10. こんな無謀な計画あっていいの?
だがよく考えてみたら、やるべきことは山ほどある。ざっと紙に書き出し
てみただけで、単純な頭はパニック状態だ。いくらなんでも出発まで一ヶ月
は短すぎる。こりゃあ大変だ。寝ずに頑張らにゃ間に合わんかもしれんゾ!

だいいちマンションだって売れることは決まったものの、家財の整理やら
契約の手続き、それに売買代金の精算やらが待っている。だいいち、どう考
えても出発の日までに買い主に全部キッチリ引き渡すなんて、とてもでき
そうもない。 結局は娘たちに後を頼んで、バルセロナに旅立っちゃうしか
ないかな~!
それから荷物はどうする? 衣類や食器などの身の回り品、それに本や
CDは向こうじゃ手に入らない。といって今回一緒に運ぶわけにもいかん。
住む所も何も決まってないのだ。
やっぱり必要な物の指示だけして、あとはこれまた娘たちに頼んでセコタ
ンの実家にでも送ってもらうとするか。その上「身一つで日本を出るわ!」
なんて息巻いてたセコタンも「あれも必要これも要る!」と荷物の量は限り
なく増えていく。こりゃあ輸送費だけでもそうとうかかっちゃうナ~!
待てよ、後から送る荷物は別として、今回は何を持って行けばいいんダ?
なんたって身軽が一番、極力減らしておきたいところだけど、それでも
情報機器だけは日本との連絡や現地での記録にも絶対必要だ。ノートブック
型パソコンとデジタルカメラは最新の物を買っておくとするか、向こうじゃ
日本語環境が使えないかもしれないゾ!
・・ところがこのパソコンが何台交換しても欠陥品、販売店の対応もメチャ
クチャなのだっだ。新製品はこれがあるから困る。おかげで正味五日間は
このために使っちまった! 
もちろんその間にパスポートも取らなきゃならないし、国際免許だって
必要だ。いやいや、そんなことより住民票や本籍はどうする? 現在の住所
にはもう何もない、全部抜いて別の場所に移すしかないか。でも娘たちも
いずれは海外に出る、とすれば残るただ一人の身内、息子の家に同居という
形にしてもらうか。
そうそう、日本の健康保険だってもう意味がないだろう。その代わりしっ
かり、海外旅行傷害保険に入っておくとしよう。いったん落ち着くまで、
病気にでもなったらどうにもならないよな~!
それに年金の問題があった。セコタンは今年の十一月、こっちは来年の八
月。その段階でいろんな書類を提出しなきゃならん。申し訳ないがこれも
書類を揃えて息子に渡しておくか。おおっ、そのとき印鑑が必要になる。
事前に預けておかないと
だいたい海外に出たらこんなもの何の役にも立ちゃしない。 この国は、
いつまでこんなバカげた制度を続けるつもりダローカ?・・・
って、何のことはない、結局はほとんど子供たちに押しつけちゃった。
なんとも無責任な親だ。それに今は弟の家に同居してる自分の両親の問題も
ある。これまたあまりにも親不孝な息子じゃないか、もう死に目に会うこと
さえできないかもしれない。
別れ際に二人が見せた寂しげな顔を忘れることができない。でも罪の意識
を少しだけ打ち消してくれるある人のこんな話があった。
「絶対親の死に目に立ち会いたいと思った友達が、一日中近くについてい
たんだけど、ちょっとトイレに行った間に急に亡くなっちゃって、自分は何
をしてたんだって考え込んでたよ!」 人は結局はひとり。一人一人がそれ
ぞれに命を輝かして生きる意味をわかってもらえたらいいのだが・・・。
ま、どっちにしたって身勝手に違いはないな~!
そんなわけで挨拶回りも最小限、これも薄情者のそしりは免れない。でも
そこでもらった友人たちの暖かさには胸が熱くなった。最も気になっていた
のは、早稲田のオープンカレッジや専門学校の生徒たちと毎月何回か続けて
きた、 「ハテナ王国・会議」だった。
その名の通り、みんなで疑問と楽しく遊んじゃおうというゲーム的学習法
で、日本の教育を変える一つの試みでもあった。それが突然の最終回、驚い
た若者たちから次々に疑問が飛び出した。
「ソーチャンは、ボクらを捨ててスペインに何しに行くんだ!」
そうそう、学校では生徒たちにこう呼んでもらっていた。そして彼らの
質問はこの一点に集中したのだった。だがどう答えても彼らは納得しない。
とうとう最後に、こんなワケのわからぬことをしゃべったような気がする。
「この国の学びを変えようとしてみたけど、挫折してしまいました。その
理由はきっとボクにある。だから自分を変えるために行くのです。 自分も
変えられない人間が、人に変わりなさいなんて言えないもんね! できれば
この王国を、スペインに建国できるよう頑張ってみます、許して下さい!」
彼らはようやくこの言葉で納得してくれたようで、最後は全員が笑顔で
手を振り送り出してくれたのだった。

そうしているうちにも時間はあっという間に過ぎていく。
いかん、宿泊場所もまだ決めてなかった! なんとこれも直前になって
インターネットの掲示板に「部屋貸します!」と書き込んだ文字を見つけて
連絡。すると、スペイン人と同棲してるケーコという日本人女性が、とりあ
えず三日間だけは泊まらせてくれることになった。到着したら市内のホテル
まで、ラウルという名の彼が迎えにも来てくれるという。
やった~、これはちょっと心強いゾッ!
(次回は、いよいよバルセロナに潜入しますよ~!)
それから、
やはりメルマガの
“知ってびっくり!地中海の不思議の国・バルセローナ!”
も、
数々の写真とともに再構成しました。
どうぞこちらへ
↓
http://page.mixi.jp/run_page_apps.pl?page_id=255339&module_id=1434011&from=menu
◇
◆
◇
以下に2冊だけ拙著をご紹介します。よかったら読んでみてください!
◎ 『勉強っていやいやするもの?』(大日本図書)
〈中高校生向けですが、‘哲学’についてもやさしく解説しています〉
◎ 『脳みそのほんとうの使い方《ビギナーズ編》』(日科技連出版社)
〈こちらはビジネスマン向けですが、やさしいです)〉
また姉妹編《マスターズ編》も出ています。


