そのとき男はほんのりとすれ違いざまに香る匂いがした どこか覚えのあるその香りは一瞬だが 振り返る気持ちに躊躇してしまうのである 意地を張るのではなくて恥ずかしさでもない 照れ隠しのキザならもうずっと昔に忘れたはず 蓋をして鍵をかけた想いの箱から抜け出したのか? 幼い時から変わらない男は匂いに敏感なのだ 女はそれを知ってか知らず悪戯に惑わせる 言葉よりも激しい・・・よりも確実に心を射抜く