哭声/コクソン | 記憶のための映画メモ

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こんにちは!
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ユルユルの脳味噌に喝を入れるための映画ブログです。

哭声/コクソン

 

2016年/韓国/156分
監督:ナ・ホンジン
出演:クァク・ドウォン、國村隼、ファン・ジョンミン、チョン・ウヒ、キム・ファニ、他
おすすめ度(5点中) → 4.0

 

――― あらすじ ―――――――
のどかな田舎の村。いつの頃からか、山の中の一軒家に一人の日本人が住み着き、村人たちの間にこのよそ者に対する不気味な噂が広まり始めていた。そんな中、村人が自分の家族を惨殺する謎の猟奇事件が連続して発生する。いずれの事件でも、犯人の村人は体中を奇妙な湿疹に覆われ、正気を失った状態で現場に残っていた。気のいい村の警察官ジョングは、よそ者の日本人が関係していると睨んで捜査を進めるが、ある日自分の幼い娘ヒョジンにも犯人と同じ湿疹を発見する。娘だけは何としても守らなければと、祈祷師のイルグァンを村に呼び寄せるジョングだったが…。(allcinemaより)

 

――― 感想 ―――――――

ものすごい変な映画だ!描いている内容は怖い。演出はコミカル。特盛のオカルト。なんなんだコレは!!

 

ネタバレします。

 

ある田舎町で惨殺事件が連続で起こります。

 

▲警官である主人公ジョング(右)は現場に駆り出されます。

このジョングって人は現場に急行しなきゃいけない状況で、家でのんびりご飯食べてたりする職業意識が低い人間です。さらに現場に遅刻したことを家族を理由にしてたりと、言いわけがましい男でもあるわけです。で、この精神的に弱そうな人が主人公であることがこの映画のキモだと思います。

 

村ではある噂が流れます。「なんか最近、変な日本人が住み着いたじゃない。あの人が来てから、事件が起きているんだけど」と。

 

▲変な日本人。事件現場にも顔を出しております。

 

▲ちなみに事件はこんな田舎で起きています。田舎っていうのも重要なポイントです。

 

▲やがてジョングの一人娘ヒョジンに異変が訪れます。

このヒョジンって娘ですが、かなりいい子なんです。父親のジョングが奥さんとカーセックスしてて、その現場をヒョジンが目撃します。ジョングは娘にひどいトラウマを与えたかもしれないとすごく落ち込むんですが、「気にすんなよ。父ちゃん」と逆にヒョジンに慰められるという(笑)。まぁ、この明るい流れがあったので、きっとヒョジンに嫌なことが起こるんだろうなとは予感はできました。

 

ヒョジンはどんどん変になっていくので、ジョングは噂の日本人のもとを訪れることにします。

日本人の家がありましたが、どうやら不在です。ジョングは勝手に家に押し入り、荒らします。家の様子から日本人は何か呪術的なものをやっている様子がうかがえます。にしても、ジョングは令状もないのに、家を荒らしてとんでもない警官です。やはり職業意識は低いと言わざるを得ません。それとも肩身の狭いだろう独りぼっちの日本人だから強気なのでしょうか。

 

▲ジョングが家を荒らしているところへ、日本人が戻ってきます。ジョングは何しにこの村に来たんだ?と問いただしますが、日本人は旅行で来ているだけと返事します。やがて日本人の犬がジョングに襲い掛かりますが、ジョングは犬を撲殺してしまいます。ジョングは「どうだ、参ったか!?」的な憤りをみせます。日本人の家の様子は明らかに怪しいのですが、犯人である確証はありません。

 

後日、ジョングの娘ヒョジンの状態が悪化します。これは日本人の復讐に違いないとみんなが噂します。そこでジョングは、母の勧めもあって、ソウル市内から高名な祈祷師イルグァンを呼びます。お祓いをしようというのですね。

 

で、このへんから映画の流れが変わってきたことに気付くはずです。

 

祈祷師イルグァンは大掛かりな儀式で、日本人に「殺をうつ」と言います。つまり呪い殺すと。

 

▲儀式が始まります。

 

映画では、イルグァンの儀式と平行して、日本人側の儀式も描かれます。一見すると2人は呪術対決をしてるように見えます。一見するとです。

しかし、イルグァンが明らかに日本人に呪術的攻撃を仕掛けているのに対し、日本人はトラックで野垂れ死にしていた村人の写真に何かお祈りをしています。映画を見終えて僕はこれは対決ではないと思い直しました。映画を観ている僕たちは「対決しているだろう」と“思い込んでいる”ので、そういう光景にしか見えません。実はこの「思い込み」こそがこの映画のテーマな気がします。が詳しくは後述します。

