さらば、わが愛/覇王別姫 | 記憶のための映画メモ

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ユルユルの脳味噌に喝を入れるための映画ブログです。


さらば、わが愛/覇王別姫


1993年/香港/172分
監督:チェン・カイコー
出演:レスリー・チャン、チャン・フォンイー、コン・リー、グォ・ヨウ、他
おすすめ度(5点中) → 4.7


――― あらすじ ―――――――
身を持て余した遊廓の母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた小豆。淫売の子といじめられる彼を弟のようにかばい、辛い修行の中で常に強い助けとなる石頭。やがて成長した二人は、それぞれ“程蝶衣”、“段小樓”と名を変え、京劇界きってのスターとなっていた……。(allcinemaより)


―――  感想  ―――――――

もともと大好きな映画なんですが、ちょうど「午前十時の映画祭」でやっていたので観てきました。劇場で観るのは初です。いや~、やっぱり最高でした♪


▲遊郭の母に捨てられ京劇の養成所に入れられた小豆(左)。淫売の子となじられるが、石頭(右)が

何かと彼をフォローしてくれ、小豆は石頭を信頼するようになる。


やがて、華奢で中世的な小豆は女形として訓練を受けるように。


ある時、京劇の有力者(というかマネージャー的な人)が養成所に視察にやってくる。

小豆はある台詞を披露するのだが、あろうことか間違えてしまう。しかし、そんな重大なミスも石頭のとったとっさの行動でことなきを得るのだった。


▲台詞を間違った小豆に対し、石頭は小豆の口にキセルのようなものを突っ込み、折檻する。その後、石頭自らが率先して芝居を見せることで場を取り繕うことに成功する。


▲その時の小豆の表情が非常に良い。これエッチですよね。


▲自信をつけた小豆が堂々と演じるようになるのはここから。


やがて、彼らにも正式な劇団員としての舞台がやってくる。演目は「覇王別姫」。石頭が項羽を、小豆は虞姫を演じるのだった。そこには芝居通のパトロン張老人もきており、小豆は張老人に気に入られ慰み者にされるのだった。


▲張老人に迎えられる小豆。張老人は金太郎みたいな恰好をしていてw、それがまた何とも恐ろしい。


▲そのちょっと前のシーンで、石頭の傷をなめる小豆のカットがあります。

ワタクシ、ちょっとドキッとしてしまうシーンなんですよね。これまたエッチです。


やがて月日は経ち、小豆は程蝶衣、石頭は段小楼という芸名で大人気のコンビとして活躍するようになっていた。


▲蝶衣(左)と小楼(右)。


▲2人は大人気のコンビとして売れまくっていた。


そういえば、子供時代に出てきたマネージャーっぽい「那」という人物が、この時代になるとこの2人にくっついているのが面白いです。きっと売れている人にくっつく人なんでしょうね~。


▲少年時代に芽生えた蝶衣の小楼に対する愛情は、現在ではより強くなっている。


▲蝶衣のちょっとした仕草からも愛情の深さがうかがえる。

蝶衣は芝居と私生活を切り話せないんですね。愛情に生きるからこそ芝居に身を置く、そんな考え方もできるような気がします。


▲しかし小楼は遊郭で遊び、そこの菊仙(左)と婚約してしまう。

この菊仙という女性は、非常に打算的で。小楼が人気スターだと知るやすぐに遊郭をやめて、しかも小楼を自分のものにしようとうまーく事を運ぶんですね。で、蝶衣の嫉妬がまたすごい。


この菊仙のおかげで、常に心を揺さぶられることになります。


▲傷心の蝶衣は、京劇界の重鎮であり同性愛者である袁の庇護を受けるようになる。


▲印象的なシーンがある。蝶衣と袁が「覇王別姫」を演じるシーンがあるんだけど、蝶衣は首を切ろうとします。でも切れないんです。芝居では虞姫は項羽に対し貞節を誓う意味で自害をするんだけど、この時、蝶衣が首を切れないのは相手が袁だからなんですよね。


