った。相変わらず何も進展しない。不思議な
ものでバルセロナに来た直後は一日がとても長かった。それが慣れるにつれ
時計の針が速くなる。 こりゃあ少しずつ日本人のせっかち根性が首をもた
げてきたのかもしれない。イカンイカン、のんびり行こうぜ、の~んびり!
ラウルが、また新たな提案をしてくれた。
九月から彼の女友達メルセの家に泊まらないかという。 彼女とは前に街
でバッタリ出会ってラウルから紹介されていた。三十代後半、美人で明るい
独身女性で、初対面からチュッチュをされてとまどったのを覚えてる。
ラウルによれば彼女の家は広くて綺麗、なのに宿泊代は今より安くなるら
しい。そのうえ彼女は一週間後にコロンビアに長期旅行するので、その間は
二人だけで自由に使えるという。
なんてありがたい提案だ!
心から感謝して九月早々に引っ越すことになった。気がつけば、何もなか
ったはずの荷物がやたらと増えている。 人間以外の動物はみんな身ひとつ
だってのに、人間とは恐ろしい生き物だ。
メルセの家はすぐ近くだった。最近建ったばかりの新しいビルで、なんと
彼女はその若さでピソを買ったらしい。立派な玄関ロビーにエレベーターも
付いていて、部屋もたしかに小綺麗だ。ピンク調の飾り付けがちょっとこそ
ばゆいが、居間もキッチンもバスルームもかなり広くて気持ちいい。それに
窓から顔を出せば、はるかに青い地中海を望めるのがなにより嬉しかった。
最初の一週間は共同生活、といっても彼女はダブルベッドの大きな部屋を
我々に提供し、自分は小部屋の小さなベッドに寝泊まりして、朝早くから
夜遅くまで外出する毎日だ。お陰で二人は家中をほとんど自由に使わせても
らい、これまでの疲れも癒せるし、それこその~んびりすることができた。
そういや、彼女の本当の名前はベンツ車と同じメルセデスだとかで、感謝や
恩恵という意味らしい。これまで何も知らなかった異国人の親切が心に浸み
わたる。
でもやっぱりビザやピソのような重要問題となると、日本人を頼ることに
なる。同じ言葉、同じ生活感覚でないと、伝えられないことも多い。そんな
わけで日本人の友達や知り合いを増やすために、さまざまな場所へ足を運ん
でみた。領事館によれば、この地区の日本人はせいぜい二千人ほど。中国人
は何万人もいるそうだから、我ら同胞を見つけるのはけっこう大変だ。
街の中心に“日本語図書館”という施設がある。
バルセロナ在住の日本人から寄贈された日本の図書がずらりと並んでて、
誰でも自由に読むことができる。ここでも多くの情報と友達を得ることが
できた。
あの「ピストーラ!」のA君もそうだったし、日本でスペイン料理の店を
出すという彼の男友達、スペインの彼と毎日サーフィンを楽しむ女の子、
バルセロナに和服の店を出そうと計画している女性ともここで知り合った。
それぞれがこの街でじつにさまざまな形で頑張っている。
ここ以外でも、サッカーの情報を日本に送り続けている元新聞記者夫妻や
フランコ政権時代から何十年もここで仕事をしてきた会社社長とも懇意に
なった。
その社長は現地の女性と結婚したが今破局を迎えているらしい。何故だか
わからないが、日本人男性とスペイン人女性の組み合わせは難しくて、その
逆のケースはほとんどうまくいっている。で、寂しさからか、彼はよく我々
をドライブに誘ってくれる。ところが大抵は酔っぱらい運転、そのうえ携帯
に相手の番号を打ち込みながら百五十キロ出された時は、生きた心地がしな
かった!
久しぶりに寿司と味噌汁を味わったら、これがバツグンにうまい! 店員
に聞いてみると何十年も前にここに住みついた武道家が始めた店で、今では
バルセロナ中に何軒ものレストランを経営しているという。
そこで図々しく自己紹介し、できれば社長に会いたいというと、「わかり
ました、話しておきますよ!」と気軽に引き受けてくれたのだった。
それから一ヶ月、社長の奥さんから電話がかかり、ゆったり大きな身体の
社長と気さくな奥さんとの四人で会食。いろいろと話しているうちに、ピソ
やビザの件もできるかぎり手助けしてくれるという。
こんな心強いことはない。なんでも積極的に行動してみなきゃいけない!
しばらくするとまた奥さんから電話がきた。ついにピソが見つかったのか
と早合点したら、そうではなく今度自宅でパーティーをやるから来ませんか
というご招待だった。これまた遠慮なく訪ねてみて、度肝を抜かれた!
そこは高級住宅街の最高級ピソではないか 
広さはなんと四百平方メートルもあるらしい。キッチンだけで奥行き二十
メートル、部屋の数はいくつあるか見当もつかない。二十畳はあろうかと
いうリビングの壁には本物のフレスコ画が描かれ、その外にまた屋根付きの
広いベランダがある。
パーティーが始まるとベランダでは炭火を使った分厚いステーキやお好み
焼き、リビングでは山盛りの寿司や刺身が振る舞われ、ビールや日本酒の
その日集まったのは大手日本企業の支社長夫妻や世界を飛び回るギターの
演奏家、若いプロテニスプレイヤーなど。また各レストランの日本人従業員
たちも加わって、総勢二~三十人がワイワイガヤガヤと飲み食べしゃべり
まくった。
がいろいろと尋ねてきた。そこでバルセロナに移住したいこと、でもビザの
件などで困っていることを告げると、彼は即座にこう言い放ったのだった。
「な~んだ、そんなことですか。ビザなど気にするこた~ありません。
私なんかもう四十年もビザなしでここに住んでますけど、一度だって問題に
なったことないですよっ!」
えーっ、じゃあ不法滞在ってコト~っ? 
(まだまだつづきますよ~っ!)
それから、
やはりメルマガの
“知ってびっくり!地中海の不思議の国・バルセローナ!”
も、
数々の写真とともに再構成しました。
どうぞこちらへ
↓
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以下に2冊だけ拙著をご紹介します。よかったら読んでみてください!
◎ 『勉強っていやいやするもの?』(大日本図書)
〈中高校生向けですが、‘哲学’についてもやさしく解説しています〉
◎ 『脳みそのほんとうの使い方《ビギナーズ編》』(日科技連出版社)
〈こちらはビジネスマン向けですが、やさしいです)〉
また姉妹編《マスターズ編》も出ています。