 

儀式は一通り終わります(ちなみに儀式ですが、儀式中に娘ヒョジンの容体がより悪くなったことを受けて、ジョングはイルグァンの儀式を途中でストップさせています。つくづくジョングは自分勝手だなーと思いました。この人は専門家に任せればいいところを任せきれず、素人さながらの判断をして事態を悪くしているような節があります)。で、イルグァンの放った呪いは日本人にかなりのダメージを与えたようです。

 

そこで、ジョングたちは自警団めいたものを結成して殺す気満々で日本人の家を訪ねるんですが、そこには誰もいません。そこに現れたのは何と先述したトラックで死んでいた人間がよみがえってこちらにノロノロ近づいてくる姿。こりゃ、ゾンビじゃないか!ビックリしましたよw。まさか、この流れでゾンビなんて(笑)。ゾンビは凶悪でみんなに噛みつくので(感染はしないみたい)、みんなは力を合わせてゾンビをボッコボコにします。

 

ちょうどそのタイミングで、日本人が近くにいるのを発見、みんな日本人を追いかけますが、見失います。日本人は日本人で、誰か(映画前半で出てきた謎の女性)を見つけたようでそれを追いかけます。何だか訳が分からなくなってきましたw。

 

この先も長いので端折りますが、日本人は偶然ジョングたちの運転する車にはねられ、ジョングたちによってその遺体を遺棄されます。一件落着かと思いきや、呪術師イルグァンが呪う相手を間違えていたと衝撃の告白。序盤で出てきた謎の女性が魔女みたいな存在でソイツが呪いをばら撒いているのだと教えてくれます。それを聞いたうえで、ジョングはその謎の女性に会いますが、今度はその女性がまた違ったことを教えてきます。ジョングはどっちを信じていいのか分からなくなります。

 

結局ジョングは女性のいうことを信じずに家に戻ります。するとそこには惨殺されたジョングの妻と母の死体が転がっており、血まみれになった娘ヒョジンがいました。

 

一方、そのころジョングとともに戦った(?)神父見習いがあることに気づき、どこかの洞窟にいきます。するとそこには車にはねられ死んだと思われた日本人がいました。神父見習いは聞きます。「お前は悪魔なのか?」

 

▲日本人は「お前が悪魔だと思うなら、私は悪魔である」といいます。

 

つまりはそーいう映画なんだと最後までみてやっと気づきました。これは、思い込みに支配された社会の恐ろしさが描かれているんじゃないかと。日本人に名前がなく、最後まで「日本人」であることからも分かるように、未知の存在に対して僕たちは勝手極まりない憶測で定義づけをしてしまいます。

 

もはやこの日本人が、村を呪うためにやってきた悪魔なのか、逆に呪いから村を救うためにやってきた祈祷師なのか、どちらでもいいようにできているのです。

 

祈祷師イルグァンが日本人の家に貼ってあった写真を持っていたことから、イルグァンと日本人が仲間だった説も展開できるようになっています。そこもあくまで「可能性」として残しているだけで、特にストーリーとして重要ではないはずです。

 

謎の女性がジョングを救おうとしていた良い霊なのか、それとも村に呪いをばら撒く魔女だったのかは、結局分かりません。それも両方の可能性が残されているのですから。

 

と言いながらも、この映画はちゃんと意見を述べているんですよね。だって、、、具合が悪くなったのなら、病院へ行きなさいって神父さんまでもが言っていたじゃないか!

これすごく冷静な意見なんですよ。きわめてまともな。

 

それなのに、映画にのめり込んでいる僕ら観客は、病院なんか言ったってなんの解決にもならないじゃんって思いながら観てるんですw。この映画によって「思い込まされている」んですよ。これは呪いによる事件だぞって。

 

最後のほうで、一連の事件は毒キノコが原因でしたみたいなニュースが入るんですけど、やっぱり僕たちは迷信やら思い込みやアイツのせいだみたいなものに囚われすぎているんでしょうね。

 

そー考えると、怖い映画でした。映画はコミカルに進行していくし、トンデモ展開だしで、変なんですけどね。

 

欲をいえば、これがシリアス作品で且つトンデモ展開がない映画だったら100点級の作品だったかもしれません。個人的にはゾンビとは不要だと思いました。