そして時代は動く。日本軍が中国へ進行。京劇は日本軍に対しても演じられるようになる。


▲相手が誰であれ、熱心に観てくれる人にはキチンと演じる蝶衣。彼が芸術のみに生きている証拠ですね。


ある時、日本軍とトラブルを起こした小楼を助けるために、蝶衣は日本軍の宴席で舞を披露する。この行為はのちに売国奴として蝶衣を追い詰めることになるのだった。


▲基本的に日本軍は芝居をちゃんと楽しむスタンスでしたね。


さて、日本軍に対して舞を披露したのは菊仙に「小楼を助けてくれたら私は身を引く」って言われていたからなんですよね。恋敵である菊仙がいなくなれば蝶衣にとってこれほど安心なことはないですからね。

それなのに!菊仙はそんな約束なかったかのようにあっさり破ります。さすが打算的の女。


▲そして、ちゃっかり小楼と結婚までしてしまいます。


菊仙に普通の生活がしたいと言われた小楼はその後、京劇から身を引いて家で何にもしない生活を送ります。


▲ある時、かつての養成所の先生に呼び出された2人はめっちゃ怒られます。京劇を何だと思っているんだと。人生=京劇である2人にとって先生の喝は何よりもこたえるんですね~。


そんな先生もそののち亡くなってしまい、養成所は閉鎖。古き良き京劇は現実から遠のいていってしまいます。


そして時代は動き終戦へ。日本軍は撤退。

国民党に京劇を見せる場面があるが、マナーが悪いとくる。小楼が場を取り繕うとするが収まらず、喧嘩が起きる。この騒動で妊娠していた菊仙は流産することに。


▲マナーの悪い国民党。


この後、蝶衣は日本軍に舞を披露したことが原因で逮捕されてしまう。時代が変われば罪の種類も変わるのか。小楼は京劇界の重鎮・袁の力を借りて蝶衣を助けようとするが、裁判で蝶衣は自分に都合のよい嘘をつくことを嫌い無罪を主張せず、むしろ自分のことを殺せという。結局、仮釈放となるが、蝶衣は以前からハマりつつあったアヘンにどっぷり浸かっていく。



▲やがてアヘンにより芝居に支障が出るようになった蝶衣。助けてくれるのはやっぱり小楼なんです。


▲話かわって、昔ながらの京劇を良しとする蝶衣は、小四と対立。

小四とは、かつて少年時代に拾った赤子が成長した人物。小四は共産主義に傾倒し芝居にも現代劇を取り入れようとする。そして、そのことに大反対な蝶衣を小四は嫌うようになる。


おそらく京劇の真髄に達している蝶衣は、「練習すれば分かる」というが小四は何を言っているのやらって反応。ハッキリいって小四は超むかつきます。


▲さらに小四は虞姫の座もとってしまう。アヘンで不安定だった蝶衣には返す言葉がない。


そして時代は動き、文化大革命へ。この映画、中盤以降がかなり慌ただしく感じますね。


▲今度は京劇そのものが避難の対象に。

ここで生き延びるためとはいえ、小楼は蝶衣のことを裏切る発言をしてしまいます。このことにキレた蝶衣はその矛先を菊仙へ向ける。菊仙はかつて売春していたことを暴かれ、打ちひしがれ自害してしまいます。


それから11年後。



▲そんな激動の時代を生きた2人が誰もいない舞台で「覇王別姫」を演じる。


▲ここに、ようやく落ち着いた表情の蝶衣が見てとれる。

この表情、かなり胸に迫るものがありますね。


▲最後まで観ると、覇王別姫のこの画がズッシリと心に残ります。



うわー、記事が長すぎる。こうなるのが何となく分かっていたのでブログにするのはやめようと思っていたんですが、ついつい画像のキャプチャを始めたら止まらなくなって(笑)。


とにかく大好きな映画ってことですね。蝶衣の気持ちが虞姫とシンクロしながら、痛いほどに伝わってくるドラマティックな話です。後半のスピーディーすぎる展開にはちょっと苦手意識がありますが、前半の少年時代はもう最高。


やはり定期的に見直したい作品ですね